緊急事態宣言解除後もまだまだコロナ禍が尾を引く中、制作物や商品の授受を自宅で行う機会が多くなった人も増えたようだ。
ちょっとした通信販売や手紙、事務書類のやりとりなど、私たち国民は日本郵便株式会社のサービスには生活の少なからぬ部分でお世話になっているといえる。
通常、郵便物は本名でしか受け取れない、届かない
さて、そのように生活の重要部分を担っている郵便サービスだが、一つ落とし穴がある。
それは「通常、郵便物は本名でしか受け取れない」という点だ。
宅配便は配達担当者が把握さえすれば本人以外でも受け取ることができる。しかし郵便物の場合にはそれができない。もし本名以外で郵便物が出されれば、差出人の手元に戻されてしまう。
実際に10年ほど前、筆者が一人の友人に本名宛てでない年賀状を送った経験がある。
友人(仮名:渡辺 太郎)は勝手知ったる仲だったので、ある年、ふざけて宛名を変えてみた。
「渡辺 マンダリンオリエンタル太郎 様」
住所は正しい。苗字も合っている。宛名もギャグで書かれているということは郵便局の方でも想像できそうなものだが、局で返送されてしまい、ついぞギャグが友人に届くことはなかった。
「あてどころに尋ねあたりません」という、持って回った郵便局の判子が虚しく捺されていた。
「想像すれば分かるだろう」という考えは郵便物には通用しない。冷徹なシステムの世界がそこにあった。
たかが、されど年賀状一枚。無責任な配達はできないという断固たる態度を取るのが郵便局なのだ。
それで問題ない、本名宛ての郵便物しか届かない、という人も多いだろう。しかし実は、このシステムでは困るという人も少なくない。ペンネームや芸名などを使って仕事をしているクリエイティブな人々は、令和となった現在、更に身近な存在となっている。
そうでない一般の人々の場合でも、様々な事件や詐欺、個人情報漏洩のニュース、治安悪化の噂を耳にする昨今、セキュリティ面が気になってくる人も少なくはない。
今やYouTuberへのストーキングや同人作家への殺害予告など、頻繁ではないが珍しくもない時代になってきたのだ。
郵便物を本名以外で受け取る裏技
では、どんな郵便物も本名で送ってもらうしかないのだろうか。
実は、本名以外でも郵便物を受け取ることができる裏技があるのだ。
・無効技:表札や郵便受けに使いたい名前を書く
素人考えでは、「郵便配達の人が見て分かれば届けてもらえるだろう」と思いがちだ。
しかしこの認識は正しくない。
いくら表札や郵便受け、玄関の分かるところに本名以外を書いてもその宛名の郵便物が届くことはない。
・有効裏技:転居届で使いたい名前を住所登録する
郵便局関係者によれば、郵便物の配達はすべて「台帳」に従ってなされているという。
聴きなれない用語だが、つまりは郵便局側に住所と名前のデータベースが存在しており、そこに届け出されている情報だけが正しい、と郵便局職員は判断しているのだ。
では、どのように本名以外を台帳に登録してもらうのか。
それには「転居届」を郵便局でもらい、ペンネームならペンネームの人物を「自分の現住所に転入している」ことにして記入する。
そして、「そのペンネームの人物は自分と同一人物である」ことにして提出する。
これだけだ。
あまり知られていない方法なので届け出が成功しているか不安になるかもしれない。
その場合は書き方も含め、郵便局の窓口で説明してもらおう。
「ペンネームを使って郵便物を受け取りたいのですが」と切り出せば、怪訝な顔はされない。
・例外裏技:通称名で年賀状等を出してもらう
さて、これは例外中の例外だが、実は「本名でない名前宛てで出された郵便物も配達されるケースがある」。
例えば、「常識的に考えて変ではない名前を改名したい時」、通称名を使った郵便物の受け取りが必要になる場合がある。
更に具体的に言うと、性同一性障害を持つトランスジェンダーであり、出生時の男らしい/女らしい名前に苦痛・違和感を覚えて改名しようとするような場合、よく行われる方法だ。
例えば虹 熊男さん(仮名)は男性の体をしているが性の自己認識は女性だ。
いかにも男らしい名前で認知されることがとても辛く、日常生活がままならない。
熊男さんは心療内科で性同一性障害の診断書を貰っており、それを根拠に家庭裁判所に名前の変更(女性名:虹 熊子)を申し立てたいと考えている。
確かに性同一性障害であれば、男性名から女性名に変更する理由として妥当だ。
しかしそれだけでは根拠が弱いと考え、「通称として永年使用した」実績を作ろうと考えた。
理解のある熊男さんの友人知人は、年賀状や暑中見舞を「熊子」宛てで投函し、全て熊男さんの手元に届いた。これらの郵便物は、後に名前の変更時に役立った。
こういったケースはトランスジェンダーの間では一般的に行われているようだ。
「台帳」に記載のない名前で何故すんなりと配達されるのか。それは謎に包まれている。
本名以外で郵便物を受け取ることは可能
以上の裏技を活用すれば、本名以外の名義で郵便物を受け取ることは可能だ。
少し手間や不安はあるが、正しい裏技を有効に使えば生活の幅が広がる。
使う名前が変われば気持ちや印象も変わる。
この裏技が一人でも多くの人の役に立つことを願っている。
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