科学

「クリティカルシンキング」が不可欠な理由

福岡の八女にある、地域密着型天文台「星の文化館天文台」。

画像:星の文化館(八女市HPより)

プラネタリウムは当たり前。

なんと宿泊もできちゃう!

「星と泊まれる天文台」というキャッチコピーもなかなか粋ではないですか。

ツーリングで行ってみたいけど、九州はちと遠いなぁ。

まぁ機会があれば絶対行くので、待っておれよ。

‥ということで、この天文台が2019年5月13日につぶやいたツイート「空に浮かぶ怪しい光の正体は?」、これがなかなか面白いのです。

https://x.com/hoshibun_staff/status/1127877676964823040

「UFO見た!」ハイ、冷静に

空に怪しげに光る光、妙に明るかったり大きく見えたり、妙な動きをしているとか、昼間でも星のようにはっきり光って見えたりとか。

そうした現象をすぐに「UFOを見た!」と断定する人たちが少なくありません。

いや、多すぎる。

中には「物理学者」を名乗る大学教授さんまで。

UFOというのは”Unidentified Flying Object”の略であり、文字通りならそれは「未確認飛行物体」なわけで、正体不明の飛んでるモノはすべからくUFOであることは間違いありません。

しかし問題は、こうした人々が「未確認」という意味でUFOを使っていない点です。

彼らにとってUFOとは、「宇宙人の乗った宇宙船」以外の何物でもないのです。

「冷静に分析」を手助けする、天文台作成「Yes/No表」

という私の心の叫びが通じたのか、先述したツイートに出てくるYes/NO表がこちらです。

画像:星の文化館天文台(星の文化館ツイートより)https://x.com/hoshibun_staff/status/1127877676964823040

これが分かりやすい!

もしUFOと思しき物体を空に発見したら、あるいは過去に見たものがあったとしたら、この表で辿ってみてください。

それは何だと考えられるのか、が分かります。

面白いのは、この表の行き先の中に「宇宙人の乗った乗り物」という選択肢がない点。

ツイートでも「意味ありげに宇宙人くんが説明に乗り気ですが彼の乗り物はここにはありません…」とにべもない。

注意点を挙げるとすれば、過去の経験(過去のUFO目撃体験の記憶)には、記憶違いが伴う可能性があること。

光の強度、大きさ、動きなどが、驚きの感情と共に誇張されて記憶されることがあることには、注意が必要です。

また、この表にはあまりはっきり書かれてませんが、空に光る点というのは、周囲に対象となるものがないためその距離や大きさがつかみにくいのです。

だから例えば、金星であるにもかかわらず「あの山の上に、100メートル位の物体が‥」

というような目撃談が出来上がるし、自分が動いていると、相手も高速で追いかけてきているかのように見えるなど、動きについても誤解が生じることもあリます。

日本では定着に程遠い「クリティカルシンキング」の考え方

“Critical Thinking”

日本語では「批判的思考」や「批評的思考」と訳されます。

どちらもどうもしっくりきませんが、他に言いようもないのかもしれません。

要は、感情とか自分の主義主張、好み(宇宙人の乗り物はあって当然だ、とか)に流されずに、客観的に情報に接し、多面的にこれを咀嚼する、ということです。

科学者の言う「批判的」とはこういうこと。

ものすごく大事なことなのです。

現象や言説を前に出来る限り調査し、その内容や事実関係に「抜け」が無いかどうか検討する。

このフィルターを通ったものを当面正しいとして受け入れつつ、その後も検討は続ける。

その時の調査や自分の思考自体にも「抜け」の可能性が常にあるからです。

もし何の検討もせずに物事を受け入れてしまうと、それが概念であれ人物であれ、信仰に近いものになってしまう恐れがあります。私たちの心は、先入観や偏見といった誤認の要因に対して常に脆弱であることを忘れてはいけません。

また、ここで言う「批判的態度」とは、決して他人を貶めたり、とんがった性格を売りにするタレント的な姿勢を指すものではありません。

最後に一言‥
「夢」は自然の本当の姿、真実を真摯に求める先にこそあると思います。

参考:『星の文化館』(https://www.hoshinofurusato.jp/constellation/
文 / 種市孝 校正 / 草の実堂編集部

種市 孝(たねいちたかし)

種市 孝(たねいちたかし)

投稿者の記事一覧

超心理物理学者・エセ科学バスター
【NPO】国際総合研究機構付属理論物理学研究所・所長
超心理現象(テレパシー、ミクロPK等)をまじめに科学する理論物理学者。 同時に「科学的とはどういうことか」、「科学思考はなぜ重要か」を掘り下げる。
川崎生まれ、新潟育ち、東京在住。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「創造科学」とは〜 科学と名のついた疑似科学の代表
  2. ホメオパシー【ヨーロッパを中心として医療現場に今もある迷信】
  3. アイヒマンテストとは 〜【人間の残酷さを証明した心理実験】
  4. 「クマムシ」のタンパク質が、人間の老化を遅らせる可能性
  5. 「虫の知らせ」に見る、危うい直観の世界 〜誰にでもある「認知バイ…
  6. 「わたし文系だから‥」の落とし穴 ~競争原理の弊害とは
  7. 人類最古の「ガン」は170万年前のホモ・サピエンス以前の種の骨肉…
  8. ロシアで遺体を冷凍保存する人たち 「400万円で誰でも可能、日…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

江戸城での最初の刃傷事件 「豊島明重事件」

江戸城での刃傷事件と言えば浅野内匠頭と吉良上野介の刃傷松之大廊下での「忠臣蔵 赤穂事件」が有…

現場の職人が実際に使ってる オススメ冷感グッズ【熱中症対策】

毎日酷暑が続きますね。自分は昼間は鉄工所で働いていたりするのですが、この夏の猛暑の中…

コロンブスの新大陸発見によってもたらされた「恐ろしい現代病」とは?

1492年、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したという歴史的事実は、学校の授業…

江戸時代の大晦日の面白いエピソード 前編 「井原西鶴の世間胸算用」

江戸時代、日本一華やかな場所と言われた「吉原遊郭」では、大晦日から新年にかけて必ず「狐舞(きつねまい…

妻を殺してその肉を……『三国志演義』に登場する猟師・劉安の忠義エピソード

劉備(りゅう び。字は玄徳)と言えば、戦乱の世を治めるべく立ち上がった仁徳の英雄として知られ、『三国…

アーカイブ

PAGE TOP