三種の神器(サンシュノジンギ)とは、日本神話に登場する神である天照大神(アマテラスオオカミ)が、孫である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に授けたとされる、以下の宝物のことである。
八咫鏡(ヤタノカガミ)
草薙剣(クサナギノツルギ)
八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)
これらの神器は、古代において祭事などで天皇が用いたと伝えられている。
しかし、時が経つにつれて、皇位とともに伝わるべき由緒ある物として位置づけられるようになり、天皇の位の象徴として、皇位継承の際に新たな天皇に受け継がれるようになった。
八咫鏡について
八咫鏡(ヤタノカガミ)は、天照大神を含む神々が住む高天原の川で、八百万の神々によって作られたとされている。
堅い石を金で覆い、その上に金山で取れた鉄を使って作られたものであるという。
神話によれば、天照大神が天岩戸という岩の洞窟に隠れた際、世界は闇に包まれ様々な渦が発生した。
その際に、天宇受売命(アマノウズメ)が踊り狂い、他の神々が大笑いした。
それを不思議に思った天照大神が岩戸を少し開けたとき、八咫鏡で天照大神自身を映して興味を持たせ、外に連れ出した。その結果、再び世は光を取り戻したとされている。
八咫という言葉には大きい、多いという意味がある。直径約60cm、円周約147cmほどと考えられている。
現在、八咫鏡は伊勢神宮にある本体と、皇居にある形代(本体を模して作られたレプリカ)の2つが存在している。
八咫の鏡は三種の神器の中でも最も神聖とされ、清らかで曇りなく真実を映すことから、裁判の公正を象徴しているとされている。
裁判所職員のバッジは、八咫の鏡を模したものである。
草薙剣について
草薙剣(クサナギノツルギ)は、天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)とも呼ばれ、日本神話の中でも非常に特別な剣とされている。
江戸時代には数人が見たと記録されており、その後、祟りによって命を落としたという噂もある。
神話では、スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した際、大蛇の体内から発見された神剣である。その後、スサノオから自身の姉である天照大神に献上された。このことから、草薙の名前の由来には「クサは臭、ナギは蛇の意」であり、蛇の剣であるとの説もある。
後に、草薙剣は王族であるヤマトタケルに授けられ、彼の死後は尾張国の熱田神宮で祀られることとなった。
八尺瓊勾玉について
八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)は、玉祖命(タマオヤノミコト)によって作られたと伝えられている。
この勾玉は、八咫鏡と同様に、天照大神が天岩戸に隠れた際に祭具に掛けて飾るされた。現在は皇居にあるとされている。
「八尺」は約180cm、「瓊」は美しい玉と解釈されており、八尺瓊勾玉は青緑色のヒスイで作られたと考えられている。
古墳時代の発掘品や中国の史書にも、これと同様の記述が見られる。
絶対に見てはいけない・・・
三種の神器は、現役の天皇であっても見ることが禁じられており、実在の真意は不明である。
平安時代後期には、既に神器は「絶対に見てはいけないもの」とされていたことが、いくつかの逸話から確認できる。
例えば、鳥羽天皇に仕えた藤原実兼の『江談抄』には、冷泉天皇が八尺瓊勾玉の箱を開けようとした際、藤原兼家がこれを阻止したという話が記されている。
また、他の逸話として、陽成天皇が精神異常の際に勾玉の箱を開けようとしたところ、白雲が立ち上り恐れおののいて箱を投げ捨てた話や、夜に草薙剣を抜こうとしたが、剣が光り輝いたため怖くなって剣を投げ捨てたという話がある。
これらの逸話は鎌倉時代の説話集『古事談』に収められており、信頼性には疑問があるが、藤原実兼の話と重なる部分も指摘されている。
三種の神器の現存
三種の神器が現在どこにあるのかについては、定説では以下となっている。
八咫鏡(ヤタノカガミ)
現存地: 伊勢神宮
八咫鏡は、伊勢神宮に古来のものが現存するとされている。
密閉された箱に納められており、一般には公開されていない。
皇居の宮中三殿賢所には、形代(かたしろ : 儀式用のレプリカ)が置かれている。
草薙剣(クサナギノツルギ)
現存地: 熱田神宮
草薙剣は、熱田神宮に古来のものが現存するとされている。
皇居の剣璽の間に、形代が置かれている。
熱田神宮の草薙剣も一般公開はされていない。
八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)
現存地: 皇居
八尺瓊勾玉は、皇居の剣璽の間に古代のものが現存するとされている。
壇ノ浦の戦いで水没したが、回収されたと伝えられている。
この勾玉も密閉された箱に納められており、一般には公開されていない。
さいごに
三種の神器は謎が多いものの、日本の歴史と文化、そして皇室の永続性を象徴する重要な宝物である。
三種の神器を通じて、日本の豊かな文化遺産に触れる機会を大切にしていきたいものである。
参考 : 『古事記』『日本書紀』『古事談』
文 / 草の実堂編集部
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