神や自然に対する感謝の意を表現したアメリカのハワイ州に伝わる「フラ(Hula)」。日本では、ハワイの伝統的な民族舞踊「フラダンス」と呼ばれることが一般的で、初級者から上級者まで幅広い難易度に合わせた「フラダンス」スクールも人気だ。
ゆっくりと流れるリズムに合わせて踊る「フラダンス」は、優しくしなやかに見えるため、そこまでハードなダンスではないと思われがちだが、演技中の高い精神力と、スムーズな体重移動が必要とされる場面が多いことから、初心者でも1時間に消費するカロリーは200kcal前後といわれている。およそご飯一杯分のカロリーに相当する数値である。
そんな想像よりも遥かに多くの体力を消耗する「フラダンス」の効果は、いつしか最適なダイエット法と謳われるようになり、「フラダンス」をダイエットの一環として捉える人々が急増した。
有酸素運動である「フラダンス」が与える身体の変化とは?
日本で親しまれている「フラダンス」は、柔らかいウクレレの音色で奏でる音楽に合わせて踊る『アウアナ(Hula Auana)』を指す。
古代からハワイに伝わる、歌いながら踊る宗教的要素が強い『カヒコ(Hula Kahiko)』とは異なり、『フラハンドモーション』と呼ばれるハワイの風、波、植物全てを片手や両手で表現する手話のような振り付けが特徴的なダンスだ。
上半身が倒れないように背筋を一直線に伸ばしたまま、膝を軽く曲げた体勢を維持し続ける「フラダンス」には、体幹を鍛え、代謝の巡りを活発化させる効果がある。
代謝の巡りが良くなると、人間の身体は溜まった老廃物が定期的に排出される体質に変化していくため、太りにくい引き締まった健康体質を維持することができる。
上半身をしっかりと固定しながら腰回りの筋肉を動かす『カオ(Ka’o)』と呼ばれる振り付けも、体幹を鍛えられると同時に腸内環境を整えてくれるメリットがある。腰で八の字を描くような振り付けの『カオ』を踊ることで、自然と腸が収縮と膨張を繰り返し、便秘解消を促してくれるからだ。
これは、体内に溜まった老廃物を排出する『腸もみ』の原理と同じだ。
「フラダンス」を始めれば体重の減量に成功できるという認識よりも、普段は使用しない全身の筋肉を動かす習慣を「フラダンス」を通して身に付けることで、身体の内面から健康改善を図ることができるメリットがあると考えた方が正しい。
幸せホルモン『セロトニン』を伸び起こす「フラダンス」の威力
膝を軽く曲げた「フラダンス」の基本姿勢は、ホルモンバランスを活性化させると共に、幸せホルモンといわれる『セロトニン』の分泌に大きな影響を与え、メンタルの不調を防ぐ役割も果たす。
この『セロトニン』が脳に分泌された状態が続くと、私たち人間はストレスを感じにくくなり、心の余裕を保つことができるため、寝不足や月経周期といったホルモンバランスの乱れが原因で、メンタルの起伏がみられる場合にも、日光浴や有酸素運動を通して『セロトニン』を取り入れる習慣を身に付けることが推奨されている。
また、「フラダンス」の楽曲に使用されるハワイアン・ミュージックも、心身共に溜まった疲れを癒していくれるリラックス効果とストレス解消に適していることから、「フラダンス」は、内面的な健康も保障されたダンスといえる。
明るい笑顔を絶やさず「フラダンス」を踊る人々の姿は、内面から溢れる健康と、『セロトニン』の力からくる幸せホルモンの表れそのものだ。
「フラダンス」が語るストーリーは人間の想像力を豊かにする
ダンスを通して一つの物語を語りかける特性がある「フラダンス」には、人間の認知機能を高める新たな治療法への期待も寄せられている。
その大きな理由としては、左右に手や腕を揺らすことで『波の流れ』を伝え、手のひらを丸めることで『花』を表現し、両手を高く斜めにかざすことで『山の壮大さ』を物語るといった「フラダンス」最大の魅力でもある『ハンドモーション』の振り付けの存在が挙げられる。
振り付けを覚える側も同じように、手の動作と表現する対象の自然、人、心情を頭の中で照らし合わせながら理解していくため、人間の想像力を掻き立てる原理が多く詰まっている『ハンドモーション』を見たり実践することで、脳の活性化を促進させることに繋がるのだ。
健康面でのメリットを生かせるダンスとして長年、注目を浴び続けている「フラダンス」は、思いやり(Akahai)、調和(Lkahi)、喜びや心地良さ(Olu’olu)、素直や謙虚な心(Ha’a Ha’a)、忍耐力(Ahonui)から成るハワイ独自の精神文化『アロハ(ALOHA)の精神』のように、誰もが癒され、楽しみながら心身の健康を取り戻せる豊かな時間を過ごせる空間として愛され続けていくだろう。
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