文豪・志賀直哉に「奈良にうまいものなし」といわれた奈良。
しかし、奈良は大和野菜・果物・大和牛・大和ポーク・大和肉鶏など有名ブランド食材が目白押し。
世界遺産に登録され、神社仏閣などで国内外からたくさんの観光客が訪れる奈良ですが、美味しい飲食店も和・洋・中と、幅広く存在します。
今回は、そんな奈良の飲食店の中から、「奈良で『奈良』味わう」と称し、大和野菜・大和牛など、奈良が誇るブランド食材を堪能できるお店をご紹介します。
どのお店もクオリティが高いにもかかわらず、懐に優しいお値段もうれしい。奈良を訪れた際には、ぜひ足を運んでください。
目次
奈良フレンチのパイオニア「ボナペティ めしあがれ」
最初にご紹介するのは、伝統的な古い街並みが残るならまちにある「ボナペティ めしあがれ(ぼなぺてぃ めしあがれ)」です。
奈良時代創建の古刹・十輪院の向かいに位置する同店は、奈良のフレンチのパイオニア的存在ともいえるレストラン。
お店は、築90年の古い町家の雰囲気を損なうことなく、実に良い感じにリニューアルを施し、縦長の町家の構造を活かし、テーブル席を設け、アンティークな調度が置かれています。
スタッフは、オーナーシェフの大西正則さんと、そのパートナーで、ワインとサーブを担当する服部紀子さんのおふたり。
ここでは、せかせかするのではなく、ならまち本来の静けさを感じながら、ランチ・ディナーともゆったりと愉しみたい。
そんなこともあって、基本は予約制。奈良県近辺の契約農家などに出かけて、お休みの日もあるので、必ず電話をしてから訪問しましょう。
さて、同店を奈良フレンチのパイオニアと称しましたが、同店のオープンは2007年。
約6年間にわたるフランスでの修行を経て、1993年に富雄で独立を果たし、その後、現在の「めしあがれ」をオープンしました。
さて、肝心の料理は、大和野菜への愛情と造詣の深さから、いずれの皿にもしっかりと地元野菜が添えられます。
季節によっては、大和野菜の原種ともいえる、下北春まななどの希少な野菜も用います。
また、オードブルやメインには、地元奈良県産のジビエや大和牛を用いています。
それでいて、「安心な食材はもちろん、バターやクリームを控えた身体に優しいフレンチを実践している」という大西シェフ。
奈良でフランス料理店を営んで約30年。大西シェフのフレンチはしっかりと奈良に根を下ろしています。
大和牛のしゃぶしゃぶをお手軽に「肉懐石 冨久傳」
続いては、同じならまちでも十輪院の北側、こちらも奈良時代創建の福智院の近くにある「肉懐石 冨久傳(にくかいせき ふくでん)」を紹介しましょう。
ここは、元興寺門前にある「囲炉裏ダイニング たなか」の姉妹店。「たなか」が黒毛和牛を囲炉裏で焼くスタイルであるのに対し、「冨久傳」は大和牛を中心にしゃぶしゃぶで提供します。
店内に入ると、奈良格子が美しい町家の外観とは対照的なモダンなカウンター席が現われます。
余裕をもって設えられた席には、それぞれに一つのHIクッキングヒーターが設置されているので、一人でも気兼ねなく鍋が楽しめるのがうれしいところです。
料理のベースは、最上級の大和牛やブランド豚のしゃぶしゃぶ。
地元奈良県の農家が栽培した野菜もふんだんに、「冨久傳」特製のカツオ節と昆布で丁寧にとった特製だしでいただきます。
料理はコースが主体。しゃぶしゃぶの他に、食前酒・前菜盛り合わせ・一品料理・海鮮しゃぶ・箱入り野菜盛り・締め・デザートが付く充実の内容です。
しゃぶしゃぶだけのセットメニューもありますが、ここはコースがおすすめ。
「たなか」譲りの彩も美しい前菜の盛り合わせなどが、メインのしゃぶしゃぶを盛り上げてくれます。
奥には、蔵を改装した隠れ家的な部屋があり、同じくHIヒーターが埋め込まれた2つのテーブル席があります。
こちらは、ファミリー・グループで鍋を楽しむのに最適です。
大和牛と伝統野菜のマリアージュ「粟 ならまち店」
そして、ならまちのお店をもう一軒紹介しましょう。
猿沢池方面へ戻り、ならまち大通りを渡った場所にある「粟 ならまち店(あわ ならまちてん)」です。
大和野菜を世に知らしめた「プロジェクト 粟」が、築140年の町家をリニューアルし「奈良の食材を広く知ってもらいたい」という想いから、ならまちに出店。
「プロジェクト 粟」の拠点「清澄の里」や、提携する農家で心を込めて育てられた大和の伝統野菜をはじめ、大和牛・大和の地酒など、奈良県産の食材を駆使した料理を提供します。
料理には、大和まな・ひもとうがらし・どいつ豆など、常時30~40種類の野菜をふんだんに使っています。どれも味が濃く、風味豊かで、滋味深い味わいで、生でかじってみるとその甘さに驚かされます。
そうした野菜は、籠盛りの前菜や小鉢などに。
どれも、野菜本来の持ち味を味わってもらうため、味付けは、昆布、シイタケでとったシンプルな出汁が基本となります。
メインは、大和牛のリブロースと大和野菜の陶板焼き。
鎌倉時代からその名を知られていたという大和牛は、赤身の味の濃さと脂がさっぱりしているのが特徴。お好みで、岩塩、ポン酢、金山寺味噌をつけて、大和野菜とともに味わいます。
「粟 ならまち店」は、完全予約制。人気店なので、奈良に行くと決まったら早めに電話予約を。
奈良の食材を多彩な献立にアレンジ「懐石料理 円」
次に紹介するのは、近鉄奈良駅方面から、ならまちへ延びる餅飯殿商店街の南端近くにある「懐石料理 円(かいせきりょうり えん)」です。
主人の平野照明さんは、京都・北陸・奈良と和食一筋に研鑽を重ねてきた料理人。
そうして、餅飯殿通りのならまちにほど近いビルの2階に、隠れ家的な懐石料理店をオープン。以降、良心的な価格と気さくな人柄から、地元から観光客まで幅広く支持されています。
奈良に来て、奈良の産物を少しずつ、多くの種類を味わいたいのであれば、ディナータイムの店主おまかせ懐石料理コースがおすすめです。
コースの献立は、その日仕入れた新鮮な食材により内容が変わりますが、基本は前菜・向付・焚合・焼物・変鉢・強肴・油物・汁・飯・水物のコースとなります。
何が出てくるか分からない、そんなワクワク感がある料理には、大和野菜をはじめとする地元で採れる露地ものの野菜。さらには、奈良漬けを細巻きの具にしたり、酒粕を天ぷらにしたりと、奈良の食材をたくみに取り入れます。
季節によっては、山菜や奈良近郊で獲れるジビエも献立にのることが。
そして、食事として供されるのは、季節の炊き込みご飯や奈良名物の茶粥。
奈良のよき素材で構成された献立は、奈良の夜を口福に彩ってくれます。
奈良づくしは、要予約。ディナーは手頃な、奈良の膳・ミニ懐石もあります。
また、ランチなら茶がゆ・奈良漬寿司・天ぷらなどが付く、茶がゆ膳もおすすめです。
奈良への愛情を具現化した料理「松籟~まつのおと~」
最後に紹介する「松籟~まつのおと~(しょうらい~まつのおと~)」は、近鉄奈良駅を北に進み、奈良女子大学の過ぎたあたり、静かな空気が流れる一画に建つ瀟洒な町家を一軒丸ごと店舗とします。
オーナーシェフの松本剛さんは、大学で建築学を学び、大工の経験もあるという異色の料理人。
店名は、中庭に聳える樹齢300年という松の木から名付けたとのこと。みごとな枝を揺らす古都の風を感じながら、中庭を眺めていると時の経つのも忘れそうです。夜になるとライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれます。
一年を通じてのメインは、松本さんが独自の工夫を施した鍋料理。
ジビエを用いた紅葉鍋(鹿肉)、ぼたん鍋(猪肉)もおすすめだが、奈良らしさといえば、明日香地方の郷土料理である飛鳥鍋でしょう。
老舗酒造の酒粕を加え、奈良らしさを演出するとともに、素材の風味も引き立たせています。鴨肉・鶏ミンチなどの他に、ヒラタケ・シメジなどの季節のキノコもたっぷり。
鍋の具を食べ終わったら、古代米を用い、チーズ・バターがたっぷり入った濃厚な味わいの酒粕リゾットもおすすめです。
この他、醍醐と明太子の春巻き・柿の奈良漬とクリームチーズなど、奈良の食材や季節のものを中心にとする酒肴で、豊富に揃う奈良の銘酒やワイン・ウイスキーなどで一献傾けるのもこの店ならではの楽しみです。
1階は中庭から吹き抜ける風が気持ちよいバーで、お酒はもちろん、土・日・祝日の昼間は喫茶メニューも提供します。
築80年の元商家をリノベーションしたという「松籟~まつのおと~」。ここには、松本さんの奈良への愛情がぎっしりと詰まっているようです。
奈良は本当に地の食材に恵まれた土地。たくさんの美味しいお店がありますが、ぜひ奈良の食材を味わって下さい。
思い出に残る旅になること請け合いです。
※SHOP DETA
●ボナペティ めしあがれ
HP:https://tabelog.com/nara/A2901/A290101/29000763/
電話:0742-27-5988
●肉懐石 冨久傳
HP:https://fukuden-nara.com/
電話:0742-25-2910
●粟 ならまち店
HP:https://www.kiyosumi.jp/naramachiten
電話:0742-24-5699
●懐石料理 円
HP:https://yen-kaiseki.com/
電話:0742-26-0291
●松籟~まつのおと~
HP:https://www.facebook.com/matsunooto/
電話:0742-81-4949
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