西洋史

マリーアントワネットとお菓子の関係について調べてみた

マリーアントワネットとお菓子の関係について調べてみた

マリーアントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」の名文句がフランス革命の引き金になったのはとても有名です。

マリーアントワネットの王妃としての人生は、1769年にオーストリアとフランスの同盟関係強化の一策としてオーストリア女帝マリア・テレジアの命によって14歳の時にヨーロッパ最大の勢力をもつオーストリアのハプスブルグ家から、フランスのブルボン王家に政略結婚で嫁いだところから始まります。
豪華絢爛の長い行列でお興し入れし、民衆に歓喜の声で迎えられますがそれから23年後、おなじ沿道で断頭台に送られてしまいます。

お菓子はブリオッシュのこと?

ヴェルサイユ宮殿に飾られているルイ16世妃マリーアントワネットの肖像画は、王妃のお気に入りだった女流画家エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ルブランが描いたものですが、衿もとのレースがあまりにも華美であったために贅沢好きな王妃と噂されました。
この噂を聞いた故国の母、マリア・テレジアは何度も手紙で慎むように忠告したのでした。

パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」はフランス語の「ブリオッシュを食べればいいじゃない」を日本語訳にしたものですが、日々のパンに事欠く貧しい農民にむけた台詞として今日でも広く知れわたっていますね。
ブリオッシュは膨らませて焼いたシンプルなパンですが、アントワネットの歴史で伝えられている派手で贅沢なイメージではどうしてもこの「ブリオッシュ」はケーキ(お菓子)のイメージが強く感じられます。
このフレーズにぴったりなブリオッシュをペニンシュラのベーカリーで見つけました。
真ん中にカスタードクリームと生クリームがたっぷり入ったかなり贅沢なまるで王妃級のゴージャスな美味しさのブリオッシュでした。

素朴な味のクグロフ

マリーアントワネット妃は歴史上でも格別にお菓子好きな王妃として知られていますが、18世紀にヨーロッパ中で大流行したクグロフも王妃の愛したお菓子として有名です。
フランスの美食事典「ラルース・ガストロノミーク」にもマリーアントワネットがクグロフを非常に好んだと記されています。
クグロフはバターケーキとアルザス地方のホップで作られるパン菓子がありますが、これはオーストリアの故国でアントワネット妃が幼い日に味わっていたものです。
クグロフ(帽子をひっくり返したようなお菓子)は素朴さと完成された焼き型の美しさから、アントワネット妃が歴史で伝えられているほど贅沢好きではないかとも一説では思われています。

矢車菊のブルー

ヴェルサイユ宮殿のプチトリアノン離宮には、農家や自然に囲まれたまるでオペレッタの世界のようなアモー(王妃の箱庭の村落)があります。
この自然庭園で村娘に扮した王妃は自然の野の花を好んだ事も有名で、菫や忘れな草の他、コーンフラワー(矢車菊)が一番のお気に入りでした。
このコーンフラワーの模様のディナー皿、カップ等が当時の貴重品として残されていますが、同時にブルーの色をアントワネットとてもは好んだようです。

ビスキュイ・グラッセ・アントワネット

人名のついたお菓子はその人物が実際に係わったり宴席等で評判を呼んだもので、メニューに残されて語りつがれていることが多いようです。

パリのパティスリーサロンドテ「ラデュレ」にはアントワネットの名前がついたケーキや紅茶等があります。(日本のラデュレでも購入できます)
ラデュレの何色もカラーバリエーションのあるマカロンもそのひとつですが「マリーアントワネット」の名前がついたマカロンはブルーでした。

アントワネット妃の華やかなイメージで言い伝えられている「ビスキュイ・グラッセ・アントワネット(アントワネットの冷菓)」もラデュレでは再現されています。
このアントワネットの冷菓は、歴史の中では食事の合間に口直しとして出されるデザートのひとつになっています。

何度かラデュレでアントワネット妃の名前がついた紅茶やケーキ、マカロン等を実際に食べてみましたが、バラや柑橘類などのフレーバーの華やかさのあるものでした。
紅茶に関して言えばラデュレだけではなくサロンドテ「ニナス」にもやはりマリーアントワネットの名前がついた紅茶があります。
こちらもこだわりはヴェルサイユ宮殿のバラの花を茶葉に使っていることで有名です。

王妃マリーアントワネットの名前がついた現在も残されている西洋菓子の歴史からも、完成されたお菓子の美学を感じられます。
歴史の中に残されている王家の華やかな文化は、食卓や食べ物のメニューから紐解いていくと深く納得できますね。
ラデュレニナスのように有名なパティスリーやサロンドテが、アントワネット妃をイメージしていろんなケーキや紅茶等を提案しています。
現代の豊かに彩られた食生活の中で、マリーアントワネットのようなエピソードを思い描きながらお菓子やお茶を楽しんでみるのはいかがですか?

参考文献:もしもあなたがブリンセスになったら 今田美奈子著

Sandrilon

Sandrilon

投稿者の記事一覧

本業はブライダル関連or副業はクラウドソージングで記事書いてます
http://ameblo.jp/sandrilon/
http://sandrilon7.seesaa.net/s/

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. チーズの歴史について調べてみた
  2. ヨーロッパ・ブラッドスポーツ残酷史 後編【スポーツという名の動物…
  3. イングランドで愛される犬と猫たち【公務員として働く猫】
  4. お茶(緑茶・紅茶・烏龍茶)の歴史【世界史の裏側にはお茶があった】…
  5. 永世中立国の意外な側面・第二次世界大戦とスイス
  6. エンスラポイド作戦【ナチス親衛隊No.2暗殺作戦】
  7. 古代ローマのファッションについて調べてみた
  8. 本場中国の餃子文化について調べてみた 「餃子の歴史 日本餃子との…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

魅力満載のカラフルなポルトガル宮殿 「シントラのペーナ国立宮殿」

フォトジェニックな街並みが話題のポルトガルの首都『リスボン』に隣接する都市「シントラ」は、城跡と宮殿…

古代の農業の歴史 「最古の農業は23000年前」

農業の始まりどの国においても、農業は重要な位置を占める。人類は元々狩猟採取を行なって生き…

【日本初のポスター美人】明治の名妓「ぽん太」の夫を支え続けた生涯

明治時代、「西に大阪宗右衛門町の富田屋八千代、東に新橋のぽん太」と称されるほど人気を博した名妓がいた…

『李在明×トランプの相性は?』実利でつながる米韓同盟、その裏に潜む摩擦とは

6月3日、韓国の大統領選挙で進歩派の李在明(イ・ジェミョン)氏が勝利し、新たな大統領に就任した。…

『海と共に生きる台湾の原住民族』タオ族に根付く独特な文化 ~ふんどしと銀兜の伝統衣装

タオ族とは筆者が現在住んでいる台湾には、16の主要な原住民族が存在する。これらの民族は、…

アーカイブ

PAGE TOP