宇宙の果てはどうなっているのか?
それは、人間誰しもが一度は考えることだ。どうなっているのか?どこまであるのか?有限なのか無限なのか?
そして、今も観測と理論によってその謎に迫る挑戦は続いている。最新の研究により、徐々にだが宇宙の果てがどのようなものか分かりつつあるのだ。
アインシュタインの誤り
太古より、人類はいろいろな宇宙の果ての姿を思い描いてきた。いわば人類にとって究極の謎である。20世紀になり、アインシュタインも宇宙の果てについて、「定常(ていじょう)宇宙」という理論を唱えた。始まりも終わりも、そして、果てもないのが宇宙の姿だという。だが、彼が定常宇宙を提唱した後に、宇宙の果てとの関連で大きな発見があった。
ビッグバンである。ビッグバンによって始まり、宇宙が膨張を続けるということが分かり、同時にアインシュタインの定常宇宙が誤りだということも分かったのである。
そして、現代。東京都三鷹市にある国立天文台で、宇宙の果てに迫るコンピュータープログラム「Mitaka」が開発された。Mitakaにはこれまで観測で明らかになった宇宙のすべてがプログラムされているという。
ビッグバンが銀河を遠ざけた
それによると、地球を離れて宇宙の果てにたどり着くまでに、いくつもの星の集まりを超えていかないといけない。
太陽系、天の川銀河、そして、銀河の集合体。だが、観測できる全周囲の範囲はここまでだ。それでも、100億光年近い大きさをしており、もっとも遠くに観測されている銀河は132億光年先の彼方にある。
宇宙が誕生したのは138億年前。ビッグバンが起こった。その後、宇宙は138億年をかけて今の姿になっているのだが、逆に考えると地球から観測できる最も遠い光は、138億年かけて地球に届いた光ということになる。それ以上先は決して観測することができない。
では、138億年かけて届いた光を発した天体は、地球から何光年離れた場所にあるのだろうか?
答えは、約470億光年離れた場所にあると考えられている。これは宇宙そのものが絶えず膨張しているため、138億年の間にさらに332億光年も遠ざかってしまったのだ。
インフレーション理論
では、この470億光年先こそ宇宙の果てなのか?
答えはNOだ。470億光年先にある宇宙の果ては、あくまで人類が観測可能な宇宙の果てであり、その先にはさらに大きな宇宙が広がっている。では、観測できないのになぜ分かるのか?
マサチューセッツ工科大学のマックス・テグマーク教授は、数学を用いてその謎に迫った。注目したのはビッグバンの直後に起こった急膨張、「インフレーション」と呼ばれる現象である。インフレーション理論によれば、宇宙は誕生後に光よりも早い速さで広がった。そのため、地球からもっとも遠い天体は、光よりも早く遠ざかるため、その光は決して地球には届かない。
つまり、観測可能な宇宙とは、地球に光が届く比較的近い範囲ということになる。そして、この範囲は宇宙全体から見てごく一部に過ぎないというのだ。
三角測量
しかし、470億光年以上先の宇宙は人類には観測できない。では、どのようにして宇宙の果ての姿を見るのかというと「三角測量」を利用する。
正三角形の内角の和は180°だが、これを球体の上に描いてみる。すると球面なので描いた線は伸びて三角形の和は180°よりも大きくなる。だが、球体は表面を一周すると元の地点に戻るので、果てがない。これを宇宙に当てはめれば、その果てがどうなっているのか分かるという。
しかも、たった3種類の三角形で宇宙の姿が分かる。
○内角の和が180°の場合、縦横ともに空間に歪みがないため宇宙には果てがない。
○内角の和が180°より大きい場合、空間に凸型の歪みが生じ、球体の表面を一周して戻ってくるのと同じで果てがない。ただし、宇宙そのものの大きさは有限である。(球体の表面積が有限なのと同じ)
○内角の和が180°よりも小さい場合、空間に凹型の歪みが生じ、果てがない。
[※内角の和が180°よりも小さい場合]
つまり、宇宙空間の曲がり方によって、最終的に宇宙の果てがどうなっているかが分かるのだ。
宇宙の果て はどうなっているのか?
さて、実際に宇宙で三角測量を行う場合には「宇宙背景放射」を利用する。
地球から観測できる360°の天体からは、色々な電波が届いている。これを宇宙背景放射という。この宇宙背景放射を解析して、地球から観測できる範囲の宇宙の姿を立体的に捉えることが可能になった。さらに温度のムラも10万分の1℃の違いまで分かっており、この温度差で宇宙に巨大な三角形を描くのだ。
温度の違いから、特定の場所を2点、目印として相互の距離を測り、さらに地球と結びつけるように三角形を作ることができる。
その結果は、「内角の和はほぼ180°で、限りなく歪みが少ない」というものだった。では、宇宙に果てがないのかというと、それも断言できない。
というのも、我々が「観測可能な範囲においては」という但し書きが付くからだ。もし、その先に歪みがあっても不思議ではない。地球に住んでいると地球が球体だと感じられないのと同じことである。
最後に
スタンフォード大学のアンドレイ・リンデ教授は、宇宙が急速に膨張する前には表面が波のように絶えず揺らいでいたと考えている。
これを「量子ゆらぎ」というが、そのために宇宙を構成する物質の分布は均一ではなかったと考えられる。それが急膨張したことで、空間そのものも広がり方に歪みが生じたというわけだ。つまり、宇宙は物凄く膨張した場所もあれば、あまり膨張していない場所もある。
この理論によれば、人類の観測できない宇宙全体では、凸凹の歪みで構成された宇宙かも知れないということになる。
なんとも想像力を膨らませる話ではないか。
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