思想、哲学、心理学

遠距離恋愛は続かない?近くにいる人を好きになる単純接触効果

遠距離恋愛は続かない?近くにいる人を好きになる単純接触効果

遠距離恋愛 は続かない、という話がある。なかなか会えないし、お金もかかるし。

会えない時間が愛を育てる…という歌もあるが、やはり人は会う機会が適度にある人と恋に落ちやすく、続きやすいのではないか。

そう考えた心理学者がロバート・ザイアンス。アメリカの心理学者であり、1868年に論文を発表した。

ザイアンスの単純接触効果

遠距離恋愛は続かない?近くにいる人を好きになる単純接触効果

※ロバート・ザイアンス

ザイアンスは、「初めは興味がなくても何度も見たり聞いたりすると良い感情が起こる」と考えた。

例えば、広告などがある。企業が、CMやポスターなどの広告を出すのは多くの人に知ってもらいたいという意味の他、何度も繰り返し見せることで「買ってみようか」という意識を促進させる目的がある。

その他、恋愛においても「旅先で知り合った彼と遠距離恋愛の末結婚」よりも「幼馴染」「大学や高校からの付き合い」「職場恋愛」のほうが圧倒的に多いと思う。知り合う確率も大きく関係するが、触れ合う機会、見る機会、聞く機会が多いことはそれだけで好意的な感情を抱かせるのではないだろうか。

そこで、ザイアンスが1968年に発表した内容は、特に意味のない単語やシンボルをランダムに提示し、その回数によって好感度が変化するかを調べた。

結果を述べると、見る回数が多かった単語・シンボルのほうが好感度は高くなった。

その後も続く単純接触効果の証明

その後も、研究者のMoreland&Beachの実験では同程度に魅力的だと考えられるサクラ4名を大学にもぐりこませ、それぞれの出席回数をバラバラにした結果、やはり15回ある授業により多く出席していたほうが「魅力的だった」「よく見かけた」など好意的な意見が多く聞かれた。参考文献

しかし、研究者のPerlman&Oskampによると初めから不愉快に感じる相手、いわゆる「生理的に無理」という物や、途中から不愉快になった場合、何度も見せることで好感度は上がるどころか、むしろ下がり続けるということが証明されている。参考文献

単純接触効果を利用してもストーカーの恋が実ることはない

遠距離恋愛は続かない?近くにいる人を好きになる単純接触効果

単純接触効果は、ただ接触する回数を増やせば高感度も上がるという単純なものである。

しかし、人間の被験者に同様の何枚かの人間の顔写真(知り合いではない)を見せた結果、「この人は受け付けない」という人に限っての高感度は下がるのである。例え100回見せても、無理。

つまり、一度嫌われてしまった場合、何回アプローチしてもその人が振り向いてくれることはほぼないと考えてもらいたい。

これは、例えばアイドルのおっかけにも同じことが言える。何度も何度も来てくれるファンは、例えば下積み時代から支えているなど顔見知りであれば高感度は上がる。「この前も来てくれたね!」などと言われれば、嬉しくて舞い上がってしまうであろう。しかし、アイドルは夢を見せる存在であり、例えばプライベートでの買い物や友人付き合い、自宅の特定や待ち伏せなどをされれば当然不愉快であり、もし一度でもアイドル本人にそのことがバレれば、それを行った人は不愉快の対象となり、それ以降何度接触しても高感度は戻るどころか、むしろさらに嫌われることだろう。

一度別れたカップルでも、相手がまだ嫌いになりきれていなかった場合や、何かしらの特殊な事情があれば元鞘に戻ることもなくはないが、ものすごく嫌われてしまった場合、例え過去に好きだったという事実があっても一度下がった好感度は上がらない。そして、好きという感情はお互いに「もうこの人しかいない」「この人と一生一緒にいる」という気持ちを抱かせるが、往々にしてそのような出会いはまた起こるものであるし、どんなに情熱的で奇跡的な出会いと別れであっても、時が経てば傷が癒え、また別の恋に歩むものである。

単純接触効果における心理学的な実験では、残念ながら「生理的に無理」レベルまで嫌われてしまった相手の高感度があがることは無いのである。

心理学的に言える「好意を抱く性格」

好意的な性格とはどのようなものかは、心理学的にも色々と実験・調査されており、「知的な人」「明るい人」「優しい人」にその好感は集約される。

困っている時に手を差し伸べてくれる優しさ、リーダー的で話をするのが上手な明るさ、業務成績がよく勉強や仕事ができる知的さ、それぞれは最も好感をよくする。しかし、全てにおいて完璧な人間よりも、やや少し欠陥があるほうが好まれる。

成績は常に学年トップ、容姿端麗、家庭的で弟妹の面倒をみる、料理掃除も得意、非のうちどころがない完璧な人間」よりも「成績は常に学年トップ、容姿端麗、家庭的で炊事洗濯家事なども得意だが運動が苦手で鬼ごっこは小学生につかまるほど足が遅い」というほうが好まれる。

禁断の調査?「好まれる身体的特徴」

人を見た目では判断してはいけない、とはよく言われることである。しかし、それではなぜ人は必死にダイエットをしたり身体を引き締めたり、メイクをしたりファッションに気を使うのであろうか。

人を不快にさせないため最低限の清潔さは大切である。匂う人などは論外だ。しかし、魅力的な外見は男性女性ともにそれだけで好意的にとらえられ、恋愛だけでなく仕事や人付き合いにおいても恩恵を与える。大きな声では言えないが、絶対的公正を保たなければならない裁判などにおいても、美人には寛容な判決が与えられたという実験結果もあるくらいだ。

見た目など関係ないといわず、しっかりとした衣服を身に着けることや、髪型やメイクに気を使うことは自分のためにもなる。そして、魅力的な異性が傍にいると、そのパートナーの評価もあがるという実験結果もある。

身なりに気をつけることは、自分のスイッチの切り替えにも役立つ。制服やスーツを着る、メイクをすることで気持ちが引き締まり、その向上心は職場や学校でおおいに役立つであろう。外見ばかりに気を取られてもよくないが、外見を気にしないこともまた損である。

まとめ

人生を有意義に過ごすためには、身なりに気を使い、知性と優しさとユーモアを身につけ、嫌われることがないままに接触をし続ける、それが大切である。こう書くと、常々恋愛というものは面倒だし労力もかかる。しかし、結婚や子どもを持つことは決して悪くないと、一児の母である筆者はここでひっそりと述べさせていただきたい。

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