日本神話の中でも指折りの女傑として登場する、 神功皇后 (じんぐうこうごう)
そんな神功皇后は、武神・聖母神として全国の神社で信仰されているが、その中でもひときわ有名なのが、大阪府にある住吉大社である。
この記事では、神功皇后と住吉大社の深い関係について解説する。
神功皇后とは
神功皇后(じんぐうこうごう)とは、古代に活躍した女性で、仲哀天皇(ちゅうあいてんのう:14代天皇)の皇后であったとされる人物のことである。
『古事記』の中にも登場し、オキナガタラシヒメノミコトという名前で記されているが、この記事では神功皇后と統一しておく。
息子は応神天皇(15代)と言い、彼は“八幡神”として多くの神社で祀られている。
神功皇后は聖母神でありながら、武神としてもあがめられている。
その理由は、生前の彼女の偉大な功績に由来する。
ある時、夫・仲哀天皇が九州の熊襲族を討伐しようとした際、神功皇后は突然神懸かりの状態となり、神託を受けた。
その内容とは「西方に金銀財宝の豊かな国(新羅)があるので、そこを服属させろ」というものであったが、仲哀天皇はこの信託を無視し、予定通り熊襲の討伐へ向かった。
ところが、仲哀天皇は神の怒りに触れ、急死してしまったのである。
神の言葉を無視したために夫が死んでしまったことに心を痛め、神功皇后は妊娠中でありながら、再度神懸かりになり神託を受ける。
すると、「この神託は天照大神からのものである」とわかったので、彼女は自ら指揮を執り、玄界灘を越えて新羅国の平定を成し遂げた。
その帰路、神功皇后は船上で産気づいたが、出産を遅らせるというまじないの鎮懐石を2つ腰に巻き付けて出産を遅らせ、筑紫(福岡県周辺)で無事に出産を終えたという。
まじないを使うことや神託を受けることから、神功皇后は卑弥呼のようなシャーマン的要素を強調されるが、出産をコントロールし、息子が生まれてからは摂政として息子を助けた偉大な聖母神であり、それ以上に、男性以上にたくましい武神として各地の神社に祀られているのである。
住吉大社とは
ここからは、神功皇后が祀られている神社のひとつである、大阪府大阪市住吉区にある住吉大社について紹介しようと思う。
住吉大社とは、全国に2000以上ある住吉神社の総本宮である。
本殿の4棟は国宝に指定されており、海の神である三柱の神と神功皇后を祭神としている。
住吉大社は航海守護の神として古代から信仰され、平安時代からは朝廷・貴族から和歌の神としても信仰された。
また、江戸時代からは多くの庶民から信仰を受け、現在に至っている。
また、住吉大社を象徴する有名な反り橋である、『太鼓橋』は、豊臣秀吉の側室であった淀君が奉納されたものであると言われており、大阪の歴史を語る上でも外せない名スポットなのである。
ちなみに、神功皇后と共に祀られている三柱の神は“住吉三神”と言われており、それぞれ底筒(ソコツツ)之男命、中筒(ナカツツ)之男命、上筒(ウワツツ)之男命と呼ばれており、黄泉の国から戻ったイザナギノミコトが穢れを落とすため、禊を行ったときに生まれたと言われている。
航海の安全や大漁を守り、それが転じて商売繁盛や家運隆盛を約束されると言われている。
神功皇后と住吉大社の関係とは
それでは、神功皇后と住吉大社の関係というのは、一体どのようなものなのだろうか?
実は、夫・仲哀天皇の死後、神功皇后が再び神懸かりになったときに現れたのが、住吉三神なのである。
新羅国への遠征の際、住吉三神は神功皇后一行の航路を守り、一行を無事に新羅国へ渡し、また帰り道もきちんと守護したと言われている。
神功皇后はそのことに感謝を示し、摂津国(現在の大阪府)へ住吉三神をお連れしたのだと言う。
摂津国にいらした住吉三神が「ここはなんとも住みの良いところである」と言ったことから、地名がすみのへ=住之江、となったと言われている(住吉大社がある地域は、現在は住吉区である)。
神功皇后は住吉三神の鎮齋に際し、その警護のために優秀な弓使いである土師弓部(はしのゆみべ)16人を神社へ置いたと言う。
その故事にちなみ、住吉大社では現在でも早春に『お弓始め』と言われる御結鎮神事が行われている。
最後に
この記事では、神功皇后と住吉大社の関係について調べてみた。
神功皇后は日本で最初の摂政であると言われており、その強さゆえにまさしく日本神話の中でも最強のヒロインと言っていいだろう。
妊娠中に夫が急死してしまったら、悲しいやら不安やらで心が折れてしまいそうであるが、神功皇后は夫の不在などに負ける女性ではなく、ただひたすらに自分の使命を全うし続けたのである。
まさに、神として奉られるにふさわしい存在だろう。住吉三神も、そんな彼女の強さを信じ、神功皇后を守護したに違いない。
大阪へ旅行に行かれる際にはぜひ一度、住吉大社に立ち寄ってみていただければと思う。
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