政治,経済

【政治とカネ】 田中角栄の金権政治から安倍派の裏金問題まで

田中角栄の金権政治から安倍派の裏金問題まで

画像:窮地に立たされている岸田首相 public domain

安倍派の政治資金問題が大きな話題となっています。

自民党は4月4日、安倍派の政治資金パーティー裏金問題で所属議員39人の処分を決定しました。

安倍派幹部の塩谷立・元文部科学大臣と世耕弘成・前参議院幹事長には、党の処分で2番目に重い「離党勧告」の処分。また下村博文・元政調会長と西村康稔・前経済産業大臣には、1年間の「党員資格停止」の処分が決定しました。処分を受けた世耕氏は、自民党を離党しています。

また森喜朗元首相にも聴取したという報道もあり、二階俊博元幹事長を引退に追い込んだ岸田文雄首相は、日本だけでなく自民党も壊すかもしれません。

改めて今回の問題は、自民党の「政治とカネ」による癒着構造が、いまだに根深く残っていることを浮き彫りにしました。

なぜ自民党では、政治資金問題が後を絶たないのでしょうか。

今回の記事ではその理由を探るために、自民党の政治資金問題に関する歴史と構造的な問題を見ていきたいと思います。

自民党の政治資金問題

田中角栄の金権政治から安倍派の裏金問題まで

画像:田中角栄元首相 public domian

自民党の政治資金問題は、1970年代の狂乱物価の時期にさかのぼります。当時の田中角栄首相によって、自民党の政治資金問題が大きな注目を集めました。

田中元首相は、企業や団体から巨額の資金を集める「金権政治」を展開し、その資金集めの手法は「金脈問題」とも呼ばれました。
田中元首相は「日本列島改造論」を標榜し、各地の利権と結び付いた政治手法で知られています。

その背景には、企業や団体との太いパイプを通じた資金調達がありました。政治とカネの癒着を象徴する事件として、田中元首相の金脈問題は大きな批判を浴びたのです。

この金脈問題は「ロッキード事件」につながっていきます。
1976年、米国の航空機メーカー・ロッキード社が、日本の政治家に巨額の資金を提供していたことが発覚したのです。田中元首相も、ロッキード社から500万ドルの裏金を受け取っていたことが明らかになり、逮捕・起訴されるに至っています。

ロッキード事件は、自民党と企業の癒着、政治家の金権体質を象徴する事件となりました。この事件をきっかけに、政治とカネの問題に対する国民の関心が高まり、政治改革を求める声が強まっていきます。

近年では、安倍晋三元首相をめぐる「政治とカネ」の問題が記憶に新しいところです。

「桜を見る会」をめぐる問題では、安倍元首相の地元後援会関係者が多数招待されていたこと、そして招待者名簿が破棄されていた事実も明らかになり、大きな批判を浴びました。

さらに安倍元首相の妻・昭恵氏が名誉校長を務めていた「森友学園」をめぐる問題も注目を集めました。森友学園への国有地売却に関する疑惑が取り沙汰され、安倍元首相の不透明な「政治とカネ」の関係が指摘されたのです。

これらの事件は、自民党と「政治とカネ」の癒着構造に対する批判が再燃するきっかけをもたらします。

このように自民党の政治資金問題は、党の長い歴史を通じて繰り返し発生してきました。

自民党と経済界の癒着構造

自民党の政治資金問題の背景には、経済界との癒着構造があります。
自民党は長年にわたり、企業や業界団体から多額の献金を受けてきました。企業・団体献金や政治資金パーティーを通じて、巨額の政治資金を集めるシステムが確立されているのです。

この癒着構造は、政治家と経済界の密接な関係によって支えられています。自民党議員の多くは、企業出身者や業界団体の出身者です。また多額の企業・団体献金を集める議員が、党内で重要なポストに就く傾向があります。

こうした政治家と経済界の人的つながりが、「政治とカネ」の問題を生み出す土壌となっているのです。

派閥政治と政治資金の関係

自民党の政治資金問題は、党内の派閥政治とも密接に関係しています。

自民党では、派閥が党内の主導権を握るために、政治資金の獲得競争が繰り広げられてきました。派閥は所属議員に対して、パーティー券の販売ノルマを課すなど資金集めをさせて、こうして集めた資金の一部が収支報告書に記載されず議員側に還流する、いわゆる「裏金」の存在も今回明らかになっています。

派閥のボスと所属議員の間の金銭的な結び付きが、政治資金問題を温存させる構造になっているのです。

イメージ画像

現在の状況と課題

現状として、自民党の政治資金問題はどうなっているのでしょうか。

1994年にはリクルート事件をきっかけとして、企業・団体献金は原則禁止となりました。しかしながら、政党支部に対する寄付は例外として認められており、この抜け道を利用した資金提供が続いています。

また政治資金パーティーは、企業・団体献金の代替手段として定着しており、企業や団体から政治家に資金が流れる構図は変わっていません。

さらに、政治資金規正法の規制も不十分だと指摘されています。収支報告書の不記載に対する罰則が軽すぎるため、抑止力として機能していないのです。

こうした状況を踏まえると、政治資金問題を解決するためには、抜本的な改革が必要不可欠です。

企業・団体献金の規制強化、政治資金パーティーの見直し、政治資金規正法の罰則強化など、透明性を高めるための施策が求められるでしょう。

参考文献:海部俊樹(2010)『政治とカネ – 海部俊樹回顧録』新潮社

 

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村上俊樹

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“進撃”の元教員 大学院のときは、哲学を少し。その後、高校の社会科教員を10年ほど。生徒からのあだ名は“巨人”。身長が高いので。今はライターとして色々と。フリーランスでライターもしていますので、DMなどいただけると幸いです。
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