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「秘密結社イルミナティ」は実在していた? ~歴史的視点から紐解く

イルミナティ」という名前を聞くと、多くの人が「世界を陰で支配する秘密結社」を連想するでしょう。

映画や小説、インターネットの陰謀論で頻繁に取り上げられ、恐るべき存在、恐怖の象徴のような描かれ方をしています。

政治、経済、宗教、エンターテインメント業界まで、あらゆる分野に影響を持つとされる組織ですが、歴史的にイルミナティはどのような組織だったのでしょうか。

イルミナティの起源 : 啓蒙思想と理性主義の結社

画像 : アダム・ヴァイスハウプトの肖像 public domain

イルミナティは、1776年にドイツのバイエルン州で、インゴルシュタット大学の法律学教授アダム・ヴァイスハウプトによって設立された秘密結社が始まりとされています。

ヴァイスハウプトは、当時の強力なカトリック教会と絶対王政に対して反対の立場を取り、これらの権威主義から人々を解放することを目指していました。彼が目指したのは、「啓蒙主義」に基づく自由で理性的な社会の構築でした。

啓蒙思想とは、人間は理性と知識を用いて進歩できるという考え方で、18世紀のヨーロッパで広がった知的運動です。ヴァイスハウプトは、この啓蒙思想を広めるために、イルミナティを「光をもたらす者」として、知識人の集まりとして位置づけたのです。イルミナティは、教会や政府の権威に縛られず、理性と科学を重んじる社会を目指して活動していました。

イルミナティの組織構造は非常に秘密主義的で、階級制度が存在し、上位メンバーのみが組織の全容を知ることができました。この秘密性は、彼らの思想が当時の権力者たちに危険視されていたことも一因です。

また、ヴァイスハウプトは、フリーメイソンのような他の秘密結社との提携を目指し、イルミナティをより大規模な思想運動へと発展させようとしました。

イルミナティの活動とその抑圧

カール・テオドール選帝侯 public domain

イルミナティは設立から間もなくして、ヨーロッパの知識人層や官僚、貴族の間で支持を集めました。

彼らは秘密の会合を通じて啓蒙思想を議論し、教育や宗教、政治における改革を目指して活動していました。特に、カトリック教会の権力に対抗し、理性に基づく社会改革を推進しようとしたのです。

しかし、イルミナティの反権力的な体制は、バイエルン政府やカトリック教会にとって大きな脅威となりました。イルミナティが自由思想や教会への反対を広めようとしていることが知られるようになると、権力者たちは彼らの活動を危険視し、取り締まりを始めたのです。

1784年には、バイエルン政府カール・テオドール選帝侯がイルミナティを違法とし、その活動を禁止しました。多くのメンバーが逮捕され、組織は解散を余儀なくされたのです。

イルミナティが活動していた期間は実際にはわずか9年間という短期間であり、その影響力も地域的には限られていました。

しかし、イルミナティという名前は、その後も「秘密結社」の象徴として語り継がれ、陰謀論の温床となっていったのです。

フランス革命とイルミナティ陰謀論の発展

フランス革命とイルミナティ ※草の実堂作成

イルミナティが解散した後、18世紀末にフランス革命が勃発します。

この革命は、ヨーロッパ全体を揺るがす大変革であり、君主制と教会の力が崩壊し、自由と平等を掲げる新たな政治体制が生まれました。この激動の時代に、多くの保守派や宗教勢力は、革命が単なる偶然ではなく、何らかの「見えない力」によって引き起こされたのではないかと疑ったのです。

その中で、イルミナティがフランス革命を裏で操っていたという陰謀論が広がり始めました。1797年、スコットランド人の聖職者ジョン・ロビソンが「イルミナティが革命を計画していた」という内容の著作を発表し、イルミナティが世界の政治を操る影の存在として描かれました。さらに、アメリカでも同様の陰謀論が広がり、イルミナティがアメリカ独立戦争やその後の政治に関与しているという噂が立ったのです。

イルミナティが実際にフランス革命やアメリカの独立に関与していたという証拠はありませんが、陰謀論はその後も拡大していき、政治的・社会的な変革が起こるたびにイルミナティの関与が噂されるようになりました。

20世紀のイルミナティと新世界秩序「New World Order」

新世界秩序New World Order ※草の実堂作成

イルミナティに関する陰謀論は、20世紀に入ってからも継続し、特に「新世界秩序(New World Order 略称 : NWO)」という概念と結びつきました。

NWOは、影の勢力が世界統一政府を樹立し、地球全体を支配しようとしているという陰謀論です。この陰謀論では、イルミナティがその中心的な役割を果たしているとされ、多くの陰謀論者が「イルミナティが金融機関や政府、メディアなどを通じて世界を支配している」と主張しました。

冷戦時代には、東西対立や核戦争の恐怖が広がる中で、イルミナティが世界の運命を左右する存在として描かれることが増えました。また、インターネットの普及により、陰謀論は瞬く間に広がり、イルミナティがロックフェラー家やロスチャイルド家などの大富豪、さらにはハリウッドのセレブリティたちとも深い関係があるとされました。

このように、イルミナティは現代社会においても「影の政府」としての象徴的な存在となり、様々な陰謀論の中心に据えられたのです。

イルミナティのシンボルとポピュラー文化への影響

画像 : イルミナティのエンブレム「ミネルバのフクロウ」 public domain

イルミナティに関する陰謀論の中でよく登場するのが、「ひとつ目のピラミッド」や「フクロウ」などのシンボルです。

特に、ひとつ目のピラミッドは、アメリカ合衆国の1ドル紙幣にも描かれており、陰謀論者たちは「これをイルミナティがアメリカ政府に深く関わっている証拠だ」と主張しています。

また、イルミナティの影響は、エンターテインメント業界にも及んでいます。多くの映画や音楽ビデオでイルミナティのシンボルが使われており、例えば、映画『天使と悪魔』や『ナショナル・トレジャー』などでは、イルミナティが物語の中心に据えられています。

このように近年では世界支配や世界人口の削減など、イルミナティの歴史的事実とは限らない都市伝説として数多く語られることになったのです。

終わりに

画像 : イルミナティ(Illuminati)草の実堂作成

少なくとも18世紀に存在していたイルミナティは、政治的な改革や啓蒙思想を広めようとした組織であり、陰謀論で描かれるような世界規模の支配を目指す活動をしていたわけではありませんでした。

現代において、イルミナティは様々な陰謀論の中核を成しています。その存在や影響力については確かな証拠が乏しいものの、一部の人々にとっては世界の出来事を理解する枠組みとして機能しているのも事実です。もしかすると、何らかの形で現代においても影響力を持っている可能性は完全には排除できないかもしれません。

イルミナティという名は、社会の変革や不安に対する「見えざる力」の象徴として語り継がれていくことが予想され、その神秘性や謎めいたイメージはこれからも続くでしょう。

余談ですが、イルミナティの公式サイトのようなものも存在しています。

https://www.illuminatiofficial.org/

本物なのかネタだったのかは不明ですが、2017年頃までは活動していたようです。

参考 :
『Illuminati Conspiracy Part One』
『秘密結社の事典:暗殺教団からフリーメイソンまで』
文 / 草の実堂編集部

 

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