漬物とは
塩・酢・味噌・麹などに漬け込んだ貯蔵食品の総称を言います。
特に野菜を塩や糠みそなどに漬けた食品を指します。香の物とも呼ばれます。
最古の漬物
BC3世紀の中国最古の辞書「爾雅(じが)」など中国の古書には、塩蔵品を示す言葉が記載されています。
製造法について記載され始めたのは6世紀中ごろに出た「斉民要術」で、小松菜・カブ・高菜などの塩漬け方法や「ねり梅」のような動植物を合わせたあえ物なども記載されています。「発酵漬物」と「調味漬物」を分けて記載するなど興味深い内容でした。
日本における漬物の歴史
縄文時代
海水を利用した藻塩が作られていました。
この塩を使って野菜だけではなく木の実、動物の肉、魚などを土器に漬け込んで保存食としていました。
奈良時代から平安時代
8世紀の天平年間の平城宮から発掘された木簡に、うりや青菜などの塩漬けのことが墨文字で記載されています。
塩漬けしたナス・ウリ・モモなどの野菜や果実は、寺院の僧侶以下舎人に支給された貴重品とされています。
醍醐天皇の時代に編纂された「延喜式」には漬け物の製造方法として、塩漬け、醤漬け、糠漬け、楡木(にらぎ)、須々保利、搗(つき)、えつづみ の7種類が詳しく記載されています。
春にはわらび・ナス・フキ・ウリを塩漬けに、秋にはナス・ショウガ・カキ・ナシなどを塩・酒粕・もろみ・味噌などに漬けたとも書かれていました。
鎌倉から室町時代
茶の湯や香道が盛んになると、味噌漬けにした漬物が味覚や嗅覚を一新する効果があるとされ、盛んに賞味されるようになります。
室町時代に「香の物」という言葉が初めて使用されるようになりました。
江戸時代
高塩の漬物を塩抜き・脱塩して食べやすくする技法は江戸時代に確立されました。
ぬか漬けも登場します。
ぬか漬けの登場とともに、何度も使用されるぬか床が一般家庭で重宝されるようになります。
またこの時代、野菜の種類も豊富になり、全国から多くの商人が集まる江戸では調味や製造方法も色々工夫され始めます。当座漬け・一夜漬けなども現れ、「香の物屋」といわれる商売も誕生しました。
江戸中期、江戸大伝馬町では10月19日(恵比寿講前夜)に漬物市が開かれ、大根のべったら漬けが売られました。
以後今日までその伝統は続き、日本橋小伝馬町の戎神社では「べったら市」が歳時記のひとつとなっています。
江戸時代の書物によると、大坂夏の陣で漢方医の宗仙が献上した奈良漬けを気に入った徳川家康は、宗仙を御用商人としたとあります。
また、書物「物類称呼」では、「たくあん漬けの名は、武州品川東海寺開山の澤庵禅師が初めて製造したのでたくあん漬けとする」とあります。
明治時代以降
都市近郊の農家ではたくあん漬けや奈良漬などが農家の大事な副業となります。
大正・昭和にかけて漬物製造業として発展しました。
近年、健康志向が高まり、低塩・減塩の漬物やキムチなどの乳酸菌の効果を期待する漬物に消費者の関心がもたれています。
日本唯一の漬物神社
日本で唯一、漬物の神様を祀る神社が萱津神社(かやづじんじゃ)です。
境内には漬け物を収める「香の物殿」があります。
毎年8月21日の「香の物祭」には多くの漬物業者などが参詣します。
境内の漬物樽石を3回なでると、漬物上手になれるそうです。
代表的な日本の漬物
漬物の種類と主な漬物
・ぬか漬け;たくあん漬けなど
・粕漬け;わさび漬け、守口漬け、奈良漬
・塩漬け;梅干し、白菜漬け、一夜漬け、しば漬け
・麹漬け;三五八漬け、べったら漬け
・酢漬け;らっきょう、ピクルス
・辛子漬け;きゅうり・ナス・れんこんなどの辛子漬け
・味噌漬け;昆布・ごぼうなどの味噌漬け
・醤油漬け;やたら漬け、福神漬け
日本各地のお漬物
北海道
松前漬け
東北地方
ねぶた漬け(青森県)、金婚漬け(岩手県)、シソ巻き(宮城県)、いぶりがっこ(秋田県)
いかにんじん(福島県)、わらびの一本漬け(山形県)関東地方
梅干し(茨城県)、たまり漬け(栃木県)、野菜の味噌漬け(群馬県)、しゃくしな漬け(埼玉県)、鉄砲漬け(千葉県)、べったら漬け(東京都)、小田原梅干し(神奈川県)
中部地方
十全なす漬け(新潟県)、さばのかぶら寿司(富山県)、かぶらずし(石川県)、
小鯛の笹漬け(福井県)、甲州小梅漬け(山梨県)、野沢菜漬け(長野県)、
赤かぶ漬け(岐阜県)、わさび漬け(静岡県)、守口漬(愛知県)近畿地方
伊勢たくあん(三重県)、近江漬物(滋賀県)、千枚漬け(京都府)、
泉州水茄子の漬物(大阪府)、奈良漬(兵庫県)、奈良漬け(奈良県)、
紀州の梅干し(和歌山県)中国地方
砂丘らっきょう漬け(鳥取県)、木次の桜の塩漬け(島根県)、広島菜漬け(広島県)、
寒漬け(岡山県)四国地方
奈良漬(徳島県)、オリーブ新漬け(香川県)、緋のかぶ漬け(愛媛県)、生姜漬け(高知県)
九州地方
高菜漬け(福岡県)、寒干したくあん(長崎県)、青島うり漬(佐賀県)、
寒漬(熊本県)、吉四六漬(大分県)、壺漬け(鹿児島県)
青じそ千枚漬け(宮崎県)、パパイヤ漬け(沖縄県)
世界の漬物
中国の漬物
日本同様に漬物大国です。
・塩漬け:シェンーツァイ
・醤油漬け:ジャンツァイ
・甘酢漬け:タンツゥージーツァイ
・乳酸発酵漬け:シュアンツァイ
ダイコン・カブ・ニンジンなどを乳酸発酵させた四川の「泡菜(パオツァイ)」や、カラシナの根瘤部を一度干してから塩と香辛料で漬け込んだ「搾菜(ザーツァイ)」が有名
韓国の漬物
・乳酸発酵漬け:唐辛子・ニンニク・果物・アミ・イカ・小魚などの材料に野菜漬け込んで乳酸発酵させたキムチが特に有名
・味噌漬け:チャガチ
・高塩漬け:チャンヂ
・浅漬け:コッチョリ
東南アジアの漬物
・乳酸発酵漬け:ミャンマーの青いマンゴーの細切りの「レイチェ」や、もやしの「ペーピンパウチェ」、「ラッペ」
・塩漬け:ミャンマーのタケノコの「ミエチェ」タイの「パクドン」
東南アジアでは漬物をそのまま食べるよりも、炒め物の材料として使われることが多いです。
日本でも飛騨地方には、漬物を焼いて食べる「漬物ステーキ」があります。
ヨーロッパの漬物
乳酸発酵漬け:ピクルス、ザワークラウト
酢漬け・ワイン漬け:これもピクルスと呼びます
肉やチーズなど脂っこい料理と合わせるために、酸味が強い味わいが特徴です。
ビタミンCが多いことから冬の保存食として重宝されました。
漬物の健康効果
日本人が長年親しんできた漬物には、どんな健康効果があるのでしょうか?
多量に含まれる食物繊維
整腸作用、便秘の改善、血糖値の上昇を抑制します。
野菜に含まれるビタミンC
美肌、ストレス解消、免疫向上、活性酸素の抑制します
乳酸発酵による乳酸菌
腸内環境の改善
漬け物は元々保存食であるために、塩分濃度が高い食品です。
過剰に摂取するとむくみ、高血圧、脳卒中、胃がんなどのリスクが高まります。
摂取するときは食べ過ぎに気を付けて、減塩の商品を求めるなど生活習慣病にならないための配慮も必要です。
自宅で簡単、漬物レシピ
簡単べったら漬け
大根半本、酢25㏄、塩大さじ1、砂糖大さじ8、酒小さじ1
皮をむいて適当に容器に入る大きさに切って、すべての材料を入れたら、容器もしくわポリ袋に入れて冷蔵庫へ1~2日で食べられます。
野菜の塩麴漬け
きゅうり、赤かぶ、キャベツ、カブなど好みを野菜をカットしたら袋へ。
塩ひとつまみしてもみ、塩麴大さじ1を入れてさらにもむ。一晩寝かせば美味しく食べられます。
レンジで簡単ピクルス
酢120㏄、水60㏄、砂糖45g、塩10g、黒コショウ10粒、ローリエ2枚、唐辛子1本、生姜1片を耐熱容器に入れてレンジ500Wで3分加熱。
カットした野菜(きゅうり・大根・人参・玉ねぎ・セロリ・パプリカなど)をこの漬け汁に入れ再度5分加熱。
保存容器に汁ごと移し冷蔵庫へ。3時間ほどすると食べられるようになります。
今回、狭義の意味での塩辛い味付けの漬物について調べたものをご紹介しましたが、広義には果物などを砂糖やシロップに漬け込んで保存したものや、魚などをオイルに付ける広義の漬物もあります。
また次回調べて是非ご紹介したいと思います。
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