恐竜

ブラキオサウルスの最新説 〜トレードマークのトサカが消える!?

ブラキオサウルスの現在

画像 : ブラキオサウルス(B. altithorax)の生態復元想像図 public domain

1900年の発見以来、ブラキオサウルスは100年以上も巨大恐竜界のスーパースターとして君臨し、最前線で恐竜人気を引っ張って来た。

筆者にとっても保育園の頃に出会って以来、ブラキオサウルスはずっと一番好きな恐竜である。あの圧倒的な大きさに心を奪われた子供は多いだろう。

だがそんなブラキオサウルス像も、この125年で大きく塗り替えられてきた。30年前には当たり前のように語られていた知識の中にも、今では見直されたものが少なくない。

今回は、そんなブラキオサウルスの現在に迫りたい。

鼻の穴は何処にある?

画像 : 恐竜サウルス 著者撮影

ブラキオサウルスは、T-REXとは別のベクトルで完成された竜脚類の完成形というべき存在であるが、中でもお馴染みなのは頭頂部の大きな膨らみだ。

小学校の頃にイラストで描かれたモヒカンのようなトサカは当時からやや大袈裟と思っていたが、今日に至るまでブラキオサウルスのトレードマークであり、小学生だった筆者にとってこの「トサカ(便宜上表記)」が最高にかっこよかった。

このトサカは実際には鼻骨の膨らみである。そして長いあいだ、竜脚類の鼻は頭頂部にあったとする説の根拠として受け止められてきた。

実際、筆者が小学校の頃に愛読していた『恐竜サウルス!』をはじめ、当時の図鑑ではブラキオサウルスの鼻は頭頂部に描かれていたが、研究が進むにつれてこの説にも変化が生じている。

画像 : ブラキオサウルスイメージ(AI)

鼻の位置は?

鼻腔が頭頂部にあるからといって、鼻孔(鼻の穴)も頭頂部にあるとは限らない。

研究が進んだ結果、現在ではブラキオサウルスを含む竜脚類の鼻孔は、頭頂部ではなく吻部前方に復元される事が多くなり、その後のイラストでも頭頂部に描かれる事はなくなった。

トレードマークのトサカはなかった?

画像 : ベルリン自然史博物館のジラファティタン骨格標本 Shadowgate from Novara, ITALY CC BY 2.0

筆者が恐竜、さらにブラキオサウルスを好きになるきっかけとなったこのトサカだが、実は北米産ブラキオサウルスの化石は完全な形で揃っているわけではなく、私たちが見慣れてきたイラストの多くも、アフリカで発見されたジラファティタンの復元を強く参考にして作られていた。

ジラファティタンの化石はほぼ完璧な状態で発見された素晴らしいもので、ブラキオサウルスの研究に大きく役立ったのはもちろん、別種と判明するまでブラキオサウルス・ブランカイの名で「世界一有名なブラキオサウルス」として親しまれていた。

流れが変わったのは2024年10月に、ブラキオサウルスの頭骨に関する新たな情報がSNS上で話題になったことである。

https://www.instagram.com/p/DBM7acoPgLB/

その頭骨は保存状態が良好なものだったが、詳しく調べると、頭頂部の盛り上がりがかなり控え目で、ジラファティタンや、横浜で対面したエウロパサウルスのような「トサカ」と呼べる立派な代物ではなかった。

画像 : エウロパサウルス 著者撮影

世間に大きく公表されていない事からも分かる通り、この情報はまだ「確定」ではなく、正式な論文はまだ出ていないが、今後の研究次第ではブラキオサウルスの姿が大きく変わってしまう可能性がある。

羽毛の証拠が発見されたヴェロキラプトルのように、有名な恐竜の姿が一新された例は確かに存在するが、仮にトサカのないブラキオサウルスが誕生してしまったらショックを受ける方も多いかもしれない。

正式な発表までまだ時間が必要と思われるが、やはり恐ろしさはある。

映画の名シーンの考察

映画『ジュラシックパーク』シリーズで登場人物が最初に出会う恐竜がブラキオサウルスだ。

ブラキオサウルスのファンとして映画内の扱いに関して思うところは色々あるが、個人的な感情はさておき、あの巨体が立ち上がり、我々人間を驚かせたシーンの迫力は映画の歴史に残る名場面の一つである。

映画公開当時の説として、竜脚類は長い尾を支えにして威嚇したり、高いところの葉を食べるために立ち上がっていたとされていた。

筆者もブラキオサウルスが立ち上がるシーンを初めて見た時は感動したが、それと同時にこれは映画の演出であると現実的な目で見ていた。

竜脚類が現れた頃の比較的小柄な身体であれば、クマのように基本四足歩行でも時には立ち上がる事も出来ただろうが、ブラキオサウルスのように全長20メートルを超えると、体重も身体に掛かる負担も桁違いになる。

あの巨体で後脚だけに大きく荷重をかける姿勢は、少なくとも現在では現実的ではないと見る向きが強い。
そもそも成体のブラキオサウルスはそれ自体が圧倒的な巨体であり、無理に立ち上がって威嚇する必要もなかっただろう。

病気や負傷で動けなくなってしまった場合は別だが、成体となったブラキオサウルスのサイズと迫力は疑いの余地がなく、獰猛な肉食恐竜も手が出せない、アメリカの地上の支配者の一人(?)だったはずである。

ブラキオサウルスは今後も変わり続ける

画像 : ブラキオサウルス(脚)著者撮影

今回はブラキオサウルスの最新研究を紹介したが、最新の説を見るとこの30年で大きく認識が変わっている。

ブラキオサウルスの変化はそれだけ研究が進んだ証拠であり、世界一有名なブラキオサウルスがジラファティタンとなったのも、一人の恐竜ファンとしてはそれだけ研究の精度が向上したと喜ぶべきだろう。

そして、ブラキオサウルスのトサカはなくなってしまうのだろうか?

ブラキオサウルスがエウロパサウルスやジラファティタンのような、ブラキオサウルス科の恐竜と掛け離れた姿である事が判明したら世界に衝撃を与える事になるが、筆者を恐竜の世界に導いてくれたトサカが守られる事を願いたい。

参考 :
Elmer S. Riggs, “Brachiosaurus altithorax, the largest known dinosaur,” The American Journal of Science, 1903.
https://www.instagram.com/p/DBM7acoPgLB/
文 / mattyoukilis 校正 / 草の実堂編集部

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