城,神社寺巡り

関東最恐の縁切りスポット『縁切り榎』 江戸時代から存在する「悪縁切り」の神様

自分を苦しめるさまざまな悪縁と「縁を切りたい!」という庶民の願いを聞いてくれる「縁切り」の神社やお寺は、全国に点在しています。

その中でも「関東最恐」ともいわれているのが、板橋区にある「縁切榎(えんきりえのき)」(榎十六天神)です。

江戸時代から、多くの人々から信仰を集めている「縁切榎」を訪れてみました。

縁切り榎

画像:マンションの隣にひっそりと佇む縁切榎(撮影:桃配伝子)

「関東最恐」と評判の「縁切榎」

「縁切榎」は、東京都板橋区の旧中山道板橋宿にある、大きな大きな「榎の木」です。

「関東最恐」と聞くと、なにやら恐ろしげではありますが、「縁切榎」は商店街のはずれにひっそりと佇んでいます。

「縁切り」といっても、「本人の力ではどうにもならない悪縁をずばっと断ち切ってくれて、良縁を結んでくれる」「悪縁と縁が切れて新しい道が開ける」というもので、その霊験はあらたかと評判です。

筆者が訪れたときも老若男女、ひっきりなしに人が詣でていました。

大きな宿場町・板橋宿の仲宿にある縁切榎

縁切り榎

画像:板橋宿『木曾街道 板橋之驛』 public domain

東京の北西部・板橋区に位置している板橋宿は、江戸と京都を結ぶ「中山道」最初の宿場町です。

江戸側最初の宿であった板橋宿は、重要かつもっとも大きい宿場町のひとつで上宿(かみじゅく)・仲宿(なかじゅく)・平尾宿(ひらおやど)の3つの地域に分けられていました。

現在の仲宿エリアは板橋区の南東側に位置し、北部に東京都道18号線(環状七号線)、西部に首都高速5号線池袋線が通っています。

板橋区役所前駅から歩いてすぐ「仲宿」と書かれた大きなゲートを潜ったところから続く仲宿商店街を進むと、板橋十景のひとつで石神井川にかかった「板橋」という橋が現れます。

板橋は、再建が繰り返されているものの、今でも江戸時代の名残りが感じられる雰囲気です。

「縁切榎」は、その板橋から徒歩で2分ほどのマンションの隣に佇んでいます。

縁切り榎

画像:江戸時代の雰囲気を残す「板橋」(撮影:桃配伝子)

江戸時代より信仰を集める縁切榎

縁切り榎

画像:鳥居をくぐって奥まったところに小さな祠がある(撮影:桃配伝子)

」という木は、アサ科エノキ属の落葉高木で、縁起の良い木を意味する「嘉樹(ヨノキ)」が転じてエノキとなった……という説もあります。

江戸時代、この地には旗本・近藤登之助の抱屋敷があり、屋敷内の榎がいつしか「縁切榎」と呼ばれるようになったそう。

男女の悪縁はもちろん、なかなか本人の意思では達成できない断酒、どうにもならない病など、悪との縁を切りたいとの願いが「この榎から剥ぎ取った樹液を煎じて飲むと叶う」という噂が広まり、信仰を集めたようです。

また、縁切りの霊験あらたかぶりに「この木の下を嫁入り行列が通ると不縁になる」という話もまことしやかに広まりました。

幕末・文久元年(1861年)、皇女和宮が徳川家茂に嫁ぐ際にも「縁起が悪い」とのことから、この木のある場所をわざわざ迂回したという逸話もあります。

画像:宮親子内親王『幕末・明治・大正回顧八十年史』public domain

初代の縁切榎は、明治17年(1884年)の板橋宿大火で焼失してしまったため、二代目が植えられたそうです。

さらに、昭和47年(1972年)の周辺再開発社地から現在地に遷座、二代目の榎が伐採され、新たに現在の縁切榎(三代目)が植えられることとなりました。

境内には「縁切り」を願うたくさんの絵馬が

画像:縁切榎がある榎大六天神の境内。左は絵馬の自動販売機(撮影:桃配伝子)

縁切榎は「榎大六天神」という神社です。

マンションの横にあり、手前には「史跡縁切榎」の黒い石碑が立っていて、鳥居を潜った細長い参道の奥に小さな祠があります。

境内に入ると、右手に「絵馬の自動販売機」が設置され、左手の絵馬掛所(えまかけどころ)には、絵馬がぎっしり並んでいます。

絵馬には個人情報が書いてあるために、それを隠すための目隠しシールが付いているのもうれしいところです。

絵馬は1,000円で販売されていますが、「板橋 縁切榎」と彫られている木札の根付け(お守りストラップ)も付いてきます。

縁切り榎

画像:境内にある小さな祠。絵馬掛所にはぎっしり縁切りを願い絵馬が(撮影:桃配伝子)

また境内には、先代の縁切榎がはめ込まれている石碑も祀られていて「ご神体なので削らないでください」の注意書きがあります。

江戸時代の「榎から剥ぎ取った樹液を煎じて飲むと叶う」という噂から、縁切榎の樹皮を剥いで持ち帰ろうとする人がいるからでしょうか。三代目の、縁切榎の根元にも簾が巻きつけられていました。

画像:境内にある先代の縁切榎と思われる木の塊をはめ込んだ石碑(撮影:桃配伝子)

縁切榎の隣の蕎麦屋「長寿庵」

画像:縁切榎の向かいにある「長寿庵」(撮影:桃配伝子)

縁切榎を祀る「榎大六天神」と小道を挟んだ向かいに、「長寿庵」という昔ながらの佇まいの蕎麦屋さんがあります。

店内には、『東京怪奇酒』(※)で知られる、漫画家でエッセイストの清野とおる氏の色紙がたくさん飾ってあります。

※『東京怪奇酒』:清野とおる氏が、友人・知人・他人から直接聞いた恐しい「怪談」の現場に実際に足を運び「酒」を飲む……という話。

この長寿庵も、『東京怪奇酒』の続編『ゾクッ 投稿怪奇酒』に登場するそうです。

店頭には「名物 榎蕎麦」ののぼりがありますが、鰹節・かいわれ・白胡麻・茗荷をまぜた薬味がたっぷりの冷たいお蕎麦だそうです。そのほかにも、さまざまなメニューが並んでいました。こちらの長寿庵さんでは榎大六天神の管理をされているそうです。

縁切榎を訪れて

画像:縁切榎の絵馬を買うと、木彫りのお守り根付けが付いてくるのも嬉しい(撮影:桃配伝子)

今回、筆者がこの榎大六天神に訪れたのは、

「再発を繰り返しなかなか縁が切れない病気と縁を切りたい」と縁切り祈願にここを訪れ、絵馬を書き、お守りをお財布に付けていた知人から「嬉しいご利益を得た」……という結果を聞いたからです。

榎大六天神に病気との縁切りを祈った翌日。
担当医から「再発の疑いあり」と伝えられていた病巣が、さらなる精密検査の結果で「まったく問題ないもの」と判明したそうです。

「ご利益をいただいた!」と喜んでお礼参りにいくというので、筆者も同行させてもらいました。

「悪しきものとは縁をきり、良縁を結びつけてくれる」という縁切榎。

次回は、自分の縁切りに詣でたあとに「名物 榎蕎麦」をいただき、仲宿商店街をぶらぶらしてみたいと思います。

画像:板橋区登録文化財「縁切榎」の説明書(撮影:桃配伝子)

参考:板橋区公式HP「縁切榎」

 

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アパレルのデザイナー・デザイン事務所を経てフリーランスとして独立。旅行・歴史・神社仏閣・民間伝承&風俗・ファッション・料理・アウトドアなどの記事を書いているライターです。
神社・仏像・祭り・歴史的建造物・四季の花・鉄道・地図・旅などのイラストも描く、イラストレーターでもあります。

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