室町時代

【金閣寺は国宝ではない?!】国宝の意外なトリビア5選

2017年は国宝という制度が始まって120年という節目の年である。その数、実に1,100点以上。

2014年に東京国立博物館で開催された「日本国宝展」では47日間の会期中に38万人が訪れており、同年の美術展入場者数ランキングでは3位となった。

国宝以外でも素晴らしい作品は多いが、やはり「国宝」のブランドは特別だ。

しかし、「国宝」そのものについては知らないことも多い。

今回は国宝の意外な一面を調べてみた。

[ikemenres]

国宝はどうやって決まる?

金閣寺

国宝はいきなり指定されることはない。

重要文化財から格上げされるのだ。

重要文化財の中でも「特に文化的・美術的・学術的に価値が高く、世界的にも価値のある作品」と認められたものが国宝となる。指定にあたっては、文化財保護法が適用されるのだが、この法律が施行されたのは1950年のことであった。それ以前の法律では、「国宝」と「重要文化財」の区別がなく、上記の条件に該当するものはすべて「国宝」となっている。では、文化財保護法が施行される以前の国宝はどうなったのかというと、「旧国宝」と呼ばれ、一旦すべてが重要文化財になった。その中から改めて文化財保護法の指針に則り、「国宝」に指定されたのだ。

しかし、「新国宝」と「旧国宝」は同一の基準で選ばれたものではないため、どちらが格上かというような決まりはない。

ちなみにジャンル別では、工芸品などが253件、書跡(しょせき)・典籍(てんせき)といった文字や書物などが225件、建築物が223件と続き、最も少ないのは歴史史料の3件である(2017年現在)。

海外の作品が国宝に?!


※曜変天目

国宝に指定されている作品のうち約1割が海外由来のものだ。

特に多いのは中国や朝鮮半島で造られて日本に伝わったものである。

真贋問題で世間を騒がせた「曜変天目(ようへんてんもく)」も中国・南宋時代に造られた黒釉(こくゆう/黒いうわぐすりのこと)の茶碗である。そもそも「天目」という名称は中国の天目山近辺で使われていたことに由来する。

天目茶碗は曜変天目が最高峰だが、その下に「油滴天目(ゆてきてんもく)」があり、こちらも1点が国宝となっている。曜変天目が玉虫色、瑠璃色などの斑紋が特徴的なのに対し、油滴天目は全体的に油を散らしたような銀色の斑紋が特徴だ。日本に現存する曜変天目3点が国宝となっており、油滴天目も8点(諸説あり)中、1点が国宝である。

その他にも、江戸時代に中国から伝わった青磁や、空海が唐から持ち帰ったといわれる「金銅錫丈頭」などが存在している。

国宝は売買できる!


※犬山城

国宝や重要文化財は「国の宝」だから、売買など出来ないと思いきや、条件付なら可能である。

そもそも指定するのは国だが、所蔵先は寺や美術館などで国が管理しているわけではない。勿論、国宝や重要文化財を所有している場合は、所有者に管理の義務が発生するが、なかには個人所有の国宝もあるくらいだ。京都にある香や書画用品の専門店「鳩居堂(きゅうきょどう)」では、「伝藤原成行筆仮名消息(古文書・重要文化財)」を所有しているし、愛知県の犬山城も2004年までは個人所有であった。

いずれにせよ海外への輸出は禁止だが、国内での売買は可能なのだ。

その場合、文化庁長官に対し、売却(譲渡)先や予定価格などを提出しなければならない。ただ、この際に国に買い取り権が発生する。届出があった場合、文化庁は30日以内に買い取るかどうかを決め、国が買い取らない場合は、第三者に売却することが可能となる。

金閣寺 は国宝ではなかった!


※金閣

古都・京都の名所として外せないのが「金閣寺」と「銀閣寺」だ。

鹿苑寺(ろくおんじ)にある金閣は、3層の楼閣建築で内外に金箔を貼った豪華絢爛な建物である。1994年には、「古都京都の文化財」を構成する建築物としてユネスコの世界文化遺産にも登録されている。

また、銀閣は慈照寺(じしょうじ)内にある楼閣建築の観音堂だ。外壁には黒漆が塗られ、落ち着いた佇まいを見せている。銀閣も金閣と同様、1994年に世界文化遺産に登録された。また、国宝にも指定されている。

が、金閣は国宝ではない

金閣は1950年、放火により全焼し、国宝指定から外れてしまったからだ。現在の金閣は、1955年に明治期の解体修理記録を元に再建されたものであるため、国宝には指定されていない。

触れる国宝とは?


※鎌倉の大仏

鎌倉のシンボルともいえる鎌倉大仏は、高徳院(こうとくいん)の本尊である「阿弥陀如来像」である。この寺については開山の時期や大仏建立の経緯などについて不明な点が多い。もともとは木製の大仏だったものを、1252年から銅造大仏に造りかえられたといわれており、かつては大仏殿が存在したことも現代の調査で判明している。大仏殿は大風、地震、津波により、何度か倒壊した挙句に再建されることがなくなった。

だが、大仏には大きなダメージはなかったため、関東大震災も乗り越えて現在も我々はその姿を目にすることができる。内部は空洞となっており、拝観料を別途20円納めることで胎内に入ることもでき、内側から大仏に触れることも可能だ。

もうお気付きだろうが、この鎌倉大仏こそ「触れる国宝」である。

ただし、損傷を与えた場合は処罰の対象となるので気をつけて欲しい。

最後に

国宝は、作品そのものを見るだけでも十分に楽しめるが、こうした制度そのものについて知るのもなかなか面白い。

2017年には7件が新たに国宝に指定され、そのうちの「大日如来坐像」は2017年秋に京都国立博物館で開催される国宝展で展示されることになっている。

興味のある方はぜひ自分の目で見て欲しい。

京都国立博物館 → 公式HP

関連記事:京都
意外に残念?!京都の名所5選

 

gunny

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コメント

    • roi
    • 2022年 9月 29日 11:15am

    むっちゃ分かりやすい

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