国際情勢

『世界激震のトランプ相互関税』日本が欧州のようにトランプに屈しない態度を示さないワケ

トランプ相互関税の嵐が日本にも襲いかかっている。

日本に対しては24%の関税が課され、アメリカへの輸出に深刻な打撃を与えるこの政策に対し、欧州連合(EU)は20%の関税を課されながらも強い反発を示している。

しかし、日本はまるで嵐の中で息を潜めるかのように、目立った抵抗を見せていない。

この消極姿勢の裏には、トランプの怒りを買うことへの深い恐れがある。

在日米軍の撤退もあり得る

画像 : 石破茂首相 CC BY 4.0

日本がトランプに屈しない態度を示さない最大の理由は、在日米軍の存在である。

トランプは過去にも「日本は防衛費を払え」と圧力をかけてきた経緯があり、彼の予測不能な性格を考えると、関税への反発が「日本を見捨てる」決断につながるリスクは無視できない。

在日米軍が撤退すれば、北朝鮮や中国といった近隣の脅威に対抗する日本の安全保障は一瞬にして崩壊する。
特に中国は、南シナ海だけでなく尖閣諸島周辺でも挑発を強めており、アメリカの軍事支援なしでは日本は孤立無援となるだろう。
トランプが憤慨し、「日本は自分で守れ」と言い放つシナリオは、決して絵空事ではない。

経済的な依存も見逃せない。

日本は自動車や電子機器の輸出でアメリカ市場に大きく頼っており、24%の関税は企業に重い負担を強いる。しかし、報復関税で対抗すれば、トランプがさらなる報復として自動車関税を上乗せするなど、経済戦争がエスカレートする恐れがある。

トヨタやホンダといった大企業が打撃を受ければ、日本経済全体が沈没しかねない。

政府は「我慢するしかない」と判断しているのだ。

米国のカモであり続ける日本

画像 : イメージ 日米関係は決して安泰ではない

さらに、日本の外交スタイルもこの姿勢を助長している。

歴史的に日本は、強硬な対立よりも交渉と妥協を重視する傾向がある。EUがトランプに対して報復関税やWTOへの提訴で対抗する一方、日本は裏舞台での調整や穏健な対話を好む。

現在日本は、トランプとの個人的な関係構築を試みつつ、表立った対決を避ける戦略を取っている。
しかし、この「静かな外交」がトランプの強気な性格に通用するかは疑問だ。

従順さが逆効果を生む可能性もある。トランプは弱腰な相手をさらに締め上げる傾向があり、日本が抵抗しない限り、関税率がさらに引き上げられる危険性は高い。
EUのように交渉や対抗措置を準備する姿勢を見せなければ、日本はトランプの「カモ」にされ続けるだろう。

そして、もしトランプが本当に在日米軍を引き揚げれば、アジア太平洋地域の勢力図は一変し、日本は未曾有の危機に直面する。

企業や国民の間では「耐えるだけでは限界がある」との声も上がりつつあり、政府への不満が募れば内政にも影響を及ぼすかもしれない。

日本が静かに耐えるのは、破滅を避けるための苦渋の選択だが、その先にはさらなる試練が待っている。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

アバター

エックスレバン

投稿者の記事一覧

国際社会の現在や歴史について研究し、現地に赴くなどして政治や経済、文化などを調査する。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 日本人にはあまり馴染みのない「中国の数字にまつわる面白い迷信」
  2. 全財産を失ったニコラス・ケイジの素顔【血は争えない!?】
  3. あなたにもいずれ訪れる「死」、その先には何が? ~ライアン君の前…
  4. 日本に中国における「パンダ」の関係 【パンダ痴漢】
  5. 【台湾の幻のスイーツ】 愛玉(オーギョーチ)とは?
  6. 北朝鮮は台湾有事をどう捉えるか ~米中対立が北朝鮮の「漁夫の利」…
  7. 日本人が間違いやすいネイティブ英語⑦【飲み物、お酒、食事処のサー…
  8. アサド政権崩壊で懸念されるイスラム国の再生 ~そもそもイスラム国…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

なぜ親は子どもを学校に通わせなければいけないのか? 【義務教育の起源】

「親が自分の子に虐待を加えて、殺害する」「子どもにご飯を与えず、衰弱させて、共済金をだまし取る」…

美しすぎる日本の廃墟5選 「日本近代史を物語る廃墟と遺構」

皆さんは廃墟に対して、どのようなイメージを持っているだろうか。廃墟を目の当たりにして…

「逆玉も楽じゃない?」王冠なき王アルバートと、英国女王ヴィクトリアの絶妙な権力バランス

19世紀中盤、英国の政治と社会の変革を象徴する存在が、ヴィクトリア女王とアルバート王配の関係…

豊臣秀吉は本当に『貧しい農民の子』だったのか?消された父と出自をめぐる謎

低い身分から天下人にまで成り上がり、戦国時代を終わらせた男・豊臣秀吉。日本人なら誰で…

【夫に32年間幽閉される】呪いの手紙を残した悲劇の王妃ゾフィー・ドロテア

17世紀後半、神聖ローマ帝国の一角に、美貌と聡明さで知られる一人の王妃がいました。彼…

アーカイブ

PAGE TOP