平安時代

源義経が逆落としをしたのは本当なのか

源義経が逆落としをしたのは本当なのか

2005年の大河ドラマ「義経」の第1話のオープニングシーンはいわゆる「鵯越えの逆落とし」といわれるシーンでした。源義経といえば、やはり、背後の山から馬で駆け下りて奇襲する「あの場面」が、思い浮かびます。ですが、実際にそんなことができたのでしょうか。調べてみました。
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「平家物語」覚一本の記述

いわゆる「鵯越えの逆落とし」といわれる場面は、「平家物語」の標準的なテキストである覚一本にはこんなふうに出ています。

御曹司是をみて「馬どもはぬしぬしが心得ておとさうには、損ずまじいぞ。くはおとせ、義経を手本にせよ」とて、まづ卅騎ばかり、まッさきかけて落されけり。大勢みな続いておとす。後陣におとす人々のあぶみの鼻は、先陣の鎧甲にあたるほどなり。(義経はこれを見て、「馬達は乗るものがそれぞれ注意して坂を落とせば傷つくことはないだろう。さあ、落とせ。私義経を手本にしろ。」と言って、まず30騎ほどを連れて、先頭をかけて馬を攻め落とした。たくさんの軍勢がみな続いて馬で駆けおりる。後ろ側の陣でくだる人々のあぶみの先は、先陣の鎧甲にぶつかるくらいである。)

兵ども、みなつづいておとす。ゑいゑい声をしのびにして、馬にちからをつけておとす。あまりのいぶせさに、目をふさいでぞおとしける。おほかた人のしわざとは見えず。ただ鬼神の所為とぞ見えたりける。(武士達はみな続いて馬で駆け下りた。えいえいという声をひそやかにかけて、馬を力づけながら落としていく。あまりの恐怖に目をふせいで馬を落とした。まったく人間のすることとは思われない。ただ鬼神のなすわざだと見えた。)

巻九「坂落」の記述です。この奇襲を受けて平家の陣は壊滅的被害を受けます。

この「鵯越えの逆落とし」といわれる場面は「一の谷の合戦」で登場します。

 

「一の谷の合戦」とは?

では、そもそも「一の谷の合戦とはどういう戦いだったのでしょうか。

木曾義仲が京に入ったのに伴って、平家は京を離れて、地方で勢力を立て直すことを目指します。

平家は安徳天皇を連れて、四国の屋島に辿り着きます。一方でその木曾義仲も都でうまくいかないままに、結局同じ源氏の義経らの軍勢に討たれてしまいます。

その間に徐々に勢力を取り戻した平家は、讃岐の屋島から出て、福原に移り、一の谷に要塞を築き、京を再び伺う姿勢を見せています。

源範頼、義経は後白河法皇から、平家に持ち去られたままになっている三種の神器を取り戻すよう命じられ戦いに挑む、というのが一の谷合戦の構図です。

源範頼は大手(正面側)の将軍として、義経は搦め手(背後側)の将軍として京を出発します。

途中で義経は一万騎の軍勢を二手に分けて、七千騎を土肥次郎に任せて一の谷の西にさしむけ、自らは三千騎を率いて「一の谷の後ろ」とされる「鵯越」に向かいます。

一方、大手の源範頼は、生田の森に五万騎を率いて構えています。

ですから、一口に「一の谷の合戦」と言っても戦場となった場所を大きく3つに分けて考える必要があります。

A  生田の森(大手) 平知盛・重衡ら VS 源範頼ら
B1 一の谷の西側(搦め手の正規部隊)平忠度・敦盛ら VS 土肥次郎実平ら
B2 一の谷の北側(搦め手の奇襲部隊)平教経・通盛ら VS 源義経ら

ちなみにこのA・B1・B2が現在どこに当たるのかは諸説があります。

Aは現在の神戸三ノ宮駅付近の生田神社のある辺りとされます。

Bについては須磨浦公園の付近一帯とし、B1を塩屋とし、「逆落としの行われたとされるB2は、須磨浦公園からロープウェイでのぼることのできる位置にある「鉢伏山」とする見方が主流です。(B2を現在でも地名として残っている「鵯越」と考える説も主張されています。)

この辺りを詳しく検証していきます。

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