言語の定義
言語の定義とは何か? 広辞苑にはこのようにある。
人間が音声や文字を用いて思想、感情、意志等々を伝達するために用いる記号体系。及びそれを用いる行為。
音声や文字によって、人の意志、思想、感情などの情報を表現したり、伝達する、あるいは他者のそれを受け入れ、理解するための約束・規則。
「日本大百科事典」では、「言語」という語は多義であると解説されている。大脳の言語中枢に蓄えられた「語彙と文法規則の体系」を指すこともある。
一方では、抽象的に「すべての人間が共有する言語能力」を指すこともあり、「個々の個別言語」を指すこともあると解説されている。
言語があることで可能になったこと
言語は人間が用いる意志伝達手段であり、社会集団内で形成習得され、意志を相互に伝達することや抽象的な思考を可能にし、結果として人間の社会的活動や文化的活動を支えている。
地球上には、音声を使ってコミュニケーションをとる動物も確かに存在している。だがそれは本能的に生きるために必要なのであって、そのほかに意味はない。
人類について言えば、言語は必要不可欠であることは明白であろう。言語がなければ文明は発展しなかったに違いない。
途上国とされる文明では言語で表せる物が少なく、比較的単純な言葉が使用されている。
しかし宗教を中心としている文化では、まず「その教えを、理解する能力」という観点から言語は必ず必要とされる。そしてその教えを広めたり、残したりするためにも必要なのだ。
奴隷など労働主体で知識を必要としない人たちには、知識を故意に与えず、管理しやすいように強制したという文化もあるようだ。
つまり「言語=知識」ということである。
言語があることによってコミュニケーションが生まれ、そこから得た知識、価値観を人類は共有できる。それによって文化や文明が形成される。
言語・文字があることによって後代へ歴史を伝えることさえできる。そうして人類の文明は進歩し続けてきた。
消滅危機にある言語
現実、世界中には約7000の言語がある。
しかし、その多くは使用人口が極めて少ないという理由から消滅の危機にさらされている。
言語は、該当する言語を母語として使う人間がいなくなった時点で死を迎える。それぞれの言語には唯一無二の歴史的背景や文化的価値があり、言語が滅びると、これらも同時に失われてしまう恐れがある。
多くの場合、話者数の少ない言語は話者数が圧倒的に多い主流言語に取って代わられる。なぜなら人は就業機会をつかむために主流言語を使うようになるからだ。驚くべきことに21世紀の終わりには90%の言語が消滅すると予測する研究者もいるほどだ。
UNESCOの絶滅危機言語の中でも、極めて深刻とされたのがアイヌ語だ。
アイヌ民族は日本とロシアにまたがる北方先住民族で、以前は北海道だけでなく、本州東部やロシアの南部にも居住していた。
アイヌ語は系統が不明で、しかも構文パターンの独自性が強い言語であり、2007年の推定では約1万5000人のアイヌの中で、アイヌ語を流暢に話せる母語話者は10人のみであった。
流暢に話せない場合でも、短い文での会話、あるいは単語なら知っているといった人は少なくない。
その他にも最も深刻なものの一例に、アヤパネコ語があげられる。
アヤパネコ語は、ヨーロッパから入植する以前よりメキシコの広域で使われていた言語である。スペイン語教育の強化や集落の過疎化により使用人口が減少した。
アヤパネコ語話者の最後の二人が仲が悪く、話される機会がないということで注目されている。
民族紛争や戦争が言語の衰退を加速してしまう例は少なくない。
今できること
言語とは前述したように、人と文化に根ざしたものである。だからこそ、消滅は防ぐべきである。
多くの言語が絶滅の危機に瀕しており、絶滅が進行している。
コミュニケーション手段でありつつ、文化と密接につながった人間にとっての財産である言語は、早急な保存・記録が急がれている。
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