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第二次大戦の2つのフランス【ヴィシーフランスと自由フランス】

フランスの降伏

第二次大戦の2つのフランス【ヴィシーフランスと自由フランス】

※アルデンヌの森での休戦交渉の様子

ポーランド侵攻で始まった第二次世界大戦。

フランスとイギリスは西部戦線でドイツとの膠着状態が続いていましたが、しかしドイツは5月10日に突如ベネルクス三国に侵攻し、フランスが威信をかけて国境に築いたマジノ要塞を通らず要塞線がない北部を突破して、フランス領内に攻め入り6月にはパリを占領。

もうドイツとの戦いを続けられないとしたフランス政府は、ドイツに対して休戦協定を持ちかけフランスは降伏した。

ヴィシーフランスの成立

※ペタン元帥

ドイツがフランスに課した休戦協定は、パリを含む北西側の領地の喪失などの第一次世界大戦の報復とも見られるほど厳しいものであった。

そしてドイツに支配を許された南東部を新たにフィリップ・ペタン元帥を中心とする、ヴィシーフランスが統治することとなりました。

ヴィシーフランスは正統なフランス政府として国外から認められますが、その実態は議会は無く、些細な政治をするにもドイツから介入される、いわば傀儡国と成り果ててしまう有様でした。

自由フランスの成立と苦難

※ドゴール大佐

しかし、新たに成立したヴィシーフランスに対して抵抗するある一人の軍人がいました。その名もシャルル・ド・ゴール

後にフランス第五共和政の初代大統領となる人物です。

ド・ゴールはイギリスに亡命しBBCのラジオ放送を通じて自由フランスを樹立。イギリス政府の助けを受け10月にはフランス植民地ブラザヴィルで海外領土防衛協議会を設立。フランスの海外植民地に抵抗を呼びかけた。

しかし、ほとんどの国がヴィシーフランスを正統なフランス政府としてみなしており、イギリス以外の国からは冷ややかな目で見られ相手にされることはなかった。

しかし、ド・ゴールの必死のアプローチによってソ連が自由フランスを承認。さらに1943年に入り北アフリカを連合国が占拠すると、自由フランスは本拠地をアルジェリアのアルジェに移し、フランス国民解放委員会を設立し祖国フランスの解放に本格的に乗り出し始めた。

ヴィシーフランスの崩壊とパリ解放

ドイツが独ソ戦で不利になり、さらに北アフリカが連合国に占領され始めるとヒトラーアントン作戦と開始し、フランス南部も実効支配して完全にドイツの傀儡となった。

一方で自由フランスは1944年に国民解放委員会をフランス臨時政府に改めた。

さらに、6月には連合国によるノルマンディー上陸作戦が開始され8月にパリを解放。10月にヴィシーフランスに代わり正統なフランス政府として認められついにド・ゴールは念願のパリの奪還に成功した。

※パリ解放

ヴィシーフランスは臨時政府に政権を譲渡する形で、なんとか穏便に済ませたいと考えていたが失敗。

ペタン元帥始めヴィシーフランスに加担した官僚や軍人は逮捕された。

フランスのその後

フランスはドイツの降伏後、イギリスの外交交渉により国際連合の常任理事国として参加することとなり、大国フランスの面目を保つことができた。

フランスはその後、第四次、第五共和政という政府を組織してド・ゴールはその第五共和政の初代大統領として就任。ド・ゴール主義を引き下げ戦後のフランスを指導し今ではナポレオンジャンヌダルクと並ぶフランスの偉人に数えられている。

一方、ペタン元帥は戦後裁判にかけられ、死刑判決を受けてしまうがド・ゴールの温情や当時高齢だったこともあり、無期禁固刑に減刑され終戦から6年後の1951年に流刑先の島でひっそりと亡くなった。

しかし、ペタン元帥自身もフランスが完全に消えないように休戦し、ドイツ傀儡でありながらもフランスの名を残したことが最近になって再評価されるようになっていった。

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