日本各地で夏の暑さが感じられるようになった。
蒸すような高湿度の暑さに、じりじり焼かれるような直射日光。
汗をかき、寝苦しい夜も増えてくる中、コロナウイルス以外の健康管理も必要になってくる。
暑さが引き起こす致命的な病気あれこれ
さて、夏の暑さが引き起こす病気といえば筆頭に上がるのが 熱中症である。
熱中症とは、特に夏季の高温環境下などで身体に熱がこもって起こるトラブルの総称を指す。
強い日光を炎天下で受けることによる「日射病」
高温環境下で大量に汗をかき、塩分が足りなくなると起こる「熱痙攣」
同じく、大量に汗をかき脱水症状とともに体が熱を閉じ込めてしまう「熱疲労」
そして熱疲労が更に悪化し高体温となり、命の危機がすぐそこに迫った「熱射病」が含まれる。
熱中症に関しては油断せず、誰でも等しく注意したいが、中でも特にリスクの高い人もいる。
体力が乏しかったり体調がすぐれない人、太り気味の人は不調を来たし重症化しやすいので、用心しすぎるくらいで丁度よい。
熱中症に注意が必要なことはほぼ常識となっているが、意外な病気も命にかかわる夏の生体トラブルとなっている。それが脳梗塞なのだ。
脳梗塞のメカニズムとそのリスク
脳梗塞とは、脳の血管が詰まって脳の組織が死んでしまう疾患だ。
脳梗塞が起こると、運動機能や感覚の障害や言語障害、意識障害などの異常が起こり、時には生命の危機に直面する。重症でないと思われても急に悪化する可能性があるため、救急車での受診が必要となる。一大事だ。
一見、脳の病気ということもあり、季節などは関係なく一年中注意すべき疾患にも思われがちだが、脳梗塞に限っては夏(6〜8月)になると発症リスクが急激に上昇する。
何故夏にハイリスクになるのか。それには脳梗塞のメカニズムが関係している。
脳梗塞は、何らかの原因で脳血管が詰まることによって起こる。
原因の一つは、心臓内で形成された血栓が脳血管まで流れて詰まらせる「脳塞栓症」。
もう一つは、脳血管自体に狭窄や血栓が発生して起こる「脳血栓症」。
いわゆる脳梗塞の半数以上を占めるのは前者だが、比較的若く元気な層でも急に発症したりするのが後者の「脳血栓症」だ。
これが夏場に起こりやすいパターンだ。
そこそこ若くても、不摂生を重ねて生活習慣病予備軍になっている人は少なくない。
実は高血圧で血管壁にダメージが蓄積されていたり脂質異常症で血がドロドロの人でも表面上は元気に見えていたりする。
そうしたハイリスクな健康状態に夏場の脱水症状(水分不足)が重なると、血液のドロドロに追い打ちがかかる。
水分が少ないと血流も弱まり、血管は更に詰まりやすくなるのだ。
こういったリスクにどう対処すればいいだろうか。
日頃の健康管理は勿論だが、やはり即効性があるのは「暑さ対策」だ。汗をかきすぎないよう、できるだけ体温調節をする。
そして汗をかいたら、いや、かく前に適切な水分補給をしていきたい。
暑さに「冷感グッズ」は逆効果
さて、体や脳を暑さから守るため、可能であれば冷房や扇風機をつけることが必要だ。
もし適切な空調設備がない場合には、体に冷たいものを当てる、冷たいものを飲み食いするといった方法で人は涼を得ようとする。
過度の暑さは人体や精神にダメージを与えるため、必要に応じてしっかりと冷やさなければいけない。
過去の猛暑や酷暑の影響でドラッグストアの店頭に並ぶようになった商品がある。それは「冷感グッズ」だ。
発熱時に使用するジェル状シートの他、クール感が続く汗拭きシート、体やシャツに噴射する形の冷感スプレー等、様々な商品が売れた。
特に炎天下でもスーツで外回りをするビジネスパーソン層にとっては、ワンプッシュで持続するひんやりメントール感と清潔感のある香りが纏えるスプレーは重宝された。
しかしここで気をつけたい。冷感グッズは、実際には体温を下げることができない。冷感はあくまで「感」であり、皮膚の感覚がヒンヤリしたように錯覚するだけだ。
皮膚が錯覚すると、むしろ体が体温を下げづらくなる。つまり逆効果になってしまう。
あえてクールな肌感を得たい目的であればともかく、暑さ対策として冷感製品を買ってしまった人は過信しすぎないように注意が必要だ。
適切な水分補給で危機を未然に防止
熱中症しかり脳梗塞しかり、夏の体調管理はやはり水分補給が第一だ。
とはいっても一度に水をがぶ飲みしても吸収しきれず身体に負担がかかる。
汗や体からの蒸発、排尿などで出ていく水分は一気にではなくこまめに行っていくのが正解だ。
また、汗のしょっぱさとして流出していくミネラル分の補給も生命維持に欠かせない。
薄めたスポーツドリンクや冷やし昆布茶を飲むのもおすすめできるが、水とともに塩入りの飴やタブレットを食べるのも簡便で良い。
気をつけたいのはビールだ。暑い夏はキンキンのビールが最高に美味くなる。特に豪快な男性陣は、水分補給だと言ってグイグイおかわりしがちだ。
しかし、ビールは低濃度とはいえアルコール飲料であり利尿作用がある。つまり飲んだ水分以上に体外へ排出している可能性が高い。
今日一日水分摂取が少なめだった、あるいは何となく体調がすぐれないという人は、ビールをグイグイいくよりもノンアルコールビールやウーロン茶をチョイスしていきたい。景気のいい飲み二ケーションも大人のたしなみではあるが、それ以前に体のパフォーマンスを維持する、健康管理をして周囲に迷惑をかけない事が社会人としての基本だ。
今回のコロナ危機によって医療現場や各種サービスは大きな負担を強いられ、それは今も続いている。
助かる命を助け必要な人にケアが行き届くためには、私たち一人ひとりの体調管理が重要だ。
夏の健康管理法、今一度確認して夏本番に備えていきたい。
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