古代文明

アメリカ大陸最古(1万3000年前)の骨製ビーズが発見される 「クローヴィス人とは」

北アメリカのワイオミング州のクローヴィス遺跡で、12,940年前の骨製ビーズが発見された。

約13,000年前、アメリカ大陸の先住民は「骨製のビーズ」を作っていたのである。

これは、西半球でこれまでに見つかった中で最古のビーズであり、先史時代のクローヴィス人によって作られたと考えられている。

本稿では、骨製ビーズ(以降ボーンビーズ)の発見について説明し考察する。また、ビーズを作ったクローヴィス人について簡単に解説したい。

発見された13,000年前のボーンビーズについて

「クローヴィス人とは」

画像: ワイオミング州のクローヴィス遺跡で発見された約13,000年前の管状ビーズ。 CC BY 4.0

ビーズは管状で、長さ約1センチ、直径約0.5センチだ。

動物の長い骨を削って作られたと考えられている。

クローヴィス人とは、約13,000年前から11,500年前にかけて北米大陸に広く分布していた狩猟採集民である。
マンモスなどの大型動物を狩ることで知られており、精巧な石器や骨器を作っていた。

クローヴィス人については、後述する。

ビーズは長さ約7ミリの管状で、表面は滑らかに磨かれていた。

研究者によると、ウサギの骨から作られており、いくつかの溝が刻まれているという。

ビーズがわずかに赤みを帯びているのは、周囲の赤鉄鉱を多く含む土壌の影響と考えられている。

狩猟だけじゃない、13,000年前の先史時代の文化

画像: クローヴィスポイント(槍先) CC BY-NC-SA 4.0

ビーズは、先史時代のクローヴィス人が残した炉の跡付近で、他の遺物とともに発見された。

クローヴィス人はアメリカ最古の人々ではなく、約13,000年前、最終氷河期に沈んだベーリング陸橋を渡って北米にたどり着いたとされている。

また、クローヴィス文化独特の特徴的な槍先を作ることでも知られているが、約12,750年前の寒冷期「ヤンガードリアス期」の始まりとほぼ同じ時期に姿を消し、大型動物の一部も絶滅している。

画像: ビーズが回収された場所。CC BY 4.0

この遺跡では、これまでにも4万点以上の石製クローヴィス文化の道具や、未成体のマンモス (コロンビアマンモス)、氷河期のバイソン (バイソン・アンティクス)、骨針、複数の火床などが発掘されている。

ボーンビーズの素材と製作年代

研究者たちは、ビーズの素材を特定するために、コラーゲンサンプルを採取し、質量分析装置を用いた動物考古学分析 (ZooMS) を行った。

この分析により、コラーゲンの化学組成が明らかになった。

結果は、ビーズの骨がウサギ属の動物に属していることを示していた。

しかし、正確な種類までは特定できなかったという。

当時、現在のワイオミング州には、クロウサギ、シロオビワタウサギ、カナダヤマウサギ、ホッキョクウサギなど数種類のウサギが生息していたからだ。

さらに、研究者たちは近くの火床からクロウサギの骨を発見している。

ボーンビーズが人工物である証拠

研究者たちは、ビーズが野生動物の行動や、消化によって偶然に形成されたものではなく、人工物であることを示す証拠として以下の点を挙げている。

・遺跡で発見された数千個の骨片の中で、唯一磨かれた骨片であること。
・肉食動物が通常食べない、栄養価の低い骨で作られていること。
・他のクローヴィス文化の遺物から、1メートル離れた場所で発見されたこと。
・この遺跡では、先史時代の肉食動物の痕跡がほとんど見つかっていないこと。

これらのことから、ビーズは人為的に作られた装飾品ということが結論づけられた。

ボーンビーズの用途

クローヴィス人がビーズをどのように使用していたかは不明である。

従来の研究では、ビーズの使用は人口密度が上がり、見知らぬ人との遭遇が頻繁になったことから始まったと考えられていた。つまり、身分や集団の所属を示す目印のようなものとされていた。

しかし今回の研究では、クローヴィス人が人口密度が低い時期にビーズを使用していたことが分かっている。

クローヴィス文化

「クローヴィス人とは」

画像: クローヴィスポイント(槍先) CC BY-SA 2.0

クローヴィス人は、約13,000年から北アメリカ大陸に広がったとされ、クローヴィス文化の遺跡は、北アメリカ大陸の各地で発見されている。

クローヴィス人は、狩猟採集民であり、移動しながら生活していた。

独特の形をした槍先であるクローヴィスポイントを使って、マンモス、ラクダ、馬、バイソンなどの大型動物を狩っていたと推測されている。

また、石器や骨器などの道具を使って、狩猟や食料の調理、衣服や住居の製作などを行っていた。

クローヴィス文化は、北アメリカの初期の文化を代表するものであり、その後、アメリカ先住民の文化に大きな影響を与えたと考えられている。

この文化は、約12,750年前頃に終焉を迎えたと推定されているが、その原因はまだ解明されていない。

現時点では、気候変動や、他の文化との接触などが原因と考えられている。

さいごに

13,000年前のウサギの骨で作られたビーズが発見されたことにより、クローヴィス人が単に生存のための狩猟・採集ではなく、ある程度洗練された技術を持っていたこと、そして美術品や装飾品を作ることに時間を割いていたことが分かった。

考古学では次々と新しい発見があり、その発見の内容によっては、それまでの推測が全て覆される可能性がある。

クローヴィスに関する研究においても、さまざまな視点で研究が進められており、今後の新たな発見が楽しみである。

参考 :
Use of hare bone for the manufacture of a Clovis bead | Scientific Reports
clovis point | British Museum

 

lolonao

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

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