自身が最期を迎えるとき、残された家族や友人にどんな想いを伝えておきたいかを改めて書き留めるとしたら、どんな言葉を綴るだろうか。
共に過ごしてきた日々への感謝の気持ち、今後の人生を謳歌してほしいという激励の言葉など様々な心情が溢れてくるが、きっと最も多い意見は、自身が旅立った後に執り行われる葬儀の形式や財産分与、代わりに引き継いでほしい祭祀継承といった現実的な事柄が中心になるだろう。
最近では「エンディングノート」という名称で『もしものとき』に備えた前向きな死生観を自らノートに記す傾向も強くなり、自分自身が亡くなった後のことを生前に書き留めておくことに躊躇しない流れも見られる。
目次
終活の誕生と共に話題を集め始めた「エンディングノート」
就職活動の略語である『就活(しゅうかつ)』の音にかけて、生涯を終える最期の日までにやり遂げる活動を意味する『終活(しゅうかつ)』という言葉が2009年頃に日本で誕生した。
ある雑誌記事のタイトルに起用されたことで、流行語大賞にも選出され、『終活』という言葉は、人々の『死』に対する考え方を楽観的なものに変化させた。
自らの死後、残された家族の負担が減ることを強く願う気持ちから、日本では『終活』への心掛けが強まっているが、その『終活』の取り組みの中で、注目を浴びているのが「エンディングノート」である。
『エンディングノート=遺言書』と考える人もいるが、「エンディングノート」と遺言書には大きな違いがある。
自身の生涯を振り返りながら、手紙や日記のような形式で自由に記述できるのが「エンディングノート」の特徴であり、かしこまった言葉で書く必要がないため、年齢を問わず気軽に書きやすいところが最大のメリットとされている。
それに比べて遺言書は、記述した文章に法的措置が講じられるため、記述形式や押印、場合によっては公証人の立ち会いなど多くの規則に従って作成する必要がある。
近年では、家族関係や生活環境に合わせ、財産分与が円滑に進むように法的に管理する遺言書と、親族への想いと希望だけを綴った「エンディングノート」の2つの利点を並行して作成する方法も珍しくなくなった。
豊富なデザイン性も「エンディングノート」人気が続くポイント
カラフルな色合いに、幅広いサイズのバリエーション、人気キャラクターを使用した種類豊富な「エンディングノート」は、書店や100円ショップのステーショナリーコーナーで手軽に購入することができる。
ワンコインで購入できるリーズナブルなものでも、記入項目やページ数が充実しているものが多く、製造会社によっては『もしもノート』や『じぶんノート』という名称で「エンディングノート」を作成しており、躊躇いなく身近で手に取りやすい演出もしっかりされている。
「エンディングノート」を開くと、自身のプロフィールを記入するページから始まり、家族構成、交友関係、健康状態、財産の内訳、そして自身の死後に引き継いでほしい事柄を記入するページへと続いていく。
記入形式に一定の規則がない「エンディングノート」だからこそ、誰が読んでも一目で分かる書き方が求められるが、店頭に並べられている「エンディングノート」は、各項目ごとにページも分かれているため、記入する側も迷うことなく作成できるので安心だ。
お気に入りのノートで全て手書きで作成したい人も、充実した市販の「エンディングノート」の内容を一度、読んでみて欲しい。
「エンディングノート」にも追加されたデジタル終活とは!?
「エンディングノート」の内容を読み進んでいくと、『終活』ブームが始まった当初にはなかった『デジタル資産』という必要項目が加わっていることに気付く。
パソコンやタブレット、スマートフォンのパスワードから、加入しているITサービスのアカウント、撮影した写真のデータの情報を詳細に記入できるページだ。
これらは、デジタル化が進んだ現代に合わせて誕生した『デジタル終活』とも呼ばれ、ネット上に残る個人情報を断捨離することが目的とされている。
今後は、身分証明書や決済方法も全てデジタル化され、生活に必要なものがほぼネット上での管理という状況に変化していくことも予想されるため、自身の『デジタル資産』の把握はとても重要となってくるはずだ。
ただ、ネット上での悪用を防ぐために、「エンディングノート」の作成者が健在のうちは、安易に全てのパスワードを記入しないよう注意して頂きたい。
「エンディングノート」を通して見つかる今後の人生の歩み方
更新した日付の記入さえあれば何度でも書き直しが可能な「エンディングノート」は、年を重ねる1年ごとに更新していく楽しみもある。
誕生日を迎えるたびに内容を更新する習慣を身に付けている人も多く、1年の間に大きく変化した自分自身の考えや想いを改めて見つめ直す機会となっているようだ。
かけがえのない家族へ向けて「エンディングノート」を綴るその瞬間は、自身の『エンディング』が悔いのない誇れるものであって欲しいと再確認できる時間でもある。
未だやり遂げられていない、叶えられていない夢にも積極的に挑戦する切っ掛けにも繋がる。
歩んできた人生を映し出す「エンディングノート」は、家族のために書き記す以前に、自分という人間がどんな人生を送っていきたいのか、また送っていこうと決めていたのかを再び思い出させてくれる、生きるヒントそのものであると思う。
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