行ってみた

『知られざる宇治の世界文化遺産』 宇治上神社に行ってみた

世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成要素

古都京都の文化財」は、1994年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

この遺産群は、主に平安時代以降に築かれた歴史的価値の高い神社仏閣や城郭などから構成されています。

画像 : 古都京都の文化財 public domain

登録されているのは、京都市内にある上賀茂神社、下鴨神社、東寺、清水寺、醍醐寺、仁和寺、高山寺、西芳寺、天龍寺、金閣寺(鹿苑寺)、銀閣寺(慈照寺)、龍安寺、西本願寺、そして二条城の14件に加え、滋賀県大津市の延暦寺、さらに宇治市にある平等院と宇治上神社を含めた計17件です。

多くの寺社仏閣は、京都の観光スポットとして外国人を含め、多くの観光客が押し寄せる人気スポットとなっています。

そんな「古都京都の文化財」の構成要素の中で、最も知られていないスポットは「宇治上神社(うじがみじんじゃ)」かもしれません。
寺社仏閣が大好きな筆者も、この宇治上神社は訪れたことがありませんでした。

今回、筆者は宇治市にある宇治上神社を訪れ、あわせて世界文化遺産に登録されている平等院、そして宇治上神社と深いつながりをもつ宇治神社も参拝しました。

本記事では、「知られざる世界文化遺産」とも呼べる、宇治上神社の魅力をご紹介していきます。

知られざる世界文化遺産「宇治上神社」

京阪宇治駅から北東になだらかな登り坂を進むと宇治神社に至ります。

そこから北に少し行くと、世界文化遺産の「宇治上神社」に到着します。

画像:宇治上神社の鳥居 筆者撮影

世界文化遺産でありながら訪れる観光客も極めて少なく、静かな雰囲気の中にたたずむ、いかにも古いイメージの神社です。

この宇治上神社の詳細は不明とされていますが「醍醐天皇が神託を受けて、901年に社殿を築造した事に始まると」の伝承もあります。

鳥居をぬけると正面に拝殿が見え、その拝殿の前には、左右に円錐の清めの砂が盛られているのが目に飛び込んできます。

拝殿も立派な建築物ですが、その裏に回ると本殿を間近に見る事が出来るのです。

本殿は檜皮葺きで、左殿・中殿・右殿の3つの建物で構成され、国宝に指定された美しい建築物で、一般的な神社の本殿とは全くイメージの異なるものでした。

画像:宇治上神社の本殿 筆者撮影

平安時代には、現在の宇治神社と宇治上神社の両神社を合わせて「宇治鎮守明神」や「離宮明神」と称されていたとのことです。

また藤原氏が平等院を建立した後は、宇治上神社はその鎮守社とされ、崇敬を集めたとも伝えられています。

このように、宇治上神社は平等院とも宇治神社ともゆかりが深く、かつ非常に古くて由緒ある神社と言えるのです。

静寂の中にたたずむ本殿の姿に、筆者は感動を覚えるほどでした。

「宇治上神社」と関係深い「宇治神社」

宇治上神社を参拝して平等院に向かう途中に、宇治神社があります。

先に記した通り、かつては宇治上神社とともに、宇治鎮守明神や離宮明神として称されていた神社です。

こちらの宇治神社は、一般的な神社のイメージに近い建築物で、残念ながら世界文化遺産ではありません。

現在は独立した神社となっていますが、宇治市の地域住民にとってはどちらも身近な信仰の対象であり、初詣の際には両社をあわせて参拝する方も少なくありません。

画像:宇治神社の鳥居と拝殿 筆者撮影

この宇治神社では、ご祭神が鎮座される際に、一羽の兎が導いたと言う伝承から、「みかえり兎」と称して神の使いとされ、道徳に叶った正しい人生の道を歩むよう教え諭してくれるとの伝承があります。

宇治神社を参拝し、宇治川に掛かる朝霧橋を渡り中の島に入り、そこから橘橋を渡ると、宇治市にあるもう一つの世界文化遺産の「平等院」の参道に至ります。

余りにも有名な世界文化遺産「平等院」

宇治上神社が「知られざる世界文化遺産」なら、平等院は「有名すぎる世界文化遺産」と言えるでしょう。

常に観光客でごった返す観光スポットとなっています。

多くの方はご存知でしょうが、平等院は1052年に関白・藤原頼通が、父である道長より譲り受けた別荘を仏寺に改めたものです。

当時は、貴族や僧侶らの心を末法思想が捉えた時代で、死後に極楽往生を願う浄土信仰が、社会の各層に広く流行していました。
この極楽往生を願う浄土信仰から、阿弥陀堂として美しい鳳凰堂が建造され、堂内には仏師定朝の手による阿弥陀如来坐像が安置されています。

鳳凰が翼を広げたような鳳凰堂は、社会や美術史の教科書、そして10円玉で見慣れた建築物ですが、実際に見るとやはり息を飲む美しさです。

画像:平等院鳳凰堂 筆者撮影

おわりに

今回は、実際に宇治上神社を訪れてみて、古式ゆかしい神社建築のたたずまいに深く感動しました。

この神社は近くの宇治神社や平等院とも深いつながりを持っており、歴史的にも重要な位置にあることが改めて実感できました。

もし宇治の平等院を訪れるご予定があれば、ぜひこの「知られざる世界遺産」ともいえる宇治上神社にも足を運んでみてください。

観光地の喧騒とは無縁の静かな境内で、現存最古とされる本殿の古雅な美しさをじっくりと鑑賞していただければと思います。

参考 : 『宇治上神社公式サイト』他
文 撮影 / 草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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