古代文明

ホモ・サピエンスはなぜ生き残れたのか【ネアンデルタール人との違い】

私たち生命の始まりは、大きさ1mmにも満たない微生物でした。そして、長い進化の果てに、いま地球には3,000万種を超える多様な生命が息づいています。しかし、その数百倍・数千倍という生命が途中で絶滅しています。地球生命の歴史とは絶滅の歴史でもあったのです。

いつの時代も生命の大量絶滅を引き起こしたのは偉大なる自然の力でした。私たちヒトも猿の祖先から分かれた後、多くの絶滅を繰り返していたことが最新の研究から分かってきました。

チンパンジーから人類へ

※アウストラロピテクスの復元像 wikiより

私たち、人類の進化の舞台となったのはアフリカ大陸です。中央部にわずかに残る熱帯雨林。ここに私たち人類と最も近い仲間、チンパンジーが今も暮らしています。およそ700万年前、人類はこのチンパンジーの祖先と分かれ、二本の足で歩き始めました。その理由は分かっていませんが、チンパンジーと分かれて300万年ほど経った頃、アウストラロピテクスが誕生します。

二足歩行をしているため、背骨が真っ直ぐ伸びていて、身長は140cmほど。これはチンパンジーとほぼ同じサイズで、腕も長いままでした。その長い腕を使って木に登っては主食である果実をとっていたと考えられています。

人類はチンパンジーと分かれた後も、チンパンジーとあまり変わらない森の生活を続けていたのです。しかし、人類は誕生の時から常に深刻な危機にさらされてきました。当時のアフリカでは果実の宝庫である熱帯雨林が次第に消えていったため、主食である果実が不足していたのです。その原因は、ヒマラヤ山脈にありました。

約5,000万年前、大陸移動によりインドがアジアに激しく衝突、地球史上最大の山脈であるヒマラヤ山脈を形成します。隆起を始めたヒマラヤ山脈は、人類が進化を始めた700万年前には標高5,000m級になり、地球の気候を大きく変え始めていました。ヒマラヤの上空にたまった熱くて乾いた空気が、アフリカ大陸に流れ込み、雨が極端に少ない季節が生まれたのです。この現象は熱帯雨林の消失を促し、我々人類もおよそ200万年前、この危機から逃れるべく劇的な変化を遂げました。

二種の人類

まったく違った二種類の人類が登場したのです。

南アフリカ・ノースウェスト州にある170万年~150万年前の地層から二種類の人類化石が発見されました。発見された化石のひとつはホモ・エルガステルと名付けられました。その姿を再現してみると身長は約170cm、以前より30cmも身長が伸び、すらりとした体型をしています。もうひとつは、パラントロプス・ロブストスと呼ばれています。頭蓋骨の上に突起があるのが特徴で、顔の筋肉を支えるためのものだったといわれています。身長は150cmほどで、ずんぐりとした体格をしていたと考えられています。

※パラントロプスの復元像 wikiより

このふたつの人類の姿の違いは、食糧不足を生き抜きために独自の進化を遂げたためでした。パラントロプスは、乾季には木の根(球根)を食べていたため、その硬い根を噛み砕くために丈夫な顔の筋肉が発達したと考えられています。

一方、長身のホモ・エルガステルは、他の動物が狩りをして残した肉を食べるという選択をしました。当時の人類は狩りをして獲物を狙うという知恵も体力もなかったためです。しかし、時に食べ残しはなかなか見付からず、長距離を移動しないといけません。すらりとした体つきは長距離移動に向いていたと考えられています。

アフリカの巨大変動

その後の研究によって、ほぼすべての時代にわたって、人類には複数の祖先がいたことが分かってきました。700万年の間に登場した人類の祖先の数は20種にもなります。そのうち、たったひとつを除いて絶滅してしまったのです。

木の根を主食としていたパラントロプスも100万年後に、突如として絶滅してしまいました。その理由は不明ですが、偶然生き延びたのが、ホモ・エルガステルでした。しかし、生き残ったホモ・エルガステルは激的な進化を遂げます。その原動力はアフリカ大陸の地形にありました。アフリカ東部には幅100kmにもわたる大渓谷があります。

大地溝帯(だいちこうたい)」と呼ばれるこの渓谷は、アフリカを縦断するように南北に6,000kmも伸びています。

※アフリカの大地溝帯 wikiより

この大地溝帯は地下のマントルが地殻を押し上げた結果であり、周辺は高原となって、両側には高さ2,000mもの山々が形成されました。このため、海からの湿った風は遮られ、内陸の乾燥化は一層進みます。

そして、200万年前には現代と同じような広大な草原、サバンナが出来上がったのです。

弱肉強食の世界へ

※ホモ・エルガステルの骨格標本と復元像 wikiより

サバンナの出現は、草食動物とそれを狙う肉食動物の進化を促しました。私たちの祖先であるホモ・エルガステルもこうした弱肉強食の世界へ進出して行ったのです。それは危険と隣り合わせの生活でした。

巨大な牙を持つサーベルタイガーはこの時代の王者であり、逆に人類は格好の獲物でした。しかし、逆境ともいえる危険な肉食の道をあえて選んだことが、思わぬ、そして決定的な進化をホモ・エルガステルにもたらしたのです。

それこそ、脳の巨大化でした。肉を主食とした祖先だけがなぜか脳を巨大化させていったのです。初期の人類のアルストラロピテクスでは、チンパンジーと変わらない500ミリリットルほどに過ぎませんでしたが、肉食を覚えたホモ・エルガステルの脳は、ほぼ倍の900ミリリットルに拡大していたのです。

なぜ、脳が巨大化したことはまだ分かっていませんが、肉食が脳の巨大化に有利だったことは確かです。脳は身体でもっともエネルギーを使う器官です。その脳のエネルギーを補うのに高カロリーの肉が役に立ったのではないかと考えられています。

ネアンデルタール人 と人類の共存

ネアンデルタール人

※ネアンデルタール人の骨格標本と復元像 wikiより

脳が巨大化した人類は肉を狩るため、知恵を絞り始めました。「狩り」の始まりです。それが更なる脳の巨大化を促し、その後もアフリカでは新たな人類が出現していきますが、そのたびに脳は大きくなっていきました。

ホモ・エルガステルの次にあらわれたホモ・エレクトスでは、脳の大きさは1000ミリリットルを突破しています。このホモ・エレクトスはアフリカから、アジアへと広まっていったのです。その子孫は現在のインドネシアでジャワ原人となり、やがては中国に達し、北京原人となりました。

そして、およそ20万年前、遂にホモ・サピエンスがアフリカ中央部で誕生します。その脳は1400ミリリットルまで大きくなったのです。私たち、ホモ・サピエンスはかつてないほど大きな脳を持つようになりました。しかし、その脳の大きさだけが私たちが繁栄した理由ではないことが分かってきました。

それは、私たちとほぼ同じ大きさの脳を持っていたネアンデルタール人の存在です。約30万年前に出現したネアンデルタール人は、身長もホモ・サピエンスとほぼ同じくらいでしたが、身体はより頑強でした。

ネアンデルタール人は、氷河期の真っ最中だったヨーロッパに進出し、寒さに適応した人類です。彼らは氷河期のハンターとして活躍し、私たちホモ・サピエンスとも長い間共存していたのです。しかし、およそ3万年前に絶滅し、現代にはいません。ですが、最新の研究ではアフリカ以外の地域の人のDNDに、ネアンデルタール人のわずかに含まれていることが確認されています。

なぜホモ・サピエンスは生き残れたのか

ネアンデルタール人は、厳密にいえば1600ミリリットルという現代の人類よりもやや大きな脳を持っていました。知能そのものはホモ・サピエンスとあまり変わらないと考えられていますが、石器の製作・使用の技術に長けていて、狩猟用、解体用などに使い分けていました。さらに、ほぼ完全な状態の全体の骨が発見されていることから、埋葬の習慣があったことも分かっています。最盛期の人口は2万人ほどがヨーロッパか各地に広まっていたようです。

これほど繁栄したネアンデルタール人だけが滅びた理由はなんだったのでしょうか?

その謎に迫るひとつの仮説があります。現在生存している様々な霊長類の頭蓋骨を調べてみたところ、みな気道と食道を分ける喉仏が高い位置にあり、ネアンデルタール人も人類に比べ、喉仏が高い位置にあったと考えられました。一方、私たち人類の喉仏は下の方にあります。このことは、喉の長さがホモ・サピエンスのほうが長く、会話をするのに適していることを示しています。

ネアンデルタール人も言葉を発していましたが、この人体構造だと母音がうまく発音できなかったと考えられています。そのため、複雑な会話が困難でコミュニケーション能力ではホモ・サピエンスのほうが勝っていたのです。

※喉仏の違い

まとめ

私たち、ホモ・サピエンスが手に入れた言葉。これこそが、私たちが生き残れた理由です。

言葉を使って効率よく狩りを行い、狩りが終われば失敗した理由を考え、話をします。こうして新しい工夫を話し合い、次回の狩りではさらに効率よく獲物を狩るのです。大人の言葉を聞いた子供たちは、狩りの技術を学び、大人たちは自らの経験を言葉によって子供や仲間たちに伝えています。

言葉を使うようになり、私たちは始めて知識や経験を共有するようになり、ホモ・サピエンスだけが生き残れたのでした。

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コメント

    • 匿名
    • 2018年 4月 27日

    ネアンデルタール人は絶滅したわけではなく、現在の人と混血して同化したしたってのが最近の定説なんだけどね・・・

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