日本史

【ローカル武将研究】 秋田を統治していた岩城氏、六郷氏、打越氏とは? 「由利本荘市 入部400年!」

2023年、秋田県南部にある由利本荘市では、六郷氏・岩城氏・打越氏の入部400年記念事業が開催されている。

今回は、1622年(元和9年)に由利本荘市に入部した六郷氏、岩城氏、打越氏について紹介をしよう。

元々3氏は、出羽国(現在の秋田県)の地方を統治していたが、秀吉の小田原征伐後に改易となり、出羽国から離れてしまった。
しかし、関ヶ原の戦い後、最上氏が家中の争いで改易されたため、ふたたび出羽国へと入部している。

秋田県の戦国武将と言えば、佐竹氏を思い浮かべる人が多いだろう。

しかしながら、小規模な領主たちが秋田の地を統治していたことを、ぜひ入部400年の機会に知っていただきたい。

岩城氏とは?

画像.岩城氏家紋 ※筆者作成

岩城氏は、平安時代から関ヶ原の戦いの頃までは、常陸国(現在の茨城県)を治めていた。前九年の役(1051年~1062年)の活躍において、奥州岩城(現在の福島県いわき市)も治めるようになった。

関ヶ原の合戦の出陣において、岩城貞隆(いわき さだたか)は、消極的な行動をとった。実兄である佐竹義宣と共に、出陣しなかったのである。

そのため徳川家康の怒りを買い、すべての領地を没収されて江戸で浪人生活を送った。
その後、妻の実家である相馬家が再興を果たしたため、岩城家も再興してもらおうと天海に働きかけた。
天海は蘆名氏の一族であり、蘆名氏の当主が貞隆の次兄だった縁で支援を頼むことができたのだろう。

1615年(慶長20年)、大坂夏の陣においては、本多正信の軍に従軍し、戦功を挙げる。
1616年(元和2年)、信濃国中村(現在の長野県下高井郡木島平村)に1万石を与えられ、大名として復帰することができた。

1620年(元和6年)、ようやく落ち着くと思った矢先、貞隆は死去した。(享年38)

同年、息子の岩城吉隆が家督を継いだ。

画像 : 岩城吉隆(佐竹義隆) public domain

1622年(元和8年)、最上家の改易に伴い、出羽国亀田に一万石を加増された。翌年には亀田藩に藩庁を移す。

同年、本多正純が改易となったことで、岩城吉隆が出羽国亀田藩・初代藩主となった。
だが、佐竹氏宗家の家督を継ぐ予定だった佐竹義直が廃嫡されたため、吉隆は佐竹氏の養嗣子となり佐竹義隆と名乗る。

そのため、出羽亀田藩主は叔父の岩城宣隆が2代目として継ぐ形となった。
1627年(享保4年)宣隆は、真田信繁(幸村)の五女で豊臣秀次の孫にあたる、御田の方(御田姫、直姫)を側室に迎えている。

翌年に、嫡男・重隆が生まれたため、御田の方は側室から正室(継室)になった。

以降、亀田藩は明治維新まで岩城氏13代が治めた。

参考文献)角川日本地名大辞典5 秋田県

六郷氏とは?

画像.六郷氏家紋 ※筆者作成

六郷氏は、工藤氏流六郷氏として、出羽国仙北郡六郷邑(現在の秋田県仙北郡美郷町)にて繁栄した。

元々は二階堂氏であった二階堂道行(のちに六郷道行と改名)が、1577年(天正5年)に、六郷氏の菩提寺「永泉寺」に涅槃像を寄進したことが記録されており、天正期に入ってから二階堂氏が六郷姓を用いることになったようである。

その後、六郷道行は小田原城征伐に参陣し、豊臣秀吉から本領安堵を受け六郷周辺の「出羽国仙北中郡」を治めることになる。

六郷城の周囲では、河隈川(現在の角間川)や大保(現在の大仙市藤木)の船場の支配権を持っていた。米唐や木材などの物資を、領内の船場から雄物川を通り、土崎湊まで運んでいた。

息子の六郷政乗(ろくごう まさのり)の代で、六郷城城下町は商業地として大きく発展する。城下町を中心に街道が作られて、六郷は出羽屈指の城下町となった。

六郷政乗は、関ヶ原の戦いにも参戦している。
東軍の徳川家康方に付き、出羽横手城の小野寺義道を攻め、その功績により常陸国府中(現在の茨城県石岡市)に1万石の所領を与えられて大名となった。

大坂夏の陣においても戦功を挙げ、最上氏の改易後の1623年(元和9年)に、本荘藩2万石の初代藩主となった。

本荘藩は、江戸時代を通して新田開発を行っている。主に治水土木工事を行い、河川流域に新しく田地を切り開いた。
新田開発によって、人々の暮らしはより豊かになったのである。

打越氏とは?

画像.打越氏家紋 ※筆者作成

打越(うてち)氏は、由利郡打越郷(現在の由利本荘市本荘、大内地域)の周辺に勢力を持ち、「由利五人衆」と呼ばれた由利地方の領主のひとりである。

現在も地名として「内越」が残っている。
打越の読み方は何度か変わっており、はじめは「うていち」と称し、江戸時代に打越光輪の代で「うちこし」に改められる。
現代では「うてち」と呼ぶようになった。

東北の関ケ原と呼ばれた「慶長出羽合戦」において、打越光隆(うてちみつたか)は最上義光の軍に属し、共に上杉家を撃退した。

関ヶ原の合戦後は、常陸国行方郡新宮(現在の茨城県行方市新宮)に移封となった。

その後、光隆は大坂夏の陣で戦功を挙げ、出羽国由利郡矢島(現在の由利本荘市矢島)に入部する。

打越氏は、1634年(寛永11年)に、光隆の嫡男・光久が嫡子がないまま亡くなり、改易となった。
矢島は幕府領になったのち、1640年(寛永17年)に生駒氏が入り統治した。

このように出羽国での打越氏は、二代で断絶するという悲劇があった。そのため、資料がほとんど残っていない。

しかし、光久の弟の光種が徳川家光に取り立てられ、5百石の旗本として存続した。

入部400年記念行事

画像.天鷺村天守閣 ※photoAC

現在、由利本荘市では「由利本荘市入部400年記念事業」として、様々な催しが行われている。

今後行われるイベントについて、簡単にまとめてみた。

申し込みが必要なものもあるので、詳しくは由利本荘市HPを確認していただきたい。

【講演会等】

・西目公民館シガール
期間:9月23日(土)午後2時~3時40分まで
場所:由利本荘市西目町沼田字新道下2-533
内容:九度山・真田ミュージアム名誉館長の北川央(ひろし)氏を迎えた講演会。
申込み:不要
費用:無料

・由利本荘市文化交流館「カダーレ」
期間:10月22日(日)
受付 12:45~
開催時間 13時~16時30分
場所:由利本荘市東町15 大ホール内
内容:歴史研究家、河合敦氏を迎えた記念講演
「六郷・岩城・打越3氏の入部400年 由利本荘市の歴史をつくった偉人たち」
他、民俗芸能公演などがある。
※整理券の配布が9月25日から行われる。
公式サイト)
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002089/1008827.html

【資料館等】

・修身館
「入部400年記念特別展 六郷氏の足跡」
期間:前期:7月22日(土曜日)から9月10日(日曜日)まで(終了)
後期:9月16日(土曜日)から11月5日(日曜日)まで
場所:由利本荘市尾崎地内(本荘公園)
内容:六郷氏ゆかりの貴重な資料を展示公開

・矢島郷土文化保存伝習施設
期間:~2024年1月31日(水)まで
場所:由利本荘市矢島町七日町字羽坂64-1
内容:打越氏に伝わる脇差や短刀など、打越氏に関連する資料を展示。

・岩城歴史民俗資料館
期間:4月29日(土)~2024年3月31日(日)まで
場所:由利本荘市岩城亀田亀田町田町41
内容:岩城氏に関する資料などを展示。

【各図書館での展示】

・由利本荘市立中央図書館
期間:9月1日(金曜日)から10月31日(火曜日)まで
場所:由利本荘市東町15
内容:3氏(3藩)の図書資料、本荘城下古地図(複製)、古雪湊古地図(複製)の展示。

・岩城図書館
期間:4月29日(土)~12月28日(木)まで
場所:由利本荘市岩城内道川字水呑場27-1
内容:岩城氏に関する本を展示

・出羽伝承館
期間:7月8日(土)~9月24日(日)まで
場所:由利本荘市岩谷町字西越36(道の駅おおうち隣)
内容:岩城亀田藩の成立、岩城氏と旧大内町に関するパネル展示。

参考)由利本荘市
2023年度「六郷氏・岩城氏・打越氏 由利本荘市入部400年記念事業」の実施について
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002089/1006987.html

参考文献)角川日本地名大辞典5 秋田県

 

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