日本最大の詐欺事件
2019年現在でも、日本でも最大の約2,000億円の被害総額と言われている巨額詐欺事件が豊田商事事件です。
この事件は1980年代に社会問題ともなった、主に老人を狙った悪質な詐欺でしたが、会長を務めた首謀者の永野一男が多数のマスコミ・報道人の衆目の前で刺殺されるという衝撃的な結末を迎えたことでも知られています。
現在でも続く投資詐欺の原型とも言うべきこの事件について、改めて振り返ってみました。
金を餌にしたペーパー商法
豊田商事事件は被害者の数が3万人から4万人とも言われ、その被害額の合計は実に2,000億円にも及んだとされています。
これだけの人数、被害額がどのようにして造られたかといえば、俗に「ペーパー商法」と言われるやり方でした。
これは被害者に金(ゴールド)を販売したとしながらも、実際の「金」そのものは渡さずに豊田商事に預けるという形をとらせ、豊田商事が被害者の代わりに運用してその利益を還元すると謳ったものでした。被害者に「金」の代わりに契約証券(純金ファミリー証券と呼称)だけを渡したことから紙=ペーパー商法と呼ばれました。
契約証券は渡すものの実際には金の購入はしておらず、代金を巻き上げるという手口の詐欺商法でした。
電話勧誘からの訪問営業
豊田商事は女性社員を使用した無差別な電話勧誘で被害者を募っていきました。
もちろん電話だけで契約できる訳ではなく、あくまで見込みとなりそうな老人を見つけ出すのが目的です。
ここで押しに弱そうな老人を抽出し、今度は実際の営業担当がその自宅に押し掛けて強引に契約に及ぶというのがその基本的な営業手法でした。
この営業で長時間に及ぶ粘りで根負けさせて契約させる押し売りはもちろん、独居の老人に対して情に訴える手法も駆使していたと言われています。例えば話し相手になる、近くまで来たので寄ってみたといった被害者に親近感を与えて同情を引く手口です。
こうしたやり方は、なにも豊田商事だけではなく様々な悪徳商法にも共通する手法ですが、豊田商事の場合これを大掛かりに、会社組織として徹底して実行したものと言えました。
ペーパー商法自体は合法
実際には、被害者の家族が不審に気付いて弁護士に相談するという動きも早い時期からあったようです。
しかし「ペーパー商法」自体は実際に「金」が購入されているのであれば詐欺にはあたらないため、その立証が必要としてすぐには事件化されない状態にありました。
また豊田商事が巧妙だったのは、明らかな詐欺と指摘されないよう、「金」の運用益と称する金額を実際に被害者に支払っていたことがあげられます。このことで被害額・人数が雪ダルマ式に膨れ上がっていきました。
しかしその支払いの実態は「金」は未購入なので運用もできるハズもなく、新たに契約させた被害者から騙し取った現金を充当したものでした。
永野会長刺殺と今も継承されている手口
しかし遂にその強引な勧誘手法が社会会問題となり、司法が重い腰を上げて捜査に乗り出す事態となりました。
そして前述のように1985年(昭和60年)6月18日、豊田商事の会長であった永野一男が大阪の自宅マンションで逮捕秒読みとして報道陣が詰めかけている中、突如乱入した自称右翼を名乗る男二人に刃物で刺殺されるという衝撃的な事態を招きました。
犯人らは、「被害者から殺害を頼まれた」と述べ、マンションを出たところで警察に逮捕されました。
この事件をきっかけとして豊田商事は終焉を迎えましたが、騙し取られた金額が全額戻った訳ではないこと、この後にも豊田商事の手法を踏襲した詐欺が跡を絶たないことなど、日本の社会に大きな禍根を残しました。
また豊田商事に務めていた人物らが直接的に新たな詐欺事件を引き起こすなど、その詐欺のノウハウは今でも継承されています。
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