「ラーメン二郎はラーメンではなく、ラーメン二郎という食べ物である」とは、あるマニアの有名な言葉だが、私も初めて二郎を食べて理解した。理解というより「実感した」といったほうがいいだろう。
あの中毒性はとても高く、食べ終わった後の「食べ過ぎた」という後悔を上回る「食べたい」という欲求が湧いてくるのだ。でも、二郎は限られた店舗しかない。
そこで欲求を満たしてくれるのが「インスパイア店」である。
まぁ、簡単にいってしまえば二郎のマネなのだが、「二郎欲」を満たすには十分である。
ラーメン二郎
【※ラーメン二郎三田本店のラーメン】
黄色い看板が目印のラーメン二郎は、東京都港区の三田に本店がある他、暖簾分けなどで首都圏を中心に店舗がある。黄色や赤、オレンジといった暖色系は、見るだけで食欲増進の効果がある。それを知ってか知らずか、二郎の黄色い看板を見るだけで体が吸い寄せられてしまう。
慶應義塾大学の近くという好立地もあって、多くの学生たちの腹を満たしてきた二郎だが、その歴史は長く、創業は昭和43年(1968年)、目黒区の都立大学駅の近くにオープンした。店主の山田拓美はラーメンに関する知識がなく、近隣の中華料理店での修業や客のアドバイスで独自の味付けになり、三田に移転したことから一気にその味が口コミで広がる。
ちなみに、本来の店名は「次郎」だったが、移転の際にペンキ屋のミスで「二郎」と書いていまい、それ以後「ラーメン二郎」となった。
なお、ラーメン二郎の名は山田により商標登録されている。
急増するインスパイア系
【※インスパイア系の二郎風ラーメン】撮影:gunny
近年、ラーメン二郎の人気にあやかり、独自にその味を再現して提供するインスパイア系の店が増えている。なかには、二郎と双璧をなすラーメン界の大御所「家系ラーメン」を提供する店でも二郎風ラーメンをメニューに載せているくらいだ。
本家のファンに言わせれば「邪道」なのだが、二郎ではジロリアンと呼ばれる熱心なマニアが「ロット乱しはギルティ」などと勝手なルールを自らに課して、初心者がそれを破ると冷たい目で見られるといった現象がしばしばメディアに取り上げられ、慣れない客の足を遠ざける結果にもなっていた。
ちなみにロットとは一回に提供されるラーメンの個数で、ジロリアンからすると全員が同じタイミングで食べ終わらないとギルティ(有罪)として扱われる。
実害はないが、感じのいいものではないし、店側が決めたルールでもないのだが、注文のコール(後述)と並んで、初心者には厚い壁を感じさせるものだ。
二郎系メニューの基本
【※インスパイア系ラーメンのチャーシュー】撮影:gunny
そこでインスパイア系の話になるが、二郎風でもジロリアンは避けるため、ラーメンは似ていても客層も店員も穏やかなのがいい。「ヤサイマシマシアブラカラメ」といった呪文のコールも、分からなければ店員が教えてくれるし、ロットなどの迷惑なルールもない。接客がソフトで敷居も低い。
もちろん、二郎やすべてのジロリアンが悪いということではなく、「興味があるけどディープな店で抵抗がある」といった人にはインスパイア系をオススメしたいというだけだ。
基本、どの二郎系(二郎も含む)は、豚骨をベースとした醤油味だが、豚骨が際立ち白濁したスープが特徴である。どちらかと言うと味は薄めで、コールの時に味を好みに調節できる。熊本ラーメンに近い豚骨ラーメンに醤油を加えた感じといえばいいのだろうか。一般的に麺の量が多く、そこに野菜などが乗せられるので全体のボリュームはかなりのものとなる。
二郎の場合、「小盛り」で普通のラーメンの大盛り、「大盛り」で普通のラーメンの大盛り2杯分ほどとなっている。
インスパイア系でも二郎ほどではないが、麺の盛りが多いので、自信がないときは「麺少なめ」「麺半分」とお願いすればいいだろう。
チャーシューはほろほろの分厚くて味の薄いものが基本である。
トッピングの注文方法
【※トッピングのニンニクマシ】撮影:gunny
二郎系では、無料トッピングを追加することを「コール」と呼ぶ。
麺が茹で上がると「ニンニク入れますか?」と店員が聞いてくるのだが、これは「トッピングはどうしますか?」という意味だ。
トッピングは4種類あり、これが呪文の正体である。
○ニンニク(刻み)
○ヤサイ(茹でたもやしとキャベツ)
○カラメ(醤油の量を増やして味を濃くする)
○アブラ(背脂)
これらを組み合わせて、ニンニクや野菜が物足りないときには「マシ」や「マシマシ」と量を指定できる。
もちろん、始めは「そのままで」とか「お願いします」という返事でも大丈夫。二郎に抵抗があると感じる人の多くが、その量とこのコールの複雑さだが、どちらも自分好みにカスタマイズするだけなのだから、まずはインスパイア系で慣れてみるのがいいだろう。
例えば、カラメにして、ヤサイとニンニクを多くしたいときには、
「カラメニンニクヤサイマシ」という具合になる。
秘儀・天地返し!
【※ラーメンをより美味しく食べるための天地返し】撮影:gunny
二郎系には食べ方にも流儀がある。所詮はラーメンなので、好きに食べるのがいいのだが、理にかなった食べ方もある。
それが「天地返し」だ。
これは、ラーメンが提供されたらすぐに下の麺をヤサイの上に引っ張り出すことを指す。麺の量が多いので、食べ終わるまでに少しでも麺が伸びるのを防ぐとともに、味付けのないヤサイをスープに浸して味を絡ませるという、ふたつの意味があった。カラメをコールした場合、ヤサイの上に醤油を掛け回すので、スープの味を濃くするという効果もある。
また、ニンニクは家系の摩り下ろしニンニクとは違って、生のみじん切りのため、早くにスープに沈めないと辛さが残るので、出来る限りスープに混ぜたい。
こうして、自分好みの味と、さらに美味しくなる食べ方を合わせて二郎という食べ物が完成する。
最後に
今回、本家や直系だけだなくインスパイア系も紹介したのは、本文中にもあるが、店員の対応がソフトなことと、二郎系を地方でも味わえるからだ。
困ったことに二郎の味は中毒性が高いが、文章で伝えるには難しい味である。
ちなみに、二郎デビューにオススメなのは、新宿歌舞伎町店だと考える。理由は、場所柄あまり二郎を知らなくても入る客が多いこと(逆にジロリアンの評価は低いらしい)、他の店舗がほとんど歓楽街から外れたなかで、アクセスが良いことなどが挙げられる。
チャンスがあればぜひ食べてもらいたい。
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