2025年、国際情勢はかつてないほど緊迫している。
ドナルド・トランプが再びアメリカ合衆国の大統領に返り咲き、その外交政策が世界に波紋を広げている。
特に注目されるのは、彼がロシアに対する擁護的な姿勢を明確に打ち出したことだ。
ウクライナ戦争が膠着状態に陥る中、トランプは「NATO の拡大がロシアを挑発した」と主張し、ロシアとの対話を重視する方針を示している。
この動きは、アメリカの伝統的な同盟国である欧州諸国や日本に不安を与えているが、同時に、中国にとっては地政学的なチャンスと映っている。
法の支配ではなく、力の支配で動く弱肉強食の世界

画像 : ドナルド・トランプ public domain
中国は、トランプ政権の「アメリカ第一主義」が国際社会の結束を弱めると見て、台湾への圧力を急速に強めている。
習近平政権は「一つの中国」原則を掲げ、台湾を自国の一部とみなす立場を崩さない。近年、台湾海峡での軍事演習が頻発し、人民解放軍の戦闘機や軍艦が台湾周辺に展開する回数が急増している。
2025年3月時点で、米国のシンクタンクは「中国が2027年までに台湾侵攻を準備している可能性が高い」と警告を発しているが、トランプのロシア寄り姿勢がこのスケジュールを前倒しさせる恐れがある。
トランプがロシアとの関係修復に注力する一方で、アジア太平洋地域への関与が手薄になれば、中国は台湾への軍事行動を決断する可能性が高まる。米国がウクライナ支援や中東情勢に気を取られ、アジアでの軍事プレゼンスが低下する中、中国は「今がチャンス」と判断するかもしれない。
台湾有事が勃発すれば、その影響は東アジア全域に及び、特に日本は戦争に巻き込まれる危険性が高い。
台湾有事は必然的に日本有事となる

画像 : 習近平 CC BY 3.0
日本にとって、台湾海峡は生命線だ。日本のエネルギーや物資の多くは、この海峡を通る海上交通路に依存している。
中国が台湾を制圧すれば、このルートは中国の支配下に置かれ、日本の経済は大打撃を受ける。さらに、米軍が日本に駐留する沖縄の基地は、台湾防衛の最前線となる可能性が高い。中国が台湾侵攻を試みた場合、米軍は沖縄から出動し、日本は自動的に紛争に巻き込まれる。
日米安保条約に基づき、日本は米軍の後方支援を担う義務があり、自衛隊が戦闘地域に展開するシナリオも現実味を帯びてくる。
加えて、中国とロシアの連携が深まる中、日本は北方領土問題を抱えるロシアとも対峙せざるを得ない。トランプがロシアとの対立を避ける姿勢を見せれば、日本は米国からの支援を得られず、孤立する危険性がある。
中国が台湾を攻撃し、同時にロシアが北方領土や北海道近海で挑発行動に出れば、日本は二正面作戦を強いられることになる。これは、日本の防衛力にとって未曾有の試練だ。
国民の間では、こうした危機感が高まっている。2025年春、政府は防衛費の増額と自衛隊の増強を決定したが、準備が間に合うかは不透明だ。
世論調査では、「台湾有事が日本に及ぶ可能性がある」と考える人が8割を超え、若者を中心に徴兵制復活を懸念する声も上がっている。経済界からは、サプライチェーンの混乱や中国市場への依存度低下を求める声が強まりつつあるが、現実には脱中国は容易ではない。
一方で、国際社会の対応も不透明だ。トランプ政権下の米国がアジアへの関与を減らせば、NATO諸国やオーストラリア、インドといったインド太平洋地域の同盟国も、独自の対応を迫られる。
中国の軍事力増強に対抗するため、日本は「 QUAD (日米豪印)」や AUKUS との連携を強化する動きを見せるが、これが中国をさらに刺激する可能性もある。中国は「外部勢力の介入」を理由に、軍事行動を正当化するかもしれない。
台湾有事が現実となれば、日本は単なる傍観者ではいられない。沖縄や九州での避難訓練が始まり、政府は国民に「有事への備え」を呼びかける。
だが、戦後80年近く平和を享受してきた日本社会にとって、戦争という現実を受け入れるのは容易ではない。
トランプのロシア擁護が中国の野心を加速させ、台湾を火薬庫とする東アジアの緊張が一気に爆発する――そんなシナリオが、今、目の前に迫っている。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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