生活

SNSで目にする「#丁寧な暮らし」という新たな人生観について

Instagramで目にするようになった「丁寧な暮らし」というハッシュタグ。

投稿されている写真には、部屋に飾られた観葉植物や健康にこだわった食材、自然の中でウォーキングを行う自分の姿といった規則正しい生活習慣の様子が収められている。

#丁寧な暮らし

画像:健康に気を遣う丁寧な朝食 Pixabay

以前のInstagramの投稿といえば、いかに日常に溢れた『映える』スポットを発信できるかが重要視されていたが、『おうち時間』が身近となった現在では、家の中での生活、または自分自身の生活ルーティンをいかに充実感で満たせているかを発信することに焦点が置かれている。

心の余裕を彩る「丁寧な暮らし」の実践とその発信目的

人々の持つ価値観が多様であるように「丁寧な暮らし」の定義もまた、人によって様々である。

しかし、時間を掛けて心地良い空間を作り上げているという意志だけは、多くの人々が実践している「丁寧な暮らし」に共通している部分だ。

料理をする時には、デザインや色合いにこだわった調理器具や、食器を使用して食事の時間を彩ってみる。朝、目覚めた瞬間から活気のある雰囲気を感じるために、部屋に飾る花を頻繁に変えてみる。家事や仕事の間には必ず、ひと息つける時間を意識してみるなど、生活に工夫や手間を掛ける姿勢が、心に余裕のある「丁寧な暮らし」を生み出していく。

#丁寧な暮らし

画像:部屋に花を飾る日常 Pixabay

そんな各々の「丁寧な暮らし」をSNSで発信していく意図には、ユーザーへのアピール目的というより、改めて自分の生活ルーティンを振りながら「丁寧な暮らし」の継続や、改善を自分自身に促す意味合いが強く込められている。

「丁寧な暮らし」は目に見えるだけの快適さが全てではない

都内の高級ホテルを思わせるリネンやタオルの配置、厳選した洗剤用品を使用した細やかな清掃、パンを小麦から作り上げる日常に、コーヒー豆の挽き方にこだわったブレークタイムといった生活の一部が、「丁寧な暮らし」を象徴する理想の姿として先行しているが、必ずしもそれだけが正解とも限らない。

「丁寧な暮らし」とタグ付けされる部屋の写真は、整理整頓はもちろん、収納が行き届いている状態が多いため、必要最低限の物だけで生活を送る『ミニマリスト』と結び付けて捉える人も多いが、その思想は決して間違いではないし、物を減らすことで居心地の良さを実感できるのであれば、『ミニマリスト』という生き方も「丁寧な暮らし」の括りに十分に当てはまるといえる。

#丁寧な暮らし

画像:シンプルな生活『ミニマリスト』のイメージ Pixabay

休日に敢えて何の予定も入れない日を意識する、週末には健康面よりも大好きなデザートで自分で甘やかす時間を優先するといった、自分のためだけに時間を使う何気ない日常も、自分自身にとって心地の良いものであるならば、またそれも「丁寧な暮らし」に値する生き方と断言できると私は思う。

生活のどの場面に「丁寧さ」を取り入れ、どんな「丁寧さ」を取り入れたときに自分が心地良い気持ちになれるのかが主軸である「丁寧な暮らし」は、外から見える美しさのみに力を注ぐのではなく、内面的に磨きを掛けた自分独自の生き方を切り開いていくことが最終目的とされていると感じるからだ。

「丁寧な暮らし」を前向きに捉えることは自分自身への思いやり

毎年、話題を集める流行語には、必ずといっていいほど賛否両論の声が寄せられているが、それは「丁寧な暮らし」にもいえることである。

SNSや雑誌を通して「丁寧な暮らし」を目にする度に、憧れを抱く反面、子育てや仕事に奮闘する毎日の中、心のゆとりを日常に取り入れる余裕を作ることは安易なことではないと感じ取る人が多いからだ。

きっと、SNSで発信される理想的な「丁寧な暮らし」通りに完成さえなければならない、そんな完璧なゴールばかりを思い描き続けてしまう考えが、理想と現実の違いに圧倒され、実行に移しにくいという答えを導き出してしまっているのだろう。

人によっては、いつの間にか「丁寧さ」はこうであるべき、1日でも「丁寧さ」を怠ってはいけないといった独自のルールを決めすぎるが故に、プレッシャーや疲れを覚えてしまうケースも起こり得る。窮屈に感じるほどに、生活の全てを「丁寧な暮らし」に当てはめようとする考えは、返って逆効果だ。

冒頭でもいったように、「丁寧な暮らし」の定義は人によって様々であることを忘れず、写真から見える表面的な「丁寧な暮らし」だけを追い求める考えは捨てて欲しい。『お手本に追いつくように』ではなく、今の自分に見合った生活環境を整えていくために、ほんの少しだけ充実と楽しみを加えるために、自分の好きという気持ちから始められるものを見つけ出し、家事や仕事から離れた自分を癒しで満たせる空間作りを心掛けて欲しい。

自分と向き合う空間がある人生こそ、自分自身を丁寧に大切にできる生き方である。

 

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