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ホラー映画『エスター』の主人公が患っていた「大人なのに子供に見える病気」とは

映画『エスター』のポスター cc Warner Bros. Pictures.

ホラーサスペンス映画『エスター』ってどんな作品?

2009年に公開された映画『エスター』は、9歳の孤児少女を装った33歳女性の、サイコパス的な連続殺人鬼の悲しい物語である。

当時12歳だった俳優イザベル・ファーマンが、主人公「エスター・コールマン」を演じた。

画像 : エスターを演じた俳優イザベル・ファーマン CC BY-SA 2.0

ストーリーは、3人目の子どもを死産し、その喪失を埋めるために養子を必要としていたコールマン一家に、孤児院で暮らしていたエスターが迎え入れられるところから始まる。

エスターは頭の回転が速く、ピアノと絵画が得意で周囲に愛想よく振る舞う、問題のない少女に見えた。

ところが、実は彼女は「下垂体性機能低下症」による成長ホルモン異常を原因とした発育不全のため、体型が9歳の少女に見えるだけで実年齢は33歳の成人女性だったのである。

男性から大人の女性として愛してもらえないコンプレックスから、エスターは問題を起こし続け、コールマン一家に数々の不幸をもたらし恐怖に陥れるようになる。

エスターの異変に気づいた養母のケイト・コールマンは彼女の過去と素性を調べ、これまで転々としてきた孤児院や里親たちを次々と殺害していた事実を突き止める。

エスターは、「大人として扱われたい」「大人の男性と付き合いたい」という精神的かつ肉体的な愛情飢餓を埋めようと、孤児院の男性職員や養子に入った家庭の父親を誘惑し独占するために、多くの家庭を崩壊させてきた過去を持っていたのである。

性的に誘惑した男性から拒絶された後は、サイコパスをむき出しに連続殺人鬼と化し、姿をくらましてはまた養子として大人の男性のいる家庭に潜り込む、という奇行を繰り返していたのであった。

映画『エスター』の前日譚、映画『エスター~ファースト・キル~』も2022年に公開されている。

2009年公開の映画『エスター』では、当時12歳だったイザベル・ファーマンが体型9歳、実年齢33歳のエスター役を怪演したが、その13年後に公開された続編『エスター~ファースト・キル~』でも、実際には23歳に成長していたイザベル・ファーマンがエスターを演じている。

下垂体性機能低下症とは?

画像 : 下垂体機能低下症 public domain

下垂体性機能不全」とは、一体どのような病気なのだろうか?

その前に「下垂体性機能不全」を患っているからといって、誰もがエスターのようにサイコパスになるわけでもないし、もちろん人生を健全に生きている善良な方々がほとんどであることを強調しておきたい。また、本稿は医学的な助言を提供するものではない。

「下垂体性機能不全」は、下垂体ホルモンの一つ以上の分泌が低下した状態で、多彩な症状が表れる難病とされている。

「激しい倦怠感、体重の著しい減少、血栓や貧血、低身長、不妊症、寒さへの耐性の弱さ、第二次性徴が起こらない、炎症性の疾患」などが特徴的な症状で、多くの場合、甲状腺刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの減少により、肉体の成長に著しい影響が出る。

副腎機能が低下し、激しい疲労感、低血糖、ストレス耐性の低下が起こったり、女性の場合は生理不順や出産後の乳汁量の減少もみられることがあるという。

一番の特徴は、子ども時代に骨格が成長を終えてしまうことがほとんどなため、実年齢が成人になっても、見た目が幼児や小学生と間違えられやすいことだ。

映画『エスター』は、この特徴を逆手にとって製作された作品だったのである。

日本では、令和3年度の医療受給者証保持数は19,006人と発表されているが、原因やホルモンの種類が多岐にわたるため、実際の患者数はもっと多いと考えられている。

発症の原因は、「脳の腫瘍、 炎症、膿瘍、肉芽腫、手術後、放射線、生まれつきの遺伝子変異」など多岐にわたり、「脳下垂体」とその上にある「間脳」に何らかの障害が生じた場合に起こると考えられている。

一部は何かしらの免疫異常が関係していると考えられており、現在も研究が進められている。

以前は、女性の出産時の多量出血が引き金となって発症することがあったが、現在は減少傾向にあるという。

治療法は、「ホルモン剤の投与」と「手術」

治療方法の研究も進んでおり、現在は主に「ホルモン療法」と「手術」が行われているが、子どもと成人とでは症状も治療法も異なるため、年齢に応じた専門的な治療が必要とされている。

「ホルモン療法」としては、年齢と体力に合わせたホルモン剤投与を続けることで日常生活を送れるようになるという。

しかし、下垂体組織が自然に機能を回復することは稀なため、多くの場合、生涯にわたってホルモン補充治療を続けるケースがほとんどである。

「手術」は、下垂体腫瘍の切除や放射線治療での腫瘍への照射などが行われている。

イザベル・ファーマンからのメッセージ

 

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エスターも、善意ある人物との出会いや関わりによって幼少期に適切な治療が施されていれば、数々の悲劇を起こさずに済んだのかもしれない。

そして、彼女の生い立ちや幼少時代のストーリーはまだ明かされていない。

第3作となる続編の製作が企画進行中で、『エスター』ファンからは新作で彼女の生い立ちが描かれることが期待されている。

12歳当時と23歳当時、11年の時を超えてエスターを演じた俳優イザベル・ファーマンは、web記事『ホラー通信』のインタビューで、エスターの人物像と観客へのメッセージとしてこのように語っている。

エスターは苦労の多い人生を歩んできたの。

彼女の歪んだ心は、愛された記憶がないこと、素の自分を受け入れてもらった経験がないことが原因だと思う。

下垂体性機能不全の病気を患っていることで、周囲から特別な見方をされたくないと思いつつも、大人の女性として見られたいという願望を抱いている。

人々にどう受け入れられたいか、常に自分の中で葛藤があるんだと思う。

さらに、周囲は本来の自分を理解していないと思っている。

それは彼女自身が自分を分かってないからよ。

ベストな自分を目指すためには、まずは自分のことを理解しないと。

彼女が直面する問題の多くは『周囲にこう見られている』という思い込みや、自分の中で作り上げている妄想から来ている。

役者としては魅力的なキャラクターね。

『欠陥だらけのキャラクターだけど好きになっていいのよ』と観客に気づいてもらうのも面白い。

 

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藤城奈々 (編集者)

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ライター・構成作家・編集者
心理、人間関係のメカニズム、スピリチュアル、宇宙
日本脚本家連盟会員

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