中国史

明王朝時代の長城で発見された何世紀も前の「石の手榴弾」

中国の北京近郊の万里の長城で、明王朝時代の手榴弾と、その隠し場所が発見された。

手榴弾は石(または陶器製)で、数十個が見つかっている。

明王朝時代といえば、火薬兵器の開発が盛んだったとされる時代であり、発見された手榴弾は、さまざまな火薬兵器の中のほんの1つだ。

この発見は、1368年から1644年まで中国を支配した明王朝の驚くべき火薬兵器の多様性を示している。

画像: 2011 年 10 月に高島沈没船から発掘された陶器製雷墜落爆弾。モンゴルによる日本侵略 (西暦 1271 〜 1284 年) のものとされている。 CC BY-SA 3.0 Deed

火薬の時代(The Gunpowder Age)」の著者である考古学教授・トニオ氏は、明王朝が世界初の「火薬帝国」だったと主張している。

火薬は900年代に中国で発明されたと考えられている。

明王朝が始まった頃には、すでに東アジアではさまざまな種類の火薬兵器が使用されており、「飛翔鼠」、「火磚」、「蒺藜火球」、「万火飛砂魔法爆弾」などの奇抜な名前の爆薬兵器もあったという。

明王朝初期における爆弾は石や鉄で作られ、手投げ、投石機などで攻撃していた。

中国国営の新華社通信は、中国の首都の北西約80キロメートルに位置する、万里の長城の「八達嶺長城」付近の倉庫の遺跡で、考古学者たちが、明王朝時代の石手榴弾59個を発見したと報じている。

これらの写真はまだ発表されていないが、おそらく同時期に中国で作られた陶器の殻で作られた携帯用「雷嗚爆弾」に似ていると考えられている。

画像: 万里の長城八達嶺長城 public domain

「八達嶺長城」で発見された何世紀も前の手榴弾は、石で作られ、中央に穴が開いており、火薬を詰めることができるようになっている。これらは以前発見された石手榴弾に似ており、明王朝時代の万里の長城沿いの警備員にとって、一般的な武器であったという。

北京考古研究所の研究員は、「手榴弾は火薬を詰めた後、密封して投げることが可能で、敵を撃つだけでなく爆発を引き起こすことができる」と語っている。
また、このような武器庫が万里の長城沿いで発見されたのは初めてだという。

今日の手榴弾は激しく爆発することが知られているが、初期の手榴弾はどちらかというと、投げつけて燃やすといった感じだったようだ。
それでも当時としては、最大級の爆発力だったようである。

今回の調査では手榴弾以外にも、城壁の近くに石造りの砦の跡があったことや、焚き火台、コンロ、シャベル、調理器具なども発見されている。

さいごに

今回の発見のポイントは、この時代の中国において「火薬兵器が重要視されてきたこと」を示していることだ。

明王朝時代には、火薬兵器の開発がさらに進み、特殊な効果を持つ爆発物も開発された。

万里の長城は世界最長の軍事要塞であり、中国の歴史において重要な役割を果たしてきた。今回の発見は、万里の長城の歴史をさらに理解する上で、重要な手がかりとなるだろう。

参考 : Dozens of centuries-old stone grenades from Ming dynasty discovered at Great Wall of China | Live Science

 

lolonao

lolonao

投稿者の記事一覧

フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. チャイナドレスの起源 ~満州族の伝統衣装「旗袍(チーパオ)」の歴…
  2. 中国史上唯一の女帝・則天武后はなぜ女帝になれたのか?
  3. 【群馬伊香保に突如できた謎の巨大宗教施設】佛光山 法水寺とは一体…
  4. 【古代中国】 秦朝では年齢ではなく背の高さが成人の目安だった! …
  5. 万里の長城は時代と共に変化していった 「春秋、秦、漢、金、明」
  6. 古代中国のトイレにまつわる話 「トイレに落ちて死んだ王様、尿瓶を…
  7. 楊貴妃は本当に美人だったのか? 【ワキガが酷い体質だった】
  8. 天安門事件とはどのような事件だったのか? ① 「民主化デモの始ま…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

グランピングが日本で注目される理由 「アウトドア界の新しい逸材」

長期化するコロナ禍を切っ掛けに、会社に足を運ばずとも自身のライフスタイルと並行しながら仕事に打ち込め…

【三国志 資治通鑑】 なぜ「黄巾の乱」は起こったのか? 「人口が1/4に大激減」

黄巾の乱とは、中国の後漢末期に勃発した大規模な農民反乱である。その背景には複雑な社会…

理想と現実【漫画~キヒロの青春】㊱

今日は日曜だけど、朝から現場行ってきましたw儚いカラオケ…

モンテッソーリ教育 について調べてみた

マリア・モンテッソーリを知ろうマリア・モンテッソーリ(伊: Maria Montessori…

ホメオパシー【ヨーロッパを中心として医療現場に今もある迷信】

日本でも死亡事故が発生ホメオパシー はドイツ人医師であるサミュエル・ハーネマンが18世紀…

アーカイブ

PAGE TOP