健康

【労働者の権利】教えてくれない? 傷病手当金の利用方法

過労、うつ病、怪我、インフルエンザ
社会を動かしている労働者は様々な健康問題に出会うことがある。

今年は新型コロナウイルス感染症もそこに加わった。

生きるために働いていても、それが困難になる日があるかもしれない。
今回はそんな労働者の権利である、傷病手当の活用方法についてご紹介したい。

傷病手当金の利用方法

傷病手当金とは?

傷病手当金とは、健康保険に加入している労働者(被保険者)が、業務外の病気や怪我によって働くことができなくなった時、特定の条件のもと支給される給付金である。

特定の条件とは以下の通りである。

・業務外の病気・怪我であり、美容整形の手術などを除く
・休んだ期間に給与の支払いがない
・働けなくなった日から数えて3日を経過した日~働けない期間に対して出る
・該当の病気・怪我に支給開始されてから1年6ヶ月までが給付期間の上限

傷病手当金の利用方法

また、支給額については以下のようになる。

・1日当たり、直近12ヶ月の標準報酬月額を平均した30分の1の額の、3分の2に相当する金額
・健康保険に加入していた期間が12ヶ月未満の場合は
①労働者(被保険者)の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
②労働者(被保険者)の属する保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額
のうち低い方を基本に計算される。
ちなみに、支給開始日が平成31年3月31日までの場合、標準報酬月額の平均値は28万円となる(全国健康保険協会)。

傷病手当金は、療養中の労働者、また、その家族の生活を支えるために用意された、助かる制度なのである。

申請上のハードルは決して高くない

支給開始になる条件は少し注意が必要だが、一旦支給が始まれば最大1年半ほどは治療に専念できるという制度だ。

普段月々払っていた保険料は、この時のためだったと言える。

全国健康保険協会への申請には、4枚組の申請書を記入し郵送するだけだ。あとは口座への振込と、支給額等の明細書が郵送で来る。

尚、この制度は「働けなかった」期間を申告し、審査が通った後に初めて振込がされるタイプのものになる。そのため、事前に「3ヶ月は療養が必要だと思うから下さい」ということは不可能だ。

傷病手当金の利用方法

ただ、あなたの病気なり怪我なりの治療を担当する医師はこれらの手続きには慣れている。

傷病手当金の申請書類を書いてほしいと依頼すれば、抜かりなく書いてくれるはずなので心配はいらない。

それよりは、”厳しい”職場が必要な休みを快くとらせてくれるか。同僚はあなたを責めず治療に専念させてくれるか。その方が心配かもしれない。

社会は教えてくれない?傷病手当金の利用法

さて、上記が傷病手当金の基本だが、実は更なる活用法がある。

それは「退職後も継続受給する」という方法だ。

条件は、「該当の健康保険に一年以上加入しており、資格喪失時(退職時)の時点で傷病手当金の支給を受けて、それを継続していること」だ。

この条件さえ押さえれば、職がなくなっても、雇用保険の失業給付より良い額で給付金を受けられる可能性があるのだ。

傷病手当金の利用方法

こういったことは、社会で向こうから教えてくれることは稀だ。

もし業務外の病気や怪我に見舞われ、それが長引きそうな場合には、早めにネットや図書館などで調べて知っている必要があるだろう。

本当に動けなくなって生活が「詰む」前に、正当な権利を活用してうまく立ち回りたい。

傷病手当金の注意点

このように、知ると心強い傷病手当だが、注意点もある。

それは、同じ病気・怪我が支給期限の1年6ヶ月を過ぎても続いたり、再発したりした場合には一切不支給になるという点だ。

そのため、例えばメンタル面の病気など、目に見えず、それでいてしつこく長引く・再発することが多い病気の場合には、いつ受給開始すべきか、しないべきかの判断が重要になってくるケースもあるだろう。

その場合は、診断名をうまく工夫してもらえないか主治医と相談する余地はあるだろう。

医師は専門家なので、我慢せずすぐに受給開始した方がいいとか、現時点ではそこまで長引く不調ではなさそうなので使わない方がいいとか、相談に乗ってくれる可能性はある。

受給するべきか、しないべきか、それが問題だ?

いずれにしても、どうするかを決めるのは被保険者自身の選択にゆだねられている。

「苦しいけれどズルをしているような気がするから休んで金はもらえない」
「もうちょっと悪化してから使わないと勿体ない」

と考える人もいるかもしれない。

だが、制度を実際に使った筆者から言わせて頂きたいことがある。

まず、傷病手当金受給は全くずるくない。そのために月々の保険料をかけてきた。病気もケガも、ならなくて済めばいいに決まっている。なってしまったのだから、必要かつ正当な援助を受けて治療に専念しよう、と言いたい。

遠慮して無理に頑張ると、一時的な傷病者にとどまらず本物の障害者になるかもしれない。
もしも不幸にしてそうなってしまったら、障害者手帳を申請して、ほんの少しでも生活の負担を軽減してほしい。

障害者手帳の記事リンク
https://kusanomido.com/study/life/health/39100/

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

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