台湾新総統
2024年5月20日、筆者が在住している台湾では、いよいよ新総統・賴清德(らい せいとく)が就任する。
中国と台湾との関係はかつてないほど緊張している。台湾独立派の頼清徳の総統就任で、今後の二国間の関係はどう変わって行くのだろうか。
BBCは「台湾は中国に嫌われている総統を選んだ。次に何が起きるのだろうか?」といった見出しの記事で、頼清徳次期総統のことを「トラブルメーカー」「分裂メーカー」と報じている。
そして中国共産党は選挙期間中「民進党に投票しないように」と発信し続けてきたが、結局は民進党の頼清徳が当選を果たした。
総統選挙は「総統と副総統を共に選ぶ」という形式である。
2024年中華民国総統選挙の立候補者は以下である。
民進党からは総統候補に頼清徳、副総統に蕭美琴
国民党からは総統候補に侯友宜、副総統候補に趙少康
民衆党からは総統候補に柯文哲、副総統候補に吳欣盈
民進党は558万票で総投票数の40.05%を獲得、続いて国民党が467万票で総投票数の33.49%、民衆党が369万票で総投票数の26.36%となり、民進党の頼清徳と蕭美琴がそれぞれ、総統と副総統に選出された。
Team Taiwan
民進党の選挙スローガンを紹介しよう。
「選對的人,走對的路」(正しい人を選べば、国は正しい道を進める)
「美德雙全,穩健向前」(候補者二人の長所が合わさればパーフェクト、着実に前に進める)
というダブルスローガンで、台湾を一つのチームとして一丸となって前進しようという「団結力」を全面にアピールしたものだった。
そして選挙活動も変わっており、若い人の心を掴むキャッチーなものだった。
「犬派」と「猫派」と分けて、犬と猫のキャラクターを使ったのだ。
頼清徳氏は犬好きの「犬派」で、蕭美琴氏は猫好きの「猫派」である。
実際に二人は本当に犬派と猫派で分かれており、二人を形容する言葉として「犬派・猫派」を使ったのだ。とても面白い発想だ。
選挙前の広告動画
また選挙前に公開された、現総統の蔡英文とドライブする広告動画が大きな話題を呼んだ。
「在路上(道の上で)」というタイトルで、youtube以外のメディアを含めて400万回以上の再生数となり、2万人以上がこの動画をシェアした。
蔡英文が車を運転し、頼清徳が助手席に座っているシチュエーションで、この時点では蔡英文が総統で頼清徳は副総統という立ち位置だ。
蔡總統「初めて私の運転する車に乗るでしょ?」
賴副総統「違いますよ。もう4年も一緒に走っているじゃないですか。とても充実した、チャレンジに満ちた四年間でした。」
二人は中国語ではなく、国民の生活に密着した台湾語で話している。字幕は中国語だ。
その再生数とシェア数から、国民にも快く受け入れられていることがわかる。
新総統・頼清徳のスローガン
頼清徳は特に「台湾の団結と独立」をスローガンとして強く掲げている。
「国民団結」は今後の台湾に絶対不可欠である。台湾はもともと独立した主権国家であり、単なる中国の一部ではない。それは、すでに国際的にも認知されており、それをわざわざ宣言する必要もない。中華民国台湾は2300万人の台湾人のものであり、国民が台湾の未来を決定するのが正しい。民意調査でも大多数の国民が中華人民共和国との統一に反対している。
この独立、団結の決定は決して「戦争や争い」を選ぶことではない。開放された自由な台湾を実現させることこそ、国民の幸福につながる。
とはいえ、中国との関係については「私は親中であって反中ではない。親中愛台だ」とも主張している。
5月20日についに新総統・頼清徳が就任する。
台湾はどんな国になっていくのだろうか。
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