城,神社寺巡り

『縁結びスポット』淀殿も通った大阪・生国魂神社(鴫野神社)に行ってみた

大阪市天王寺区にある生国魂神社は、「いくたまさん」の愛称で広く親しまれています。

その境内末社の一つに、豊臣秀吉の側室であった淀殿が厚く信仰したと伝えられる、鴫野神社(しぎのじんじゃ)があります。

これまで生国魂神社には何度か参拝してきましたが、鴫野神社に立ち寄ったことはなく、今回あらためて訪れてみました。

生国魂神社の概要

画像:生国魂神社の鳥居と境内 筆者撮影

生国魂神社は、もとは現在の大阪城の地に鎮座していましたが、豊臣秀吉の大坂城築城にともない、現在の地へ遷座したと伝えられています。

主祭神は国土の神霊とされる生島大神・足島大神で、これらの神は平安時代から新天皇の即位儀礼など、宮中祭祀とも深い関わりを持ってきました。

中世から近世にかけて庶民の崇敬も厚く、近代の社格制度では官幣大社に列せられた格式高い神社でもあります。

古くからの社殿や神宝は度重なる火災や戦災によって失われましたが、現在の本殿は1956年に再建されたもので、桃山時代の独特な建築様式「生國魂造(いくたまづくり)」が継承されています。

画像:生国魂神社の拝殿 筆者撮影

若い女性が縁結びの祈願に訪れる鴫野神社

生国魂神社の境内には、本殿以外に皇大神宮・住吉神社・天満宮・城方向八幡宮・鞴神社・家造祖神社・浄瑠璃神社・鴫野神社・源九郎稲荷神社・稲荷神社・精鎮社など、多くの摂末社が祀られています。

そんな中でも縁結びにご利益があるとして、若い女性たちが多数参拝している神社として鴫野神社が有名です。

画像:鴫野神社の鳥居とお社 筆者撮影

鴫野神社は、もとは大坂城の弁天島に祀られていた弁財天社が、生国魂神社の末社として遷座されたものです。

祭神は市寸島比売神(いちきしまひめのかみ)と大宮売神(おおみやのめのかみ)です。

豊臣秀吉の側室であり、豊臣秀頼の生母であった淀殿は、鴫野神社を厚く信仰されており、後に淀殿自身も淀姫神として鴫野神社に祀られるようになりました。

画像 : 『伝淀殿画像』 public domain

淀殿は浅井長政の長女・茶々で、秀吉の側室となったのちに子を宿し、出産のため一時的に淀の城に移りました。

この経緯から「淀殿」と呼ばれるようになりましたが、実際に淀の城に住んだのは1年ほどで、その後は大坂城に戻って生活していたため、鴫野神社への参拝を続けられたと考えられます。

こうした由緒から、鴫野神社は女性の守護神と仰がれ、縁結びや縁切りのご利益があると信じられてきました。

小さなお社ですが、筆者が訪れた平日の昼下がりでも、写真撮影等をしている1時間足らずの間に、複数組の女性が鴫野神社にお参りされているのを見かけました。

拝所には「心に錠前」と書かれた提灯が掲げられ、絵馬にも同じ意匠が描かれています。

さらに境内近くには「崖っぷち占い」と呼ばれる占い所もあり、土日祝日限定ながら「よく当たる」と評判です。

占いで人生相談し、良縁を願い鴫野神社に参拝して絵馬を奉納する若い女性が多いようです。

画像:鴫野神社の拝所 筆者撮影

「上方落語の始祖」と言われる米澤彦八の記念碑と彦八まつり

生国魂神社の境内には、上方落語の始祖といわれる米澤彦八の記念碑が建てられています。

これは江戸時代、彦八が境内で辻噺を披露して多くの人々を楽しませた縁によるものです。

画像:米澤彦八の記念碑 筆者撮影

この記念碑が建立されたのは比較的新しく、1990年です。

そして翌1991年からは、毎年9月の第一土曜日と日曜日に、上方落語協会の主催による「彦八まつり」が開催されるようになりました。

当初は認知度が低く、訪れる人も少なかったものの、関西ローカルテレビの情報番組で落語家が出演してPRを行ったこともあり、年々盛大になっていきました。

現在では上方落語の中堅や若手の落語家が境内に多数の模擬店を出し、落語会やバンド演奏など多彩な企画で参拝者を楽しませています。

また、落語家が気軽にサインに応じるなど、上方落語家と庶民が交流する場として定着しています。

おわりに

筆者はこれまで生国魂神社を何度か訪れ、今回紹介した彦八まつりにも三度ほど足を運んだことがあります。

しかし、境内に淀殿ゆかりの神社があり、縁結びの神として若い女性の参拝が多い鴫野神社があることは知らず、訪れたこともありませんでした。

今回、錠前の意匠が印象的で心に残る提灯を目にし、戦国末期の動乱に翻弄されながらも強く生きた淀殿(茶々)の姿に重なるような印象を受けました。

生国魂神社は大阪メトロ谷町線・千日前線「谷町九丁目」駅のすぐ近くという便利な場所にあります。

歴史や信仰の息づかいを感じられる神社ですので、機会があれば一度足を運んでみるのもおすすめです。

名称 : 生国魂神社(いくくにたまじんじゃ)
通称 : いくたまさん
所在地 : 大阪府大阪市天王寺区生玉町13-9
アクセス : 大阪メトロ谷町線・千日前線「谷町九丁目駅」徒歩約4分
Osaka Metro堺筋線・千日前線「日本橋駅」、近鉄「近鉄日本橋駅」徒歩約7分
近鉄大阪線・奈良線「大阪上本町駅」徒歩約10分
御祭神 : 生島大神・足島大神(相殿:大物主大神)
摂末社 : 皇大神宮、住吉神社、天満宮、城方向八幡宮、鴫野神社、稲荷神社、精鎮社ほか
主な祭礼 : 生國魂祭(7月11日・12日)、若菜卯杖祭(1月7日)、走馬神事(5月5日)、大阪薪能(8月11日・12日)、秋祭(10月15日)
参拝時間 : 境内自由(社務所受付は9:00〜17:00頃)
行宮 : 大阪市中央区本町橋
備考 : 神仏霊場巡拝の道 第48番札所

参考 :『生國魂神社 公式サイト』『『延喜式』巻九』他
文:撮影 / 草の実堂編集部

草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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