皆さん、なぞなぞは好きですか?
子供のころ、色んななぞなぞを考えて出し合った思い出は誰でもあるかと思います。
昔の人たちも気の利いたなぞなぞを楽しんでいたようで、今回は現存する日本最古のなぞなぞ集『後奈良院御撰何曾(ごならいんぎょせんなぞ)』を紹介。
その中から特に面白いものを何問かピックアップしてみたので、頭の体操に挑戦してみて下さいね。
目次
練習問題「雪は下よりとけて……」
問題はこんな感じで出されます。
「雪は下よりとけて水の上に添ふ」
【意訳】雪は下からとけて、水の上に添って流れる。これ何だ?
正解は弓(ゆみ)。何でそうなるのか解説します。
雪(ゆき)の下つまり「き」の字がとけてなくなると、残る文字は「ゆ」。水(みず)の上に添うつまり上の文字は「み」。
「ゆ」と「み」を合わせて「ゆみ」つまり弓という具合。よく考えたものですね。
この調子でどんどんいきましょう。
問1「をとヽひも きのふもけふも……」
「をとヽひも きのふもけふも こもりゐて 月をも日をも をがまざりけり」
漢字に直すと「一昨日も、昨日も今日も籠もり居て、月をも日をも拝まざりけり」。つまり一昨日からずっと籠って月も太陽も見ていない……つまり三日間ずっと暗かったという訳です。
だから正解は御神楽(みかくら、みかぐら)。三日暗というオチでした。
問2「いろはならへ」
「いろはならへ」
漢字を当てると「いろは習え」。文字を覚えるにはとにかく書くこと。仮名(かな、かんな)を書け……つまり正解は「鉋(かんな)かけ」。
鉋とは、材木の表面を薄く削って滑らかにする大工道具。かつお節を削るのも鉋ですね。
問3「ちりはなし」
「ちりはなし」
床一面に「塵はなし」……誰かが箒で「掃いたか」訊いてみましょう。
というわけで、正解は「鷂(はいたか)」。現代では漢字で灰鷹(灰色のタカ)とも書かれますが、その語源は「疾(は)し鷹」と言われます。
余談ながらハイタカとはメスの呼び名で、オスはコノリ(小鳥に乗りかかって襲う鳥の意)と呼ばれたそうです。
問4「田」
「田」
た?だ?でん?何だか取り付く島もなさげですが、正解は紅葉(もみぢ)。
田んぼは稲の種籾(たねもみ)をまく場所(地)だから、籾地が転じて紅葉に。そんな時期(秋)から籾をまいていたら、とても育ちません(冬の寒さで枯れてしまう)けどね。
問5「い文字」
「い文字」
よく「いの一番」とか「いろはのい」なんて言う通り、「い」はすべての仮名の先頭つまり「仮名頭(かながしら)」です。
カナガシラと言えば、カサゴ目ホウボウ科の海水魚。正解は鉄頭(かながしら。金頭・方頭魚・火魚など)になります。
あまり馴染みのない食材ですが、旨味と歯ごたえが強いらしいので、ぜひ食べてみたいですね。
問6「母には二度あひたれども……」
「母には二度あひたれども父には一度もあはず」
母には二回会うけど、父には一回も会わないもの。何だ……正解は唇(くちびる)。
昔はハ行がファ行(φ音)だったとされるため、母を「ファファ」と読めば確かに唇が2回触れます。父(チチ)は口が「イー」の形で発音されるので、唇は1度も触れませんね。
問7「うはぎえしたる雪ぞたえせぬ」
「うはぎえしたる雪ぞたえせぬ」
雪の上が消え、その状態が絶えない=常にあるとはこれ如何に。雪(ゆき)の上がとけてなくなった、つまり残っているのは「き」の字。
それが常(つね)にあるのだから……「き」が「つね」にある。つまり正解は「きつね(狐)」となります。
問8「三里半」
「三里半」
一里はおよそ4キロ。それが三里も半ばを過ぎ、もうすぐ四里にかかり……ということで正解は「寄りかかり(側几)」。
12キロ以上も歩いてお疲れでしょうか。誰かに寄りかかりたくなりますね。
問9「竹の中の雨」
「竹の中の雨」
竹は矢の材料になり、それが生えているので矢生(やぶ)。雨は村雨(むらさめ)などと読むように、これをつなげて「やぶさめ」。
だから正解は「流鏑馬」。その語源は「矢馳馬(やばせめ。馬を馳せながら矢を射る)」と言われますが、竹林に降りしきる雨も趣き深いものです。
問10「御前にさふらふ」
「御前にさふらふ」
主君の御前(ごぜん/おんまえ)に侍(さぶら)ふ、つまり命令を待っている状態。御用を待つから五葉松(ごようまつ)。これが正解となります。
また「さふらふ」は候(そうろう)とも読めますから「主君の御前であるぞ(だから大人しく御用を待っておれ)」とも解釈可能(どのみち答えは同じ)です。
他にもたくさん!雑談の小ネタにどうぞ
けふの狩場は犬もなし⇒尺(たかばかり=鷹ばかり)
十三になれどもひだるい⇒串柿(くしがき=9+4食っても餓鬼のように空腹)
廿人木にのぼる⇒茶(ちゃ。十と十と人と木で茶の字になるから)
春の農人⇒襷(たすき。稲作の前に田んぼを鋤くから)
五輪の下の化物⇒袴(はかま。五輪は五輪塔=墓、その下に化物=魔がいる)
ぬれぶみ⇒干海松(ほしみる。濡れ文とは艶書のこと、濡れているので干してから見る)
春日の社⇒奈良紙(ならがみ。春日大社は奈良の神様≒紙)
酒のさかな⇒けさ(今朝、袈裟など。さけのさかなとは、逆さ読みにした名)
……などなど、こんな感じでなぞなぞが続きます。よく考えたものですね。『後奈良院御撰何曾』には他にもたくさんなぞなぞがあるので、読んでみると面白いですよ。
※参考文献:
- 大野晋 編『本居宣長全集 第十二巻 本居内遠全集』筑摩書房、1989年8月
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