宗教

【100均で楽しむ】 フリースタイル写経のすゝめ

皆さんは写経をしたことがありますか?

最近ではあちこちのお寺で写経体験が人気を呼んでいるようです。

深閑とした空気の中で、心静かに墨をすって筆に乗せ、紙の上を走らせる無心のひととき……。

なんて実際はそう優雅にもいかず、境内にごった返す観光客の喧騒にうんざりしながら、自分の悪筆ぶりにげんなりさせられるのが現実でした。

そもそも1回1,000円(相場)という料金設定が、敷居の高さを感じさせるではありませんか。

もちろん嫌ならやらねばいいのですが、何か少しもったいない気がするのです。

今よりほんの少しでいいから、もう少し写経のハードルを下げられはすまいか……。

そんなことを考えながら、写経をもっと身近に楽しむ方法を模索してみました。

よかったら、ぜひご参考までにお付き合い願います。

220円(税込)で写経を楽しもう!

フリースタイル写経のすゝめ

筆ペンと写経用紙、これで合計¥220-。7回は楽しめるので、実質約¥32-/回。

という訳で、ある日突然ふらっと訪れたのは近所のセリア。

そう。100均(100円均一ショップ)として有名?な、タネも仕掛けもないセリアです。

そこで購入したのは写経用紙と筆ペン。

筆ペンなんて言っている時点で、既に暗雲ただよう雰囲気ですが、ご心配には及びません。

なぜなら写経で大切なのは、言うまでもなくお経(ここでは般若心経)だからです。

よもや仏様が「お経は墨と毛筆で書かねば、功徳がないぞ」とは仰いますまい。

何だったらポールペンだろうが鉛筆だろうが、極端な話しPCのタイピングだっていいのです。

とは言うものの、そこまで原理主義を突き詰めてしまうと、風情がなくなっちゃっていけません。

風情がないと写経に飽きてしまいますから、ここは合理性とのバランスをとって筆ペンにしたのです。

そもそも筆ペンだってバカにしたもんじゃありません。

いざ筆ペンで書いてみると、これがなかなか難しいから、まぁ一度やってみて下さい。

写経用紙はお手本つきが絶対おすすめ

実際に書いてみる。大事なのは、ひたすら書くこと。一文字ごとにこだわりながら、しかし執着せずにサクサク書こう。

一方の写経用紙ですが、これも最初はお手本のついた専用?のものをおすすめします。

別に家の余った半紙だっていいんじゃないの?と思われるでしょうが、これにも理由があるのです。

もちろん半紙だって画用紙だって、それこそチラシの裏でもトイレットペーパーでも構いません。

極端な話しをすれば、お家の壁でも木簡や竹簡でもいいでしょう。

が、最初はどうしてもお手本をなぞらないと、余りの悪筆ぶりに嫌気がさしてしまうのです。

下に敷いたお手本をなぞりながら、それらしく書いた方が、何だか少しだけ上手くなったような気がして続けられます。

それでも最初は苦戦するもの。悪いことは言わないから、最初だけはお手本つきの写経用紙を買うのです。悪いことは言わないから。

2回目以降は普通の半紙など、ある程度透ける紙なら何でもいいでしょう。

今回は「お習字教室」ではない

フリースタイル写経のすゝめ

立膝で書を楽しむ小野道風(画像:Wikipedia Public Domain)

さぁて、道具の準備ができたところでいざ写経にトライですよ。

姿勢ですか?描きやすい姿勢を見つけて、気楽にやって下さい。

筆順ですか?できれば正しい筆順を調べて、気楽にやって下さい。

書体ですか?細かいことは気にせず、気楽にやって下さい。

なにぶんフリースタイルです。自分の手指や身体の動きを意識しながら書き続ければ、次第によくなっていくものです。

最初から「筆の持ち方はこう、背筋はのばして、肩の力を抜いて……」なんて言われても、それが出来るなら、小学校のお習字でもっと成績がよかったでしょう。

素直?だった小学生時代にさえままならなかったことを、いい歳したおっさん(例:筆者)にイチから叩き込めるなんて思わないで下さい。

少なくとも今回は、お習字教室ではないのです。

もちろんお習字教室を否定する気はないし、むしろお習字がきちんとできる方は老若男女問わず尊敬します。

しかし私たちだって、お習字が下手っぴなりに駆けずり這いずり生きてきた自負があるのです。

たかがお習字が下手っぴなだけで、彼ら彼女らに劣等感を持たされる筋合いはありません。

そういうつまらんマウントをとる方がいるからこそ、写経だけでなく日本文化は無駄にハードルが高くなってしまうのではないでしょうか。

まったくハードルがないのも達成感がないからつまりませんが、あまりにお高すぎるのもどうかとは思います。

文字を書いた己と向き合う

別の方が写経している様子(イメージ)

少し脇道にそれましたが、いよいよ本題の写経を楽しもうではありませんか。

よく写経は「無」になれるなんて言いますが、筆者などは一筆ごとに雑念しかありません。

修行が足りないことこの上ないものの、正直それでいいんだと思います。

いまこの字を書きながらどんな雑念が湧いたのかを噛みしめ、味わって下さい。

字がうまく書けたり書けなかったり、このトメはねは気が抜けたとか油断したとか、あるいはちょっと上手くなったと自分の奢りに恥じ入る一瞬があるかも知れません。

お経を書きながら読むことで、何が心に浮かんだか。その一文字一文字を振り返り、楽しむのです。

気づけば熱中して変な姿勢になっているかも知れません。

でも構うことはありません。それが文字を通して仏と己に向き合うあなたの姿なのですから。

悟りの境地は書いた先に?

他の方による写経。自分で書くと、文字に愛着が湧く(イメージ)

写経をする上で大事なのは「何度も書くこと」「失敗してもこだわらないこと」「自分の字を好きになること」。

1回こっきりしか書かないから、ちょっとしたお上品感と肩こりだけのイベントになってしまうのです。

肩の力が抜けるまで、何回でも書いて下さい。そのためには、1回あたりのコストをギリギリまで下げなければなりません。

だからこその百均、写経用紙があるならダイソーでもキャンドゥでも、どこでも大丈夫です。

書けば書くほど愛着が湧いてきますから、ぜひともどんどん書いて下さい。

もし写経が仏道の修行だというなら(間違いなくそうだと思いますが)、悟りの境地は書きまくった先にあるはずです。

最初はふざけた殴り書きでも構いません。何度も書いている内に、己を偽れなくなります。

もっと一文字一文字に誠実であろうと思い、自然と心がこもってくるから不思議なものです。

お気に入りの文言を探そう

文字の海から、お気に入りの文言を探してみよう!(イメージ)

写経をしていると、自然とお経を読むようになるでしょう。

書く文字は見なければならず、見る文字は読むようになるからです。

何周も写経している内に、お気に入りの文言を書く瞬間が楽しみになってくるでしょう。

例えば筆者は「あのくたらさんみゃくさんぼだい(阿耨多羅三藐三菩提)」という文言が好きになりました。

大いなる仏の悟りとかそういう意味らしいですが、普段の漢字にはない耨(のく)という読みと、三藐三菩提(さんみゃくさんぼだい)という響きがお気に入りです。

楽しみ方は人それぞれ、皆さんもお気に入りの文言を見つけてみて下さい。

フリースタイル写経・Q&A

大事なのは少しずつでも、楽しくなるまで続けること(イメージ)

Q.写経はどのくらいの頻度でやればいいですか?

A.好きなペースで、それこそ一日一文字でも構いません。やっているうちにもっと書きたくなるので、自分の楽しいペースが最適です。

Q.どんな姿勢でもいいって、寝転んでもいいのですか?

A.もちろんです。実際にやってみて、快適な姿勢を探してみて下さい。なんなら逆立ちしながら書いたって、仏様は怒りません。多分。

Q.気分が乗らないんだけど、こんな日に写経なんかしちゃダメですよね?

A.そんなことはありません。楽しい日も悲しい日も、その日の気分が表れた文字を通して自分を省みるよい機会となります。

Q.飽きたらやめてもいいですか?一度始めたら、書き通さないといけませんよね?

A.飽きたらさっさとやめて下さい。やりたくないことに時間をつぶすほど、あなたの人生は永くないはずです。ただ出来れば写経道具はとっておくことをおすすめします。またやりたくなるかも知れませんから。

Q.やっぱり写経はちゃんとやらないとダメなんじゃ……。

A.そう思われるのであれば、それがあなたにとっての正解と思います。写経はお経を書き写す行為以上に、お経を書き写す自分を通して仏様と向き合うことが目的です。あなたが正しいと思うスタイルで臨んで下さい。

終わりに

一回だけじゃ、もったいない。何度も何度も楽しくなるまで書き続けよう!

今回はフリースタイル写経の楽しみ方について紹介してきました。

既に先駆者がいるかも知れないので、調べて他の方のご意見と比べてみると面白いでしょう。

あくまで筆者の感想ながら、どうも我が同胞たちは「苦しくなくちゃ価値がない」と思っているフシが感じられます。

もちろん修行は時に苦しいもので、そういう面があることも間違いありません。

しかしながら古来「知好楽(知ってる者より好きな者、それより楽しんだモン勝ち)」という言葉があるように、人生は楽しむ者こそ最強です。

本気で仏道に帰依する方はともかく、これを読んでいる皆さんの99%以上は、ちょっとライトに写経でもやってみようかレベルの方だと思います。

「写経はやってみたいけど、ハードルが高いよね……」

今回はそんな方が、筆を手にとるキッカケになればと言わせていただきました。

お経と言っても所詮は文字です。小難しく書いてあっても、人の言葉だから怯むことはありません。

フリースタイルでも、真面目スタイルでもいい。少しでも興味があるなら、ぜひ筆を手にとってみるのがおすすめです。

「あなたは法律と道徳、公共の福祉に反しない限りにおいて、望んだことに何でも挑戦できる権利があります」

それでは、よい余暇をお過ごし下さい。

角田晶生(つのだ あきお)

角田晶生(つのだ あきお)

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フリーライター。日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。(ほか政治経済・安全保障・人材育成など)※お仕事相談は tsunodaakio☆gmail.com ☆→@

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