トランプ政権発足から100日が経過し、日本に対するスタンスや政策の方向性が徐々に明らかになってきた。
今回は、経済・外交・安全保障の3つの視点から、トランプ政権が現状、日本をどのように見ているのか整理してみたい。
経済:関税と貿易の圧力

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トランプ政権は「アメリカ第一主義」を掲げ、対外貿易の不均衡是正に強い意欲を示す。
特に日本に対しては、自動車産業を中心に貿易赤字を問題視する。
2025年4月29日のミシガン州での演説では、トランプ大統領は「日本は素晴らしい国だが、アメリカで自動車を生産すべきだ」と述べ、日本からの自動車輸入に不満を表明。自動車や部品への25%の追加関税を導入し、国内生産を促す方針を強調した。
これにより、日本企業は米国での生産拡大や戦略の見直しを迫られている。一方、日本を含む各国との相互関税は当初24%に引き上げられたが、経済への影響を考慮し、2025年7月9日までの90日間停止された。
この措置は、金融市場の混乱(株安、債券安、ドル安)を受けた方針転換とされるが、日本との交渉は継続中であり、関税率の引き下げや減免を求める動きが本格化している。
日本企業、特に工作機械や半導体業界では、関税による需要減退への懸念が広がっている。
トランプ政権は日本の経済力を認めつつ、貿易赤字是正のため圧力を緩めない姿勢である。
外交:同盟関係と従属への懸念

画像 : トランプ大統領 public domain
トランプ政権の外交は利益重視の「損得外交」にシフトし、日米同盟もその枠組みで評価される。
トランプ大統領は日本を重要な同盟国と認めつつ、経済的・軍事的負担の公平性を求める発言を繰り返している。
過去の第一次政権では、安倍晋三元首相との信頼関係を背景に良好な関係を維持したが、2期目ではより露骨な要求が予想される。
トランプ政権が日本を「属国」や「植民地」とみなすとの見方もあり、保守層の一部が「日米関係は従属関係が深化する」と警戒している。例えば、トランプ政権の情報長官候補が日本を「太平洋侵略国」と敵視する発言をしたとされ、反発を招いた。
これに対し、トランプ政権は日本の地政学的価値を理解しつつ、ウクライナや中東情勢での日本の役割拡大を期待する可能性がある。しかし、具体的な外交成果は少なく、ロシアや中国との交渉における日本の立ち位置は不透明である。
日本政府は、トランプ政権の動向を見極めつつ、中国との接触を積極化するなど、独自の外交バランスを模索している。
安全保障:日本の役割と試練

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安全保障面では、トランプ政権は中国を「最大の脅威」と見なし、日本を含む同盟国との連携強化を求めている。
ただし、孤立主義的傾向から、日本への軍事負担増や在日米軍駐留経費の増額要求が予想される。
日本の防衛力強化や「自由で開かれたインド太平洋」構想への積極的関与は評価されているものの、同時に日本の再軍備には警戒感を示す場面もあり、アメリカ側の姿勢は一貫性を欠いている。
情報長官候補の発言は歴史的文脈を無視したものとして批判されたが、政権全体のスタンスを反映するものではない可能性がある。
トランプ政権は、経済面では日本を貿易赤字をもたらす競争相手と見なしつつ、安全保障では不可欠な同盟国として位置づけるという二面性を見せている。
関税や貿易交渉を通じて強硬な圧力をかける一方で、外交・軍事面では協力を要請するという姿勢は、自己利益を最優先する「アメリカ第一主義」の表れでもあり、日本側には対米従属の深まりへの懸念が根強い。
こうした中、日本にはトランプ政権の不透明な動向に対応しながら、経済的リスクを抑えつつ外交・安全保障における自主性を確保する戦略的な舵取りが求められるだろう。
発足から100日間のトランプ政権は、演説で成果を誇張する一方、実際の支持率は低下傾向にあり、対日関係の先行きもなお不透明なままである。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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