
画像 : ザンビアの位置 public domain
アフリカ大陸の南部に位置するザンビア共和国。
かつて「銅の国」としてその名を馳せたこの国は今、静かな、しかし確実な「侵食」の只中にある。
その主導権を握るのは遥か東方の巨龍、中国である。
中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の波は、ザンビアの国土を飲み込み、国家の根幹を揺るがしている。
「債務の罠」という甘い蜜

画像 : ザンビアの首都 ルサカ Dr. Ferdinand Groege CC BY-SA 3.0
ザンビアが直面している最大の危機は、膨大な対外債務である。
中国は、ザンビアのインフラ整備に対して惜しみない融資を行ってきた。首都ルサカの国際空港、大規模なダム、そして果てしなく続く舗装道路。
これらは一見すると、発展途上国の自立を助ける慈悲深い支援に見える。
しかし、その構図は「債務の罠」と批判されてきた典型例の一つでもある。
2020年、ザンビアはコロナ禍の影響もあり、アフリカ諸国で最初にデフォルト(不渡り)に陥った。財政の相当部分が債務返済に充てられ、教育や医療といった国民生活に不可欠な分野が圧迫されている。
ザンビアの対外債務は中国からの融資だけでなく、ユーロ債や民間債権、多国間機関からの借り入れを含む複合的な構造であるが、その中で中国は最大級の二国間債権国の一つとされる。
中国からの融資は不透明な点が多く、借金の対価として国家の主権に関わる資源や重要施設が交渉材料になり得るのではないかという懸念が指摘されているのだ。
資源とインフラの支配権

画像 : ザンビアのムフリラで発見された自然銅 Rob Lavinsky CC-BY-SA-3.0
中国の狙いは明白だ。ザンビアが誇る世界有数の銅資源の確保、そしてアフリカ内陸部における物流拠点の掌握である。
ザンビア国内の主要な採掘現場には中国資本が入り込み、現場で働く労働者との間では、労働条件や安全管理を巡るトラブルが繰り返し報じられてきた。
さらに、インフラ建設を請け負うのは中国企業であり、資材も労働力も中国から持ち込まれることが多い。
これでは、現地に技術が蓄積されることも、雇用が劇的に改善されることもない。
完成した道路や施設は、ザンビアの発展のためというより、中国が資源を効率よく運び出すための「動脈」として機能しているのが現状である。
日常生活に浸透する中国の影
経済的侵攻は、国家レベルの大型プロジェクトに留まらない。
街を歩けば、中国製の安価な製品が市場を席巻し、地元の伝統的な産業は存続の危機に立たされている。
また、中国によるメディアへの影響力行使や、監視カメラ技術の導入を通じた治安維持への関与など、その影響はザンビア国民のプライバシーや言論の自由にまで及び始めている。
かつての植民地支配が武力による「領土の占領」であったとするなら、現在の中国によるそれは、資金とテクノロジーによる「構造の占領」であると言える。
ザンビアの街並みに並ぶ漢字の看板は、もはや異国情緒を感じさせるものではなく、この国が誰の管理下にあるかを象徴する刻印のようにさえ映るだろう。
主権の回復に向けた困難な道

画像 : ザンビア共和国のハカインデ・ヒチレマ大統領 首相官邸HP CC BY 4.0
現在のハカインデ・ヒチレマ政権は、中国への過度な依存を脱却し、欧米諸国や国際機関との関係改善を図ろうと苦心している。
しかし、一度深く入り込んだ「中国資本の楔」を抜くことは容易ではない。返済の繰り延べ交渉において、中国を含む主要債権国との調整は難航する場面もあり、国際的な枠組みの下での合意形成は容易ではない。
ザンビアの悲劇は、多くのアフリカ諸国が抱える共通の課題でもある。
資源の豊かさが、皮肉にも他国による支配を招くという「資源の呪い」から、この国は逃れられるのだろうか。
経済発展という名目で行われる「静かな侵略」に対し、国際社会の注視と、何よりザンビア自身の強靭な外交戦略が今、試されている。
参考 : IMF (2023) “IMF Welcomes Debt Treatment Agreement Reached by Zambia’s Official Creditors”他
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
























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