古代文明

「バベルの塔」は実在するのか?モチーフとなったジッグラトを調べてみた

バベルの塔
<出典 wikipedia>

 

『バベルの塔』の伝説

旧約聖書が伝える『バベルの塔』の物語はこうだ。

神は地上に降り立ち、人々が神の世界へ近づこうとしている姿を見て驚いた。

天にも届きそうな塔を建てていたのだ。

「人々は同じ言語を話しているから、このような思い上がったことをしでかした」と神は言い、二度とこのようなことができぬよう人々の言語を混乱させ、世界各地へ散り散りにした。

そして、人々は言語も地方ごとに異なったものを使用するようになった。

ヘブライ語で混乱を意味するバラル。神が人々の言語をバラルさせた為、この街は『バベル』と呼ばれるようになる。

野心的な人間と、それを抑えつけ罰を下す神の姿は、現代人にとっては神話でしかない。

しかし、この伝説自体にはモデルがあった。

シュメール人が建国した新バビロニア王国の首都・バビロンに建設された多層式建築物『ジッグラト』である。

「ジッグラト」はシュメール語で、「高い峰」を意味する。

「バベルの塔」と「ジッグラト」に、どのような関連性があるのかを紐解いていく。

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バベルの塔
<出典 wikipedia>

 

洪水が生んだジッグラト

『メソポタミア』とは、ギリシャ語で「両河の間」の意味を持つ。

現在の中東に位置するティグリス川とユーフラテス川に挟まれた肥沃な土地から、その名のとおりメソポタミアで世界最古の文明は誕生した。

このふたつの川は、急激な増水と流路変更による激しい洪水をもたらした。

そこで神殿を守るために、洪水に備えて高く造られた建造物がジッグラトとなったという説が有力である。

 

シュメール人はもともと山岳地帯に住んでいたが、その後、肥沃な平地へ移住した。

山上で神々へ祈っていたため、平地でも神々により近い場所で祈るために神殿を高台に造ったともいわれている。

「人々が神の世界へ近づこうとして建てた」バベルの塔の物語の起源がここにある。

 

バベルの塔
<【ウルのジックラド】 出典 wikipedia>

 

バビロンの塔 と バベルの塔

ジッグラトはウル、ウルク、ラガシュ、バビロン等、メソポタミア地方の大都市に建設されており、わかっているだけで30数か所が確認されている。

その中でもっとも有名なものがバビロンのジッグラトである。

その名は『エテメンアンキ』。

シュメール語で「天地の基礎となる建物」という意味だ。

 

エテメンアンキは、紀元前7世紀頃にナボポラッサル王が建設に着手し、その息子ネブカドネザル2世のときに完成した。

この親子2代で完成した巨大ジッグラトこそが『バベルの塔』のモチーフではないかといわれている。

「バビロン」が「バベル」のもととなった言葉というのも納得がいく。

 

バベルの塔
<バビロンの塔の構造 出典 wikipedia>

 

現代では高層ビルを建設することは当たり前となっているが、今から4000~5000年前に高層建築を行う技術があったというから驚きだ。

では、どのような構造だったのか。

 

バビロンのジッグラトである『エテメンアンキ』は、最下層は正方形で一辺がおよそ90メートル、全高90メートルとされている。

台を7層積み重ね、最上層は神殿が建てられていたという。

建築材料は日干しれんがと、焼きれんがだ。

日干しれんがより、焼きれんがの方が強度は高いが、時間と手間がかかったため、たいへん貴重なものだった。

そこで内部は日干しれんがで積み重ね、焼きれんがで表面を覆うに至った。

 

当時の世界中心都市であるバビロンを、エテメンアンキで示したネブカドネザル2世はこう言った。

「この大いなるバビロンは、わが大いなる力を持って建てた王城である」。

 

バベルの塔
<古代王の愛の形「バビロンの空中庭園」 出典 wikipedia>

 

ジッグラトのなかでも特異なものがある。
これもまた伝説となっている「空中庭園」だ。

 

ジッグラトの全層上に土を運び、多くの木々を植えた。
地上からみるとまるで庭園が浮いているかのように見えたとされている。

 

この空中庭園もまたネブカドネザル2世が建設に携わった。
なぜこの空中庭園を造るに至ったかというと、妃となったアミュティスのためである。

バビロンの北方にある緑豊かな山国のメディアという地域の王女アミュティスがネブカドネザル2世の妃として迎えられるが、アミュティスは乾燥した平地であるバビロンに愛着をもてなかった。

そこで、ネブカドネザル2世は妻をなぐさめるために、故郷であるメディアをイメージして空中庭園を造らせた。

乾燥地帯のバビロンで一年中青々と草木を維持するために、ユーフラテス川の水をくみ上げるポンプを造り、上層階まで水を送るという高度な技術まで開発させた。

確証のある遺跡は発掘されておらず言い伝えだけだが、古代の王が妻を想う形が伝説として残っていることは事実である。

 

ジッグラトとバベルの塔の成れ果て

ジッグラトはペルシア帝国による征服、次いでアレクサンドロスによる大帝国建設などによって、廃れていった。

今日に残っているジッグラトの遺跡も高くてもせいぜい第二層くらいしかなく、上層部は風化しており、当時の栄光は見る影もない。

 

バベルの塔は、神が全世界に人々を散りばめ、言語を混乱(バラル)させたことで完成することはなかった。

どちらも悲壮な末路を辿ったが、ジッグラトは偉大なる世界の遺産として人の心に残り、バベルの塔は伝説として語り継がれ今日に至っている。

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《参考文献》

『わが歴史研究の七十年』 (三笠宮崇仁著 学生社)

 


『古代王権の誕生』 (角田文衛著/上田正昭監修 角川書店)

 


『新詳世界史図説』 (浜島書店編集部 浜島書店)

 

『世界史B用語集』 (人見春雄著/臺靖著/鈴木敏彦著/増田正弘著 山川出版社)

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