京都といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「舞妓」の姿ではないでしょうか。
色鮮やかな着物に、だらりと垂れた帯、白塗りのうなじ姿。
その姿は、今や京都の象徴といっても過言ではありません。
でも、舞妓さんが生まれた背景や、彼女たちを育んできた「五花街(ごかがい)」と呼ばれる世界について、どれほどの人が知っているでしょうか。
祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東。
それぞれが異なる歴史と気風を持つ、京都に残る五つの花街です。
ここは、千年の都・京都が育んできた文化の拠点でもありました。
舞妓さんは、なぜ「京都の華」と称されてきたのか。
今回は五花街の歴史とともに、その理由をひも解いていきます。
舞妓・芸妓を通じて日本の伝統文化を体感

画像:舞を舞う舞妓(撮影:高野晃彰)
「舞を舞う妓」と書いて舞妓(まいこ)。
その舞妓さんが成長して卒業すると、「芸を披露する妓」、つまり芸妓(げいこ)と呼ばれるようになります。
実はこの舞妓・芸妓のルーツ、かなり古くて、平安時代の「白拍子(しらびょうし)」までさかのぼるという説もあるのです。
今でいえば、白拍子はアイドルみたいな存在。
彼女たちは、歌って踊る文字通りの芸能人ですから、当時の権力者たちが夢中になるのも無理はありません。
平清盛が寵愛した 祇王(ぎおう) と 仏御前(ほとけごぜん)、後鳥羽上皇の心を奪った 亀菊(かめぎく)、源義経の愛妾で悲劇のヒロイン 静御前(しずかごぜん) も、みな白拍子です。

画像:白拍子姿の静御前(葛飾北斎) public domain
少し脱線したので本題に戻りましょう。
舞妓さん・芸妓さんにとって、いちばん大切な芸はやはり舞踊です。
毎年春になると、
「都をどり」(祇園甲部)
「京おどり」(宮川町)
「北野をどり」(上七軒)
「鴨川をどり」(先斗町)
など、五花街それぞれで総踊りが開催されます。
これらは華やかな公演であると同時に、舞妓や芸妓たちが日頃の厳しい稽古の成果を披露する発表会のような場でもあるのです。

画像:春の舞踊公演「都をどり」(祇園甲部歌舞会)
さて、舞妓を卒業した芸妓さんは、実は二つの道に分かれます。
それは舞を踊る「立て方(たてかた)」と、三味線・鼓・笛などを担当する「地方(じかた)」です。
「立て方」は舞妓時代から続けてきた舞を、さらに磨き上げていく道。
一方の「地方」は、一人前になるまでに10年以上かかるともいわれるほど、厳しい修行が必要なんです。
また、一部の芸妓さんには長いキャリアを積んだ末にお茶屋の女将になる人もいます。
ただし、ここからがまた大変。
女将として店を切り盛りしながら、一流の客を迎えるために、芸事の稽古はもちろん、世の中のことも一生勉強し続けなければならないのです。

画像:京都宮川町の芸妓 public domain
花街で遊ぶというのは、こうした女性たちが築いてきた文化と触れ合うことでもあるのです。
とはいえ、もし何かのきっかけで実際にお座敷に呼ばれても、そんなに身構える必要はありません。
彼女たちは接客のプロ。
場の空気をやわらかくし、誰でも楽しく過ごせるようにしてくれます。
だからこそ遊ぶ側も、ちょっとした話題や知識を用意して、舞妓さんや芸妓さんを楽しませたいところ。
それができてこそ、“粋(すい)な客”と認められる、というわけです。
お座敷遊びは究極の大人の社交場

画像:大正時代のお座敷遊び public domain
では、舞妓さんや芸妓さんを招いて行われる「お座敷遊び」とは、いったいどんなものなのでしょうか。
ここからはほんのさわりですが、気軽に紹介していきましょう。
その前に、よくある勘違いについて少し触れておきたいと思います。
筆者が「たまに京都でお座敷遊びをしている」と話すと、興味津々で「で、舞妓さんっていくらで買えるの?」と聞いてくる人がいるのです。
つまり舞妓さんや芸妓さんを、風俗嬢や娼婦と勘違いしているわけですね。
しかし舞妓・芸妓はあくまで“芸”を売る女性たち。
色気ではなく、長年磨き上げた舞や唄、三味線などの芸でお座敷を彩る存在なのです。

画像:お座敷で舞を披露する舞妓(撮影:高野晃彰)
お座敷遊びの基本は、まず「舞」から始まります。
舞を披露する「立ち方」の舞妓・芸妓さんと、三味線や唄、太鼓、鼓などを奏でる「地方(じかた)」の芸妓さんが、息の合った見事な芸を見せてくれるのです。
そして舞がひと通り終わると、いよいよ伝統的な「お座敷遊び」の時間。
お猪口や割り箸、屏風、座布団といったお座敷にあるものを使い、「金毘羅ふねふね」や「べろべろの神様」、「とらとら」などの遊びを、「地方」の芸妓さんのリードで、舞妓さんとお客さんが一緒になって楽しみます。
このゲームに負けると、お酒を飲むことに。
舞妓や芸妓さんの「おにーさんはお強い!いい男どすえ〜」なんて声に乗せられて、場はどんどん盛り上がっていきます。

画像:お座敷遊びの虎拳 public domain
こうしたお座敷遊びは、いかにも“男の世界”というイメージがあるかもしれませんが、実は女性でも十分楽しめる場なのです。
それに、夫がお茶屋で遊んでいても、奥さんが心配しなくていいというのも特徴のひとつ。
というのも、そこには女将さんやおねえさんたちの目があるからで、旦那衆といえど、決して羽目を外しすぎることはできません。
そのように考えると花街でのお座敷遊びは、ちょっと大げさかも知れませんが、究極の大人の社交場だと言えるのではないでしょうか。
※参考文献
京あゆみ研究会(高野晃彰)著『京都ぶらり歴史探訪ガイド 今昔ウォーキング』メイツユニバーサルコンテンツ
文:撮影/高野晃彰 校正/草の実堂編集部
























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