台湾と中国
台湾と中国の関係は、歴史を見てもわかるように非常に複雑で敏感な問題を抱えている。
中国は「台湾は中国の一部」と主張し、台湾は「独立した国家」であると主張する。
現在、筆者は台湾に住んでいるので、台湾人の意見を聞くことが多いのだが、彼らは断固として中国の一部であることを認めない。
オリンピックの舞台でも、中国は台湾が「中華台北」として出場することを認めているが、「台湾」という名称の使用は許されていない。
今回のパリオリンピックでも、様々な物議を醸している。
「海峡大戦」
この事件は、男子バドミントンダブルスの金メダルをかけた決勝戦で起きた。
台湾のメディアはこの試合を「海峡大戦」と名付けた。
中華台北は王齊麟と李洋のペア、中国は梁・王のペアの対戦であった。結果として中華台北が2セットを獲得し、金メダルを獲得した。
筆者は台湾人の友人とリアルタイムで観戦していたが、その喜びようは相当なものであった。
この時点で、中華台北はまだ金メダルを獲得しておらず、初めての金メダルであったからである。彼らの喜びも当然のことであった。
筆者は試合を応援すると共に、その会場の様子や雰囲気にも注目していた。というのも、中国と中華台北の対戦ということで、会場で何か起きるかもしれないと思ったからである。
応援会場は圧倒的な中国の国旗の数、中国応援モード一色で、台湾人の友人はそれに少し不満を漏らしていた。
台湾の応援プラカードが没収される
そんな中でも筆者は、いくつかの台湾の国旗や応援プラカードを目にした。
しかしここで事件が起きた。
台湾ファンが応援プラカードを掲げていたのだが、そのプラカードは後ろから手が伸びてきて強制的に下され、没収されてしまったのだ。
中国と中華台北が対戦する試合では、特に警備が厳しく、「台湾」という文字に非常に敏感になっており、警備員を増員して対応しているという。
テレビ放送にも圧力か
この試合は、元々CCTV-5での中継が計画されていたが、急遽取りやめとなった。
その後、多くのファンからの抗議を受け、CCTV-16での中継となった。
公式な理由としては「一時的に電波が不安定になった」とされるが、多くの人はその背後に政治的な圧力を感じたという。
中国人の反応
中華台北の金メダル獲得後、インターネット上では多くの興味深い反応が見られた。
台湾人は喜び、彼らの栄光を讃え、東京オリンピックに続き、2大会連続金メダル獲得を祝う声が止むことはなかった。
一方で中国の反応は、「台湾は中国の一部であり、中国が金メダルを取ったのと同じだ」といった政治的な発言が多かった。それに対して中華台北側は「スポーツの世界に政治的観点を持ち込むべきではない」と反論する声が多い。
国旗歌
金メダルを獲得した中華台北の両選手が表彰台に登った際、流れたのは「国旗歌」の旋律であった。
台湾では「国歌」と呼ばずに「国旗歌」と呼ぶが、扱いは国歌という形である。国ではないので、国歌という呼び名は使えないという。
しかもオリンピックで歌われるのは、国旗歌と同じメロディーで歌詞が違う歌で、題して「中華台北オリンピックの歌」である。
歌詞は「オリンピックは宗教や種族に関わりなく、世界が平等に一つになれる大会である」といった内容である。
台湾の友人たちは、国家間のいざこざに個人の努力が軽んじられることがあってはいけないと考えている。オリンピックは純粋な競技と努力の場であり、そこに政治的な問題が影を落とすべきではないという信念を持っているようだ。
参考 : 小粉红抢夺“台湾加油”横幅 台外交部怒斥粗暴缺教养
この記事へのコメントはありません。