NHK大河ドラマ「光る君へ」皆さんも楽しんでいますか?筆者も毎週欠かさず観ています。
本作には沢山の貴族たちが登場し、平安時代の王朝絵巻を彩っていますが、その一人である平惟仲(たいらの これなか)が気になりました。
公式サイトを見ていると、はじめは右大臣家の家司(けいし。執事)だったのに、いつしか公卿に出世していますね。
今回はそんな平惟仲の娘である大和宣旨(やまとのせんじ)を紹介。果たして彼女はどんな女性で、どんな生涯をたどったのでしょうか。
道長次女・藤原妍子(三条天皇中宮)に仕える
大和宣旨は生没年不詳、平惟仲と藤原忠信女(ただのぶのむすめ)との間に生まれました。
成長すると三条天皇の中宮である藤原妍子(けんし/きよこ。藤原道長次女)に仕え、女官の最高職である宣旨に任じられます。
宣旨とは朝廷より承った宣旨を主君に取り次ぐ役で、いつしか女房の筆頭職となりました。
大和宣旨という女房名は、後夫である藤原義忠(のりただ)の官職・大和守から採ったのでしょう。
しかし義忠が大和守を兼任したのは長元9年(1036年)であるのに対して、主君である妍子は万寿4年(1027年)に崩御しています。
そのため義忠の官職に由来する女房名である場合、妍子に仕えていた現役当時には大和宣旨とは呼ばれていなかったと考えられるでしょう。
もしそうであるなら、彼女は平宣旨などと呼ばれていたのかも知れませんね。
女流歌人として活躍
ともあれ妍子に仕えた大和宣旨は、主君の補佐はもちろんのこと、彼女のサロンに華を添えました。
こと和歌の才能に秀でており、『後拾遺和歌集』に3首が入首しています。
※以下の意訳については諸説あり。
550 涙川 流るゝみをと しらねばや
袖ばかりをば 人のとふらむ
【意訳】私が涙にくれていたことを知らない人々が、私の袖が濡れていたことをしきりに訊ねてくるのです。
【コメント】お察し下さい。そっとしておいて下さい。今の私に必要なのは、言葉よりも距離感です。
735 はるばると 野中にみゆる 忘れ水
たえまたえまを なげく頃かな
【意訳】あれから春が何度も来たのに、私は忘れ去られ、顧みられることもありません。すっかり音沙汰が絶えてしまったと、あの人は思い出してくれるでしょうか。
【コメント】まぁ期待は薄いと思います。過去のことは忘れて、次に行きましょう。
809 戀しさを 忍びもあへず 空蝉の
うつし心も なくなりにけり
【意訳】恋しさを耐え忍び、逢える日までは、と心を無にしてきました。しかし気づいてみると、なぜあんなに好きだったのかさえ忘れてしまいました。
【コメント】失恋というのはフラれるよりも、好きだった気持ちを失う方が辛い気がします。皆さんはどうですか?
大和宣旨の結婚歴・家庭事情は?
そんな大和宣旨は、はじめ藤原道雅(みちまさ。伊周の子)と結婚しますが離婚。藤原義忠と再婚しました。
道雅は後に「荒三位」と呼ばれた荒くれ者だったそうですから、まさかDVなどなければいいのですが……。
『尊卑分脈』によると、藤原道雅との間には観尊(かんぞん。僧侶)と上西門院女房(じょうさいもんいんにょうぼう。本名不詳)を、藤原義忠との間に藤原能成(よししげ)を生んでいます。
道雅の子供たちについて、母親の欄を見ると観尊は「中納言平惟仲女」、上西門院女房については母親が「大和宣旨」となっていますが、これは両者が別人物と解釈されているのでしょうか。
また当時に上西門院と称した女性の存在を調べたところ、よく分かりません。もしかしたら上東門院(じょうとうもんいん。藤原彰子)でしょうか。もし詳しい方がいらしたら、教えてください。
ちなみに『尊卑分脈』の記述が正しいならば、上西門院女房は母と共に義忠の妻(後拾遺作者左中弁義忠室)となっているようです。父親が違うとは言え、母と娘で同じ夫を持っているというのは、現代的感覚だと少し違和感が否めませんね。
大和宣旨・基本データ
生没:生没年不詳
両親:父親・平惟仲/母親・藤原忠信女
主君:藤原妍子(藤原道長次女、三条天皇中宮)
身分:宣旨
伴侶:藤原道雅(先夫)/藤原義忠(後夫)
子女:道雅との子…観尊、上西門院女房/義忠との子…藤原能成
終わりに
今回は平惟仲の娘である大和宣旨について紹介してきました。
果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、藤原妍子の宣旨として彼女が登場するでしょうか。
登場するとしたら誰がキャスティングされるのか、今から楽しみですね!
※参考文献:
- 朝日新聞 編『朝日 日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年12月
- 藤原公定 撰『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集 第2巻』国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/991584/1/33
- 藤原公定 撰『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集 第3巻』国立国会図書館デジタルコレクション
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