国際情勢

李在明氏が韓国大統領就任「日本と仲良くしたい」反日トーンを抑えた理由とは?

2025年6月3日に行われた韓国大統領選挙で、革新系「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏が得票率49.42%で勝利し、翌4日、第21代大統領に就任した。

尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が憲法裁判所により罷免されるという異例の展開を経て行われた今回の選挙は、韓国社会に政治的混乱と分断をもたらしていた。

そんな中、李氏が選挙戦で取ったのは、従来よりも明らかに抑制された「反日トーン」である。

本稿では、李在明氏が反日姿勢を抑制した背景と、それが選挙結果に与えた影響を多角的に解説する。

厳しい安全保障環境と現実的外交の必要性

画像 : 李在明(イ・ジェミョン)氏 public domain

韓国は、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威や、中国の影響力拡大、米中対立の激化といった複雑な安全保障環境に直面している。

北朝鮮は近年、戦術核の開発やミサイル発射を繰り返し、韓国にとって直接的な脅威となっている。また、米国のトランプ政権復帰により、韓米同盟の不確実性が増す中、韓国は日米韓の三国協力を強化する必要に迫られている。

日本は地理的・戦略的に重要なパートナーであり、情報共有や共同軍事演習を通じて北朝鮮への抑止力を高める役割を担う。

李氏は、従来の反日・反米的発言を封印し、「韓米日は重要」と強調することで、現実的かつ実用的な外交姿勢を打ち出した。これは、韓国の安全保障を確保するため、日本との関係改善が不可欠であるとの認識に基づく戦略的転換である。

特に、2025年1月の海外メディアとの会合や英国『エコノミスト』誌のインタビューで、李氏は日本との関係深化や韓米日協力の継続を明言し、従来の急進左派イメージからの脱却を図った。

このような安全保障環境下で、反日トーンを維持することは、国際社会での孤立リスクを高め、特に米国との関係悪化を招く可能性があった。

トランプ政権下での米国の「アメリカ第一主義」により、韓国は同盟国としての信頼を維持する必要があり、日本との対立は戦略的に不利と判断された。

李氏の「日本と仲良くしたい」という発言は、こうした地政学的現実を反映したものであり、反日姿勢を抑えることで日米韓の連携を強化し、韓国の安全保障を安定させる狙いがあった。

中道派の支持獲得に向けた戦略

李氏が反日トーンを抑えたもう一つの大きな理由は、中道派の支持獲得である。

韓国では、2022年の大統領選で李氏が尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に僅差で敗れた経験から、幅広い有権者層の取り込みが勝利の鍵であることが明らかだった。

特に、中道派はイデオロギー的に極端な姿勢を嫌い、経済や雇用などの実利を重視する傾向がある。

反日姿勢は、歴史問題に敏感な一部の左派支持者には訴求するが、中道派には経済協力や国際的信頼性の観点から敬遠されがちである。李氏の外交ブレーンである魏聖洛氏は、2022年のインタビューで「李氏が反日的という印象は誤解」と述べ、日本への肯定的な評価を強調した。

これは、中道派にアピールするための明確なシグナルだった。

若年層の支持と反日の限界

画像 : 日韓関係 CC BY-SA 3.0

若年層(MZ世代、1980年代~2000年代生まれ)の支持獲得も、李氏が反日トーンを抑えた要因である。

韓国の若年層は、歴史問題よりも経済的安定や雇用の創出を重視する傾向が強い。

2019年の「ノージャパン運動」以降、反日感情は一部で根強いものの、若年層はグローバル化やK-POP・K-ドラマを通じた文化交流により、日本への敵対意識が薄れている。実際、改革新党の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が若年層から支持を集めた背景には、反イデオロギー的な姿勢や現実的な政策が響いたことがある。

李在明氏は、若年層のこうした変化を捉え、反日を前面に出すよりも、文化産業振興や経済成長を強調する戦略を選んだ。
また、若年層はソーシャルメディアを通じた情報収集に積極的であり、国際社会での韓国のイメージを気にする傾向がある。過激な反日発言は、日本や米国からの批判を招き、韓国の国際的地位を下げるリスクがあるため、李氏は「日本への愛情が深い」と発言し、親日的なイメージを打ち出すことで若年層の支持を確保しようとした。

このように、李在明氏が反日トーンを抑えた背景には、韓国の厳しい安全保障環境への対応、中道派と若年層の支持獲得、そして司法リスクの管理という複数の要因が絡み合っている。

北朝鮮や米中対立の中で日本との協力が不可欠であること、中道派が実利を重視する傾向、若年層が反日より経済や国際的地位を優先する姿勢が、李氏の戦略転換を促した。

これにより、李氏は2025年大統領選で勝利を収め、韓国政治の新たな方向性を示した。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

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