戦国時代

瀬戸内海のジャンヌダルク、鶴姫の伝説

鶴姫

大山祇神社にある鶴姫の像 wiki(c)

ジャンヌダルクといえば、15世紀のフランスにおいて活躍した、「オルレアンの少女(おとめ)」と呼ばれる国民的ヒロインである。

10代の少女でありながら、フランス軍を率いて敵国と闘ったジャンヌだが、実は日本にも、このジャンヌダルクのような聖少女がいたことをご存じだろうか。

今回は、“瀬戸内海のジャンヌダルク”として知られた伝説の少女、鶴姫について追っていく。

島民も知らなかった伝説の少女 鶴姫

鶴姫が活躍していたのは、戦国時代
現在の愛媛県にあたる伊予の国に住んでいたとされている。

数年前に大変な話題になった、小説家・和田竜の作品『村上海賊の娘』のヒロイン・が憧れてやまないという存在、それが鶴姫である。

鶴姫
鶴姫が活躍していたのは、村上海賊の娘が活躍した頃より、30年ほど前だと言われている。

実は、鶴姫は、1966年に出版された『海と女と鎧 瀬戸内のジャンヌダルク』(著者は三島安精)という小説が刊行されるまで、小説の舞台となっていた愛媛県大三島の住民でさえその存在を知らなかったのだという。

ところが小説が刊行されたことで、鶴姫の知名度は一気にあがり、今や島の観光名物となっている。

大三島にある大山祇神社(おおやまつみじんじゃ)の宝物殿には、『紺糸裾素懸威胴丸』と呼ばれる甲が展示されている。
この甲は通常のものよりも随分と小さく、かつ胴体の部分にくびれがあることから、華奢な女性が身につけていたものと推測され、鶴姫が戦闘の際に使用していたものだといわれている。

鶴姫

※愛媛県の大山祇神社には、日本で現存する甲冑の約4割が収められているという 大山祇神社拝殿 wiki(c)Mika-wa-Taro

勇気ある姫君

伝説によれば、鶴姫は大山祇神社の神主の娘として生まれた。

幼い頃から身体が大きく、美しい顔をしていた鶴姫は、男子も及ばないほどの勇気にあふれており、周囲の人々からは明神の化身ではないか、と言われるほどであった。

鶴姫の父である安用は、彼女を見込み、小さな頃から武術や兵法を教えていたとされる。
そんな中、兄である安舎が戦死したことをきっかけに、鶴姫は兄の代わりに自ら戦地へ赴くことになった。

戦国時代(16世紀)、瀬戸内海では水軍が活躍し、島ごとの勢力がせめぎ合っていた。
各地の豪族たちが自分たちの領土を拡大するため、戦を行っていた世の中である。

鶴姫はそんな水軍同士の戦いの中、わずか16歳にして戦闘を指揮し、自軍を勝利に導いたと言われている。
その姿は、まさに日本版・ジャンヌダルクであると言えるだろう。

鶴姫の恋と悲劇

そして戦いの日々の中、鶴姫はとある青年と恋に落ちる。
その相手は、同じく戦いを共にしていた越智安成

しかし、1543(天文12)年6月、越智安成は戦闘中に討ち死に。

鶴姫は優れた兵法で敵を破り、大三島から敵軍を追い出すことに成功したが、最愛の人が死んだということに悲しみ、戦いが終わった後に三島明神への参拝を済ませると、単身、沖合へ漕ぎ出し、海へと入水して自ら命を絶ったと言われている。

16歳で戦場へ出、18歳でその命を散らす、という悲劇の運命も、やはりジャンヌダルクの生涯と重なる部分があるのではないだろうか。

しかし、鶴姫が自殺したという説には異論もあり、戦を勝ち抜いたあと、鶴姫は戦没者や亡き恋人・安成のために祈祷を行う日々を過ごしたという説や、別の神社の息子と結婚した、という説もある。

わずか16歳ながら水軍を指揮し、最終的には陣代と呼ばれる軍務を統括する存在に任命されたとされる鶴姫であるから、常に戦死とは隣り合わせにあっただろうし、最愛の恋人が亡くなったとしても、優れた軍人である彼女が、後に残された者たちのことを考えず、自殺するようなことがあるだろうか?

鶴姫が恋人の後追い自殺をしたというエピソードは、もしかしたら後年、鶴姫の伝説をよりドラマチックにするために美談として語られたものではないだろうか、と個人的には思っている。

メディア化される鶴姫伝説

調べてみたところ、この『鶴姫伝説』は、他の伝説上の人物と比べるとずいぶん少女漫画化されるケースが多いように思う。

やはり、若い少女が勇ましく戦い、また悲恋をするというエピソードは、読者である少女たちにとってとても魅力的なものに感じるのだろう。

ここでは、鶴姫を題材にした少女漫画について触れていきたいと思う。

『碧のミレニアム』

鶴姫

作者は杜野亜希。花とゆめで2001年~2002年に連載された。全6巻。

この作品は、現代から戦国時代へとタイムスリップしたヒロインが、当時戦国時代で活躍していた村上水軍や毛利一族と交流を深めていくというもの。
鶴姫伝説を下敷きに描かれた。

『海鈴のジャンヌ~TSURUHIME~』

作者は菊井風見子。なかよしラブリーで2010年に掲載された。全4回。
この作品は、鶴姫を主役にしており、彼女が女性でありながも男性社会である戦場で生きていく上での苦悩や、恋模様を繊細に描いており、高評価を得た作品である。
凛とした鶴姫の絵が美しい。

『戦国BASARA』

また、その他に、戦国時代を舞台にしたアクションゲーム『戦国BASARA』にも、プレイヤーの1人として登場したり、1993年には女優の後藤久美子主演で『鶴姫伝奇―興亡瀬戸内水軍―』という時代劇が放送されている。

ジャンヌダルクは、女の子にとって永遠のヒロインであるが、瀬戸内のジャンヌダルクと称される鶴姫もまた、憧れのヒロイン像として後年に語り継がれている。

おわりに

鶴姫の伝説には諸説あり、それぞれの解釈についてどの説が正しいのか論争がなされているが、その時代の決められた女性の運命に流されることなく、凛々しく戦った鶴姫の姿は、時代を超えて様々な人に愛されることだろう。

 

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歴史小説が好きで、月に数冊読んでおります。
日本史、アジア史、西洋史問わず愛読しております。

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