土用の丑の日はうなぎを食べる。
平賀源内がうなぎ屋の宣伝として考えたという話は有名だ。
現在では夏の食べ物ということで定着してしまったが、本来は冬が旬の魚である。そこで、旬を過ぎてもうなぎを食べてもらいたいと「夏負け(夏バテ)することなし」という看板で人を呼び込んだのが土用の丑の日の由来とされた。
しかし、うなぎには本当にそれほどの栄養があるのだろうか?
うなぎを食す文化
日本の暑い時期を乗り越えるためにうなぎを食べる習慣古くからあり、万葉集でも詠まれている。
原文: 石麻呂尓吾物申夏痩尓吉跡云物曽武奈伎取喫
訓読文: 石麻呂に吾(われ)物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ
私は石麻呂にいいました。夏痩せに効果があるという鰻をとって食べると良い。といったところか。
万葉集の成立は759年以後とされるため、江戸時代より1000年も昔からうなぎを食べていたことになる。
もっとも、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は1772年ー1788年あたりから始まったらしい。
「夏痩せ」「夏負け」「夏バテ」と言葉は変わっても、夏にうなぎを食べると元気が出るという文化は土用の丑の日が広まる以前からあった。
うなぎの旬
うなぎの旬は冬である。
うなぎは寒い時期を乗り越えようと脂をたくさん蓄えるため、冬にさばくと脂で手がつやつやになる。身もやわらかくておいしいという。
実際に長野県岡谷市では「冬の土用の丑の日」を広めようと街ぐるみで「うなぎのまち岡谷」をアピールしている。
うなぎのまち岡谷公式HP → http://www.okayacci.or.jp/unagi/
「冬の土用の丑の日」を初めて聞く人もいるだろうが、土用の丑の日は夏だけではない。立春のように1年には四立があり、夏は「立夏」冬は「立冬」の直前約18日間ずつが土用と呼ばれる期間である。
その土用の期間内で「丑の日」と言われる日があるのだ。
そのため、夏だけではなく冬にも土用の丑の日は存在する。
うなぎの栄養価
まず、ビタミンAは食品の中でもトップクラスである。
うなぎの蒲焼半分(50g)で、成人男性が1日に必要とする摂取量を超えるほどだ。ビタミンAは目の健康に欠かせないと言われている。
糖質をエネルギーに変換するビタミンB1の含有量は、魚介類の中でもトップクラスだ。蒲焼一枚(100g)で成人男性が1日に必要とする摂取量の7割を摂取できる。
ビタミンB2は、うなぎの蒲焼一枚(100g)で、成人男性が1日に必要とするビタミンB2の半分を摂取できる。ビタミンB2は栄養素をエネルギーに変えたり、皮膚や粘膜の再生にも関係があり、美容にも良いらしい。
特にビタミンBは重要な栄養素であり、これが欠乏すると体力が急激に低下してしまう。ビタミンB1の欠乏は心不全と神経障害をきたすこともあり、下肢の痺れ(力が入らないなど)が起きてしまう。いわゆる「脚気(かっけ)」である。
日常の食生活でも大切で、身体のだるさや重さはビタミンB1が足りないことが原因の場合もあるのだ。
さらには細胞の老化を防ぐビタミンEやDHA・EPAといった成分も豊富に含まれている。
健康食としてはまさに理想的である。
うなぎの調理法
うなぎは「捨てる部分がない」というほど、色々な部位が食べられる。
なかでも一般的なのが蒲焼だが「関東は背開き、関西は腹開き」という話も有名だ。開いて頭と骨を取り除いた身に串を打ち、甘辛いタレを付けて焼く。白焼きにしてから蒸してタレを付けて本焼きをする。関西では蒸す工程を省き、そのまま焼くのも有名だ。
関東風は身がふわっとしており、関西風は身がぷりぷり、皮がパリパリなのが特徴である。
「うなぎは匂いを食べる」というくらい、焼くと香ばしい匂いが広がるため、イヤでも食欲がわいてくる。その代表が蒲焼なのだ。
他にも、タレをつけずに焼いた白焼きはわさびや醤油で。肝吸いは胃を中心とした内臓部分を吸い物にする。肝焼きは数匹分の胃などを串に刺して、タレで漬け焼く贅沢な食べ方だ。
ひれ巻きは背びれを串に巻いて焼いたもの。かぶと焼きは数匹分のうなぎの頭部を串に刺してタレに漬けて焼く。くりから焼きはうなぎを捌いたときの端切れを串焼きにしたものである。骨もから揚げにして前菜として出すうなぎ屋も多い。
このように、うなぎは栄養だけではなく、料理の幅も広いのだ。
東京の話になるが、新宿にうなぎ専門の面白い店がある。西口の思い出横丁にある「カブト」だ。
カウンターだけの小さな店だが、平日から客が絶えないほどの人気店である。まずは「一通り(1540円)」と呼ばれる色々な部位を一本ずつ串に刺して焼いたコースを頼む。その後に、自分の好みで一本ずつ頼むのがルールの店だ。
手軽にうなぎのコースを楽しみたい人はぜひ行ってみてもらいたい。
カブト(食べログ)HP → こちら
うなぎは精がつくのか?
残念ながら、筆者は以前からうなぎを食べて「美味しい」とは思っても「精がついた」と感じたことはない。栄養とは目に見えないものだから、体内では役に立っているのだろう。
しかし、夏バテに効くという話は信じていなかった。実感できないのだから仕方がない。
ところが調べると思わぬ盲点がわかってしまった。
栄養価の高い食品が少ない時代には貴重な栄養源だったが、現代では栄養価の高い食品も栄養補助食品も豊富にある。特に江戸時代などは肉食が禁止されていたので豚肉のようなビタミンBが摂取できる食品は少なかったはずだ。
現在は医学的根拠も乏しいとされ、うなぎで精がつくという話は過大気味な表現となっている。
最後に
それでも日本人はうなぎが好きだ。土用の丑の日に限らずうなぎを食べる。
それは「栄養のため」ではなく「単純に美味しいから」だろう。
美味しいものを食べれば幸せな気分になれる。つまり、うなぎを食べることは「心の栄養」をつけるためだと考えれば納得できる。
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