古代の洞窟には、死者を埋葬した記録が残されている。
世界中の多くの文化で、故人を埋葬して弔うことが習わしになっている。この儀式には、さまざまな故人への追悼の行事が伴う。
では、「最初の人間の埋葬」はいつ頃始まったのだろうか?
人類が死者を埋葬し始めたのはいつ?
少なくとも12万年前には、意図的に埋葬された人間の遺体があったと考えられている。
もっと古い埋葬地が存在する可能性は否定できないが、現代人(ホモ・サピエンス)が死者を埋葬した最古の確実な例は、中石器時代(約30万年から3万年前)であるといわれている。
また、絶滅した人類の祖先が、約30万年前の現在の南アフリカで死者を埋葬したことを示唆する研究もあるが、この研究については科学界で論争となっている。
現代人と同型の最古の人類の埋葬跡は、12万年前のイスラエルにあるカフゼー洞窟などで見つかっている。また、オーストラリア博物館によると、同じ洞窟で11万5千年前のネアンデルタール人の埋葬跡も見つかっている。
専門家は、「中石器時代の人々は、洞窟を生活・食事・交流の場として頻繁に利用していた」と指摘している。
研究者は、これらの初期の洞窟埋葬は、自然現象(洞窟の崩落など)ではなく、意図的な人間の行為であったと確信している。なぜなら、洞窟の遺跡から発見された骨は、**胎児の姿勢で配置**されて、遺品と一緒に埋められており、埋葬のために土が掘り起こされていたからだ。
胎児の姿勢とは、胎児が母親のお腹の中でとっている姿勢のことで、具体的には、膝を胸に引き寄せ、頭を丸めて、背中を丸めた姿勢のことである。
胎児のような姿勢で埋葬されていたということは「死後の世界で生まれ変わることを願っていた」または「死者を母親のお腹に戻してあげたい」という気持ちの表れと考えられている。
なお、胎児の姿勢で埋葬される習慣は、世界各地で古くから行われてきており、日本でも、縄文時代の遺跡から胎児の姿勢で埋葬された人骨が発見されているのだ。
古代の人々が死者を埋めた理由
古代の人々は、なぜ死者を埋めたのだろうか?
その理由は、まだ完全にはわかっていない。
しかし、洞窟の中や外にかかわらず、死体を埋めて、処分しなくてはいけない理由がいくつかあったと考えられる。
人間や他の多くの動物には 「腐敗を本能的に嫌う」という性質があるといわれている。腐敗した死体は、病原菌や害虫を媒介する可能性があるため、人々は死体を埋めて、これらの危険から身を守ろうとしたのかもしれない。
または「死者を埋めることで、死者の魂を安らかに眠らせることができる」と考えたのかもしれない。
いずれにせよ、死体が腐敗していく過程は、見た目的にも臭い的にも耐え難かったであろうことは、容易に想像できる。
このように最初は、不快を断ち切ったり病気を予防するための単純なものだったかもしれないが、徐々に儀式など宗教的な意味を持つようになったと考えられている。
古代の人々の多様な埋葬
旧石器時代後期のユーラシアでは、豪華で装飾的な埋葬が行われることもあったが、大多数の埋葬は非常に簡素で、日常生活で使用される品物が副葬品として含まれていた。
専門家は「古代の埋葬は地域によって異なるため、その性質や意味について確固たる結論を出すことは難しい」と述べている。
火葬による埋葬が行われるのは、ずっと後になってからだ。記録に残る最古の火葬は、オーストラリアのムンゴ・レディと呼ばれる女性の化石で、約40,000年前のものである。
これらのことから、古代の人々の埋葬方法は、時代や地域によって多様に変化してきたことがわかる。
さいごに
死は人類にとって普遍的な経験である一方で、その意味や捉え方は、時代や地域によって大きく異なっている。
死後の扱いに関する多様性は、古代人の死について理解する上で重要な観点であり、今後も継続してこの研究が進められることで、人類がいつからどんな理由で埋葬を始めたのか、新たな理由が明らかになるかもしれない。
参考 : When did humans start burying their dead? | Live Science
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