月は常に同じ方向を向けて、我々の夜空に輝いている存在だが、その裏側には未だに解明されていない謎が数多く存在している。
2023年7月、月の裏側に「熱を発生する巨大な塊」が発見された。
この塊の正体は、地球以外では非常に珍しい岩石なのだという。
発見された謎の熱源
研究者たちは、中国の月探査機「嫦娥1号」と「嫦娥2号」、およびNASAの月探査機「ルナープロスペクター」と「ルナリコネッサンスオービター」のデータを活用し、マイクロ波による地下温度測定という新しい方法を用いて、月の裏側に存在する「コンプトン・ベルコビッチ」の地下で異常な高温の地熱源を検出した。
これはいわゆる、リモートセンシング技術を使用した成果である。
「コンプトン・ベルコビッチ」とは、月の裏側にある地域だ。1998年にNASAの月探査機「ルナ・プロスペクター」によって、この地域のトリウムの濃度が高いことが発見された。トリウムは放射性元素であり、放射性崩壊によって熱を放出する。そのため、コンプトン・ベルコビッチは、熱源として注目されるようになっていた。
科学者たちは、直径50キロメートルの領域で周囲よりも約10度摂氏高い熱源を発見した。
この領域は、直径20キロメートルのシリシウムを豊富に含む領域の下にあり、「35億年前に最後に噴火した火山の火口」と考えられている。
また、火山のマグマ溜まりからのマグマが依然として地表の下にあり、放射線を出している可能性があるという。
熱源の正体
月裏で発見されたこの謎の熱源は、地下に埋もれた花崗岩(かこうがん)の塊から放出される「自然放射線」が原因である可能性が高いと考えられている。
これによって、直径50キロメートルのバソリス(深成岩の形のひとつ)が発見された。バリソスには、ウランやトリウムなどの放射性元素が多く含まれているため、月面に伝わるほどの熱を放射するのだ。
花崗岩は地球以外では大量に見つかることがなく、月で35億年間も噴火していない死火山が、この花崗岩の塊の発生源であると考えられている。
花崗岩
月の花崗岩は、地球の花崗岩に似ているが、地球で花崗岩が形成されるためには、水とプレートテクトニクス(地殻プレートの働き)が必要だ。
しかし、月には水もプレートテクトニクスもない。
そのため、他の惑星でも花崗岩が見つかることはほとんどない。
バソリスは、溶岩が地殻内に上昇して固まることで形成される火山岩のことである。カリフォルニア州のヨセミテ国立公園にあるエル・キャピタンやハーフ・ドームは、バソリスの例である。
研究の発表
研究者たちは、2023年7月に「ネイチャー」誌で初めて研究結果を発表し、さらに詳細を7月12日にフランスのリヨンで開催された地球化学のゴルトシュミット会議で発表した。
まとめ
月裏で発見された花崗岩についてまとめる。
・中国の月周回衛星「嫦娥1号」と「嫦娥2号」のマイクロ波観測装置で、月の裏側にあるコンプトン・ベルコビッチと呼ばれる地域で、異常な高温の地熱源を発見。
・この地熱源は、直径約50キロメートルの花崗岩が存在する可能性が最も高い。
・この花崗岩系は、地球のような進化した花崗岩の一部である可能性がある。
・地球以外の太陽系では、花崗岩はほとんど見られない。
さいごに
地球以外の太陽系ではほとんど見られない花崗岩が、月で見つかったことは驚きである。
この花崗岩は、地球のような進化した花崗岩系の一部である可能性があると考えられている。
この発見は非常に興味深く、地球外での花崗岩の存在に関する、新たな洞察を提供するだろう。
これは、太陽系の他の岩質天体の内部構造についての我々の理解に大きな影響を与えるかもしれない。
また、月の地熱プロセスの理解について、新たな知見をもたらす可能性があるだろう。
さらに検証が進めば、太陽系内の他の岩体の内部構造についても明らかになっていくだろう。
参考 : Scientists discover huge, heat-emitting blob on the far side of the moon | Live Science
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