中国史

占いと陰陽五行説について調べてみた【古代中国】

占いを調べると『陰陽五行説』という言葉に幾度となく出会う。

しかし、難しすぎてなかなか分からない。簡単にいえば森羅万象はすべて「陽」と「陰」に分類することができ、この考えに基づいた思想を陰陽思想と呼ぶ。

その根幹にあるのが陰陽五行説である。

陰陽説

陰陽説

【※陰陽を表す太極図】

中国の春秋戦国時代(紀元前403年~221年)に「諸子百家(しょしひゃっか)」という当時の学問・思想家たちの総称が生まれ、そのなかに『五行派』と『陰陽家』というグループが存在していた。この陰陽家にいた鄒衍(すうえん)という人物が、五行派が唱えていた五行説を取り入れて、自派の陰陽説と融合させ陰陽五行説を確立した。

陰陽説とは非常に簡単な理論で、この世のすべては陰と陽に分けられる(陰陽二元論)。だから陰と陽のふたつの原理原則でこの世の生成変化を説明しようとした。

例えば昼があるから夜がある、昼は働いて動いているから夜は静かにして休む。働き過ぎても、寝過ぎてもいけない。陰と陽のバランスを整えてよりよく生きようという考えだ。

しかし、これだけだとニ文法なので、もっと深みのある理屈理論ができないものかと思案した。

五行説

五行説を取り入れることで陰陽説がもっと色々なものに応用できる、汎用性の高いものになると気付く。

その陰陽説が発達して「(えき)」などの占いが出てきたのだった。陰と陽の発想は日本人にもなじみ深く、例えば「手」は、手の甲が陰、手の平が陽。噺家がお化けのように手の甲を見せると陰の世界、逆に手を挙げるとお祭りや万歳のように陽が成り立つ。

季節にも陰と陽があり、区分することが可能だ。

○春は『陽中の陰』
陽のなかに陰の気がまだ残る季節であり、万物が発(は)る、木の芽が張るといったように、陽の気が漂って新しい始まりを予感させる季節。
○夏は『陽中の陽』
陽の気が真っ盛りの季節であり、北半球においては太陽温度が高くなる季節。エネルギー溢れる陽中の陽である。
○秋は『陰中の陽』
陰の気のなかに陽が残る季節であり、実りの秋と呼ばれるように作物の収穫が得られる陰中の陽にあたる。草木が紅く染まる情趣あふれる期間。
○冬は『陰中の陰』
陰の気が真っ盛りの季節であり、一年のなかで最も寒くなる季節。新しい生命が始まる春までの冬ごもりの期間。

こうした陰陽の考えとともに、五行説では森羅万象のすべてに「水・火・木・金・土」の五行の要素をすべて当てはめるという思想があった。

相生相剋

江戸時代中期に成立した『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には、次のように五行が配当されている。

○1番目の水は『北・冬・陰』
○2番目の火は『南・夏・陽』
○3番目の木は『東・春・陽』
○4番目の金は『西・秋・陰』
○5番目の土は『中』

そしてこの中に十二支や季節、方位などすべてがそれぞれのグループに配当されるのだ。

そして、その循環の仕方は「相生相剋(そうせいそうこく)」、つまり相性の良い、悪い関係があって、それで吉凶を判断するのが占いであり、東洋思想の基本となった。

五行と医学

【※五臓と五腑の関連】

東洋医学も体の悪い部分が五行のどこに配当されているかを見る。

例えば「肝臓」には「木」が配当されていて、もし肝臓が弱っていれば「木」を生じるのは「水」だから、「水」が配当された食べ物を取り入れればよい。逆に「火」の活動が活発で心臓に負担がかかっているのであれば「火」の力を剋する「金」に配当された辛味のあるものを食せば良い。また、心臓が弱い人はこれを強めないといけないから「火」を生み出す「木」に配当された酸味を取りなさいといった考え方なのだ。

吉凶の判断は占いによって異なり、例えば夏同士の場合は「陽と陽」で和合であるという占い師もいれば、必ず陰と陽のバランスだから陰の要素がないといけないという人もいる。あるいは同じ火のグループでも陰が配当された十二支と、陽が配当された十二支同士ならOKという見方もあり、受け取り方は人それぞれだ。

五行説と暦

【※陰陽五行の図】

で編纂された『五行大義』という五行説の理論書があるのだが、この頃はまだこうした細かいグルーピングは生れていなかった。

やがて中国で形成された思想が江戸時代に日本に輸入されて、日本人も占いの理屈を学び考えるようになる。

そして、明治以降に四柱推命などの占術が体系化されていったのだ。しかし、暦に関しては漢の時代以降、超辰(ちょうしん/暦の修正)をせずに機械的に六十干支を配当していた。昔は木星を軸にして今年は何年か理解しており、木星は約12年かけて太陽の周りを公転するが、ぴったり12年というわけではない。だから約86年に一辰、ひとつ十二支がずれていまうのだ。

もともとは実際の天体観測に基づいて暦を作っていたのが大原則で、星の動きと暦をワンセットにして作られたのが占術である。

陰陽五行説では、すべての季節にそれぞれの五行が配当されると説明したが、各季節の間当たる期間にも空白があり、その約18日間を「土」の要素を用いて「土用」と呼ぶ、すべての季節に土用はあるが、特に夏の土用の丑の日が有名だ。

最後に

現在の東洋占術の多くは陰陽五行説をベースにしているため、必ず陰と陽、五行の相性が良いか悪いか、それを流派によってどのように解釈していくのが根本である。

占い依存に陥らないためにも、こうした基本を勉強しておくのは大切なことだ。

のめり込んでもいけないが、かといって雑に扱ってもいけないものといえるだろう。

関連記事:暦
【日本のフォーチュンクッキー!】江戸時代の占いについて調べてみた
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