大立人の最大の謎
前回は、古代中国の謎の遺跡「三星堆遺跡(さんせいたいいせき)」と、そこから出土した謎の像「青銅大立人」について触れた。
今回は青銅大立人について、さらに掘り下げていきたい。
青銅大立人を見るために、中国の四川省徳陽市にある「三星堆遺跡博物館」を訪れた人々は、必ずと言っていいほど一つの疑問を持つ。
「大立人は一体何を持っていたのか?」と学芸員に聞くのである。
だが学芸員も困り顔で、まだはっきりとはわかっていないことを伝えるしかないのだ。
いくつかの憶測
一つの説は「象牙」である。
三星堆遺跡では多くの象牙が発掘されている。それも半端な数ではなく何層にも渡って見つかっているのだ。当時、四川省の一帯に像がいたことは考えにくいことから、その象牙が一体どこから来たのかも謎の一つとなっている。
大立人の両手の角度が微妙に違う事から、一本のまっすぐな物は持つことができない事は判明している。そこで、考えられたのが象牙である。
象牙であれば、根本の太い部分から先端に向けて細くなっているために持つことが可能であるという。
ところがそうなると一つ問題が起きる。右手で細くなっている先端部分に近いところを持っていたとすれば、左手で太い部分を持っていたことになる。
それだと、その手から象牙が滑り落ちてしまうのである。逆に左手で先端部分を持っていたとしても、左手の輪の部分が大きすぎるのである。
何かの器具によって滑り落ちないように工夫された可能性もあるが、現在のところそのような物は発見されていない。
さらに国家の重要な宗教儀式の際に、象牙が使用されたという歴史の記述や言い伝えも残っていない。
そういった理由から研究者たちは「象牙を持っていた可能性は極めて低い」としている。
大立人は蛇を模った物を持っていた?
他には「蛇型の物品」を持っていたのではないかという説がある。
蛇であれば体がうねっており、大立人の手の大きさに合わせて太さを調整することが可能だ。
戦国時代から秦朝・漢代(前4世紀〜3世紀頃)に編纂された最古の地理書『山海経』の中には、宗教儀式を行う身分の高い祭祀や神王が、手に蛇を模ったものを持っていたという記述があるという。
また、祭祀や神王が二匹の龍に引かれた乗り物に乗っていたという言い伝えや、蛇や龍を装飾として身につけていたという説もある。
蛇や龍は「神聖なもの」という扱いで、身分の高い者の証にもなっていたのだ。
ところがこの説も信憑性が低いとされている。
というのも、三星堆遺跡では蛇を模った出土品がただの一つも見つかっていないのだ。この地域において蛇が神聖なものとされていたならば、他にも多くの蛇を模した出土品があるはずである。
大立人だけ蛇の形をした物を持っていたというのは、あまりに不自然すぎるのだ。
小立人の発見
しかし近年、この大立人が何を持っていたかについての正確な答えになりそうな発見があった。
小型の青銅像「小立人」が発見されたのである。
しかも「大立人」と「小立人」の姿勢はかなり似ており、同じような姿をしていた。
では、小立人は一体何を持っていたのだろうか?
小立人はなんと「一羽の鳥」を抱えていたのだ。
しかし、一体のとても似ている像が「一羽の鳥」を抱えていたからといって、大立人が同じように鳥を抱えていたという保証はない。
だが、少なくとも前述した二つの推測よりも、はるかに信憑性が高いと考えられている。
さらに三星堆遺跡と鳥には深い関係があるようで、鳥をモチーフにした出土品が他にも多く発掘されているのだ。
『山海経』の中には「太陽神鳥」という記述が出てくる。その中には三本の足を持つ「三足鳥」という記述もあり、この神鳥は太陽崇拝と関係がある。
大立人は「太陽崇拝と関係のある神鳥を持っていた」というのが、現在最も有力な説となっている。
参考 : 三星堆大立人拿的啥?已被網友玩壞 | 每日頭條
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