調べてみた

【神道】けがれた心身をリフレッシュ!禊(みそぎ)って何?具体的なやり方を紹介

「アイツはまだ禊(みそぎ)が済んでいない」

何か不祥事をやらかした著名人が暫く姿を消して、再びひょっこり姿を現したときなどに聞かれるこんなセリフ。

禊とは神道の観念で、心身についてしまった罪やケガレをとりはらう儀式すなわち「身削ぎ」です。

清らかな心身を保つのは神様に奉仕する上で最も大切ですから、禊は神道において最も重視されて来ました。

イメージ

著名人だと謝罪会見がお約束ですが、神道においてはどのような儀式が行われるのでしょうか。

今回はテキストを参考に、どのような禊が行われているのか紹介したいと思います。

禊を行う心構え

一、まずは精神を鎮めて充分な準備運動(特に指定なし。ストレッチ等)を行いましょう。

一、続いて「いざ罪穢(ざいえ。罪と穢れ)の一切ことごとく禊ぎ祓おう」と一大勇猛心を振い起こします。

一、禊は心を込めて丁寧に行い、大ざっぱにせぬよう気をつけて下さい。

一、何度かやると惰性になりがちですが、謹みを忘れず行いましょう。

※テキストより要約。

準備運動や「一大勇猛心(原文ママ)」……いったいこれから何をするのかと大袈裟な気がするかも知れませんが、禊とは得てしてそういうもの。生半可にやったところで我が身の罪穢は削がれないようです。

さぁ、心構えが整ったところで、いよいよ禊の本編に入りましょう(※以下、引用部分を除きテキストの要約)。ここからは、ひと項目ずつ解説を入れていきます。

いざ実践!禊の方法

(1)裸になって天鳥船行事を行います。

天鳥船行事(あめのとりふねぎょうじ)とは、合気道などで準備運動に用いられているいわゆる船漕ぎ運動です。

いざ!(イメージ)

(2)禊場に蹲踞(そんきょ)して二拍手を打ち、祓詞を奏上しましょう。

祓詞(はらえことば)には色々ありますが、ここは天津祝詞(あまつのりと)で大丈夫です。

天津祝詞

高天原(たかまのはら)に神留(かむづま)り坐(ま)す皇睦神漏岐神漏美(すめらがむつ・かむろぎ・かむろぎ)の命(みこと)以ちて皇御祖神伊邪那岐命(すめみおや・いざなぎのみこと)、筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あはぎはら)に禊祓へ給ひし時に生(なり)坐せる祓戸(はらへど)の大神等(おほがみたち)、諸々の禍事(まがごと)罪穢を祓へ賜へ清め賜へと申す事の由(よし)を、天津神国津神(あまつかみ・くにつかみ)八百万(やおよろず)の神等と共に、天斑駒(あめのふちこま)の耳振り立てゝ聞(きこ)し食(め)せと恐(かしこ)み恐みも白(まを)す。

※意訳:天高くいらっしゃいます皇室と親しき神々より使命を帯びた皇室の祖先神・伊邪那岐命が、かつて心身の罪穢を禊され、様々な神様たちが生まれました。
その時のように、どうか我が身のさまざまな罪や穢れも祓い清めて下さい。
どうかこの祈りを天と地にいる八百万の神々と共に、天斑駒が耳を立てるごとくお聞き届け下さい……と、恐れながら申しあげる。

(3)いよいよ身を清めます。まずは下からよく洗います。

(4)次に手をよく洗い、手桶などで左肩・右肩・頭の順に水をかぶりましょう。この時「祓い給え、清め給え」と唱え、気合いを入れて我が身の罪穢を洗い流すのです。

(5)水をかぶったら念誦(ねんしょう)を奏上してから口をゆすぎ、顔をよく洗います。

念誦
謹みて念誦し奉る
修理固成 光華明彩(しゅりこせい こうかめいさい)×6回
天業恢弘 天下光宅(てんぎょうかいこう てんかこうたく)×2回
天皇 弥栄 々々 々々(すめらみこと いやさか×3)

※天皇「陛下」はつけないのか?と思われるかも知れませんが、そもそも天皇という称号じたいが敬称であるため、不敬には当たらないとする考えのようです。

※なお弥栄(いやさか)は「永遠に栄えますように」すなわち万歳。つまり「天皇陛下、万歳」という意味になります。

(6)ふたたび(4)と同様に水をかぶり、「すめらみこと・いやさか」を3度唱え、拍手を二度打って禊は終了です。

(7)最後に天鳥船行事やその他の整理運動で身体を温め、身体を拭いてから服をきましょう。

……お疲れ様でした。

補足・禊を行う注意点

くれぐれも無理は禁物(イメージ)

以上、禊の方法を紹介してきましたが、注意点も補足しましょう。

(1)禊を川や海で行う時は、水に入る前に天津祝詞を奏上し、入ったら「祓い給え清め給え」と唱え、かつ念誦を奏上。よく水に漬かったら充分に顔などを洗い、弥栄三唱をもって終了です。

(2)水の冷たさが辛い場合は、お湯(温浴)で禊に代えても構いません。ただし、ついでとばかりに石鹸等を使ってはいけません(それじゃただのお風呂です)。

(3)諸事情により禊も温浴もできない時は、冷水や湯で絞った布で身体を拭いて代えます。それさえできない場合は、口をすすいで手と顔をよく洗うことで代わりとしましょう。

……何だか最後の方はとてつもなくハードルが下がったような気もしますが、大切なのは苦行ではなく、誠心誠意をもって神様にご奉仕する真摯な態度。

試しにでもやってみると、日ごろ信心していなくても結構リフレッシュできるもの。もしよかったら、皆さんもチャレンジしてみて下さい!

※風邪をひくなどされても責任はとれませんので、体調に不安のある方は浴室での温浴がおすすめです。

※参考文献:

  • 大東塾 編『新版 祭典綱要』大東塾出版、1978年8月
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角田晶生(つのだ あきお)

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フリーライター。日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。(ほか不動産・雑学・伝承民俗など)
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